「なにやってんだよ、美鈴」
「きゃあああ! な、なによ、宇佐美じゃない!! びっくりさせるないでよっ」
「驚いたのはこっちだ。鞄の中に入れたもの、店員に見つからないうちに元に戻せよ」
「な、なにを言ってるの?」
白々しくそっぽを向いて美鈴がとぼける。
「俺は見ていたんだからな。今、CDを一枚、鞄の中に入れただろ?」
「し、知らないわよ。目どうかしちゃったんじゃないの」
「あのな…そのまま持って帰ってみろ。店を出るときに警報装置に引っかかってどちらにしてもばれるぞ」
「…ど、何処にそんなものあるのよ」
「これだから世間知らずお嬢様は…入り口に黒い板が両方に立っているだろう?そしてセンサーで商品についているこのタグ。これを付けたままあそこを通ると警報がなる仕組みになってんの」
俺は適当なCDをつかんでタグを指さす。
ピピピピッ!
急に美鈴の鞄の中から警報音が鳴り出した。
コイツ、タグを無理矢理はがそうとしやがったな。
「お客さん、困りますね。君たち、ちょっと事務所に来てもらいましょうか」
年輩の男性の店員…たぶん店長だろうけど…が、当然だが声をかけてくる。
まいったな、俺まで共犯かよ。
「美鈴、ちょっと鞄貸せよ」
「な、なんでよ」
「いいから貸せって言ってンだよ」
そういって半ば強引に彼女の腕から鞄を奪う。そして中を見て、取ったと思われるCDを取り出し、店長につきだした。
思わず手に取る店長。
「どうもすみませんでした! ではっ!!」
大声でそう言って勢いよく頭を下げると、唖然としている店長を後目に俺は美鈴の手を取って、出口に向かって走り出した。
「ま、待ちなさい! おい、誰か捕まえろっ!」
その声に反応して、俺達に駆け寄ろうとする他の店員。しかし、間一髪で店を出ることができた。
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