駅でバスを降りるとそこには真澄ちゃんが立っていた。
「先輩のお姉さんの所に電話を入れたら、もう出ったって言っていましたから。ここで待ってました」
「もしかして、俺の見送り?」
「はい」
「さんきゅ。しばらく会えないかなって思っていたから嬉しいよ」
俺は切符を買うと彼女と一緒にホームへ向かった。
真澄ちゃんは入場券をあらかじめ買っていたようだ。
駅のホームに電車が入ってくる。俺は立ち上がり、白線がひいてある部分で電車が停まるの待った。真澄ちゃんが横に並ぶ。
「再会した日、レストランの展望台であたしに言った事、覚えてます?先輩」
「え?なんだっけ?」
「こっちにいる間だけ恋人同士にならないかって…」
「ああ。今思うと少し恥ずかしいけどね」
「向こうに帰っても、ずっと恋人、続けてもらえますか?」
上目遣いに俺の顔を見る真澄ちゃん。
「もちろんだよ。真澄ちゃん」
思わず彼女を軽く抱きしめると俺は電車に乗り込んだ。
「あたしも帰ったら必ず会いに行きますから…待っててくださいね」
真澄ちゃんは赤い顔をして俺に言った。発車のベルが鳴り響く。俺が返事の変わりに力強く頷くと彼女は笑顔で小さく手を振った。
ドアが閉まって電車が走り出す。
二人は見えなくなるまでガラス越しに見つめ合っていた。
景色は街から海へと変わる。この夏の思い出。真澄ちゃんとの奇跡的な再会。
俺はこの海に来て、大きくなにかが変わったような気がした。
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