■美鈴編■
2日目【7月22日】


 
 
 ばーか。自業自得だ。知らないふりをしてよう。

「お客様、ちょっと鞄の中身を見せてもらえますか?」

 年輩の店員が丁寧だが厳しい口調で美鈴に言う。

「い、いやよ。なんで見せなきゃいけないの」
「盗犯防止の警報が鳴っているのです。誤作動だとは思いますが一応中をお見せ下さい」
「誤作動よっ」
「あのですね、見せて戴けないのなら警察呼びますよ」
「う…わかったわよ」

 一層強い口調で言う店員にしぶしぶ鞄を渡す美鈴。

「お客様、これはどういう事ですか?」

 当然だが万引きした商品が中から出てくる。

「知らないわよ。誰かが勝手にいれたんじゃないの」
「困りますね、お客様。あなたが入れずに誰が入れるっていうのですか?」

 この場になってもシラを切る美鈴に呆れ顔の店員。
 それでも、シラを切り通そうというのか、美鈴が店内を見渡す。

「あっ!」

 思わず美鈴と目が合う。
 …うっ、嫌な予感。

「コイツ、コイツ! コイツが入れたのよっ!!」

 俺の方を指さしながら、迫ってくる美鈴。

「わ! ば、馬鹿野郎! よりにもよってなんて事言いやがるっ!」
「ぜーたいコイツ。私の後ろでごちゃごちゃやっていたンですもの」
「違うっ、美鈴、てめー」

 必死に弁解する俺に冷たく店員が言い放つ。

「2人とも、事務所まで来てもらいます」