「お客様、ちょっと鞄の中身を見せてもらえますか?」
年輩の店員が丁寧だが厳しい口調で美鈴に言う。
「い、いやよ。なんで見せなきゃいけないの」
「盗犯防止の警報が鳴っているのです。誤作動だとは思いますが一応中をお見せ下さい」
「誤作動よっ」
…呆れたもんだ。まぁ、美鈴らしいといえば美鈴らしいが。
でも、放っておく訳にもいかないだろう。
「何馬鹿やってんだよ、美鈴」
「あっ!!宇佐美」
「すみません。コイツ世間知らずなお馬鹿なんで…出来心だと思います。ほらいい加減、鞄の中のものを出せよ」
「……」
俺を睨む美鈴。
目をこちらに向けたままゆっくり鞄の中から盗んだCDを出した。
「困りますねぇ、お客さん」
「本当にすみませんでしたっ。ほら美鈴も謝れ」
「…コイツのせいよっ」
「はぁ?」
突然、美鈴は俺の方を指さして叫んだ。
「コイツに万引きしろって言われたから仕方なくやったのよっ!」
「へ?」
「見張ってるから、コレを万引きしろって命令されたんです!」
「ち、違います、無茶苦茶ですっ! お前、せっかく助けてやろうとしていたのになんて事言うんだっ!」
「…はぁ〜。とにかく2人とも事務室に来てもらおう」
くぅ〜、共犯にされてしまったぜ。こんなんじゃ、助けるんじゃなかったよ。
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