俺達が館内に入った時、ちょうど映画が始まっていた。
素早く手頃な席に座る。
この映画は、南の名も知らない孤島にセスナで不時着した主人公。その時、助けてくれたその島の族長の娘と恋に落ちる。
そんな二人を島の人々は認めなかった。村から逃げ出す二人。
実は主人公はある財閥の跡取り息子で、やがて捜索にやってきた家族が二人を見つけ彼を連れて帰ろうとする。追いつめられた二人は愛を貫き通す事ができるのか?
そんなストーリーだと思う。
うむむ…けっこうきわどいシーンが多いなぁ。
それに、こういうの見たらなんか真澄ちゃんを意識してしまうではないか。
当の本人はというと…。
うわぁ、見入ちゃってるよ。
目をうるうるさせながらスクリーンを見つめる彼女。
やっぱ、こういうのって憧れちゃうんだろうか?
映画が終わって俺達はシアターを出て、テバートの中を歩く。
「よかったですよね。映画」
「え? ああ」
「最後のシーン覚えてます? けっきょく引き裂かれた二人が数年後、出会った海岸で再会して今度は絶対離れないって誓って抱き合いうんですよね。もう感動〜」
まぁ、確かに想いを胸に秘めたまま暮らしていた二人が我慢しきれず、逃げ出し、お互いを探して再会した時は結構、ほろっと来たけど…。
「浜辺で再会したシュチエーションってなんとなく今の私たちに似てません?」
「え?」
「あたしドキドキしちゃいました」
胸を押さえてため息をついて言う彼女。でも、それって、映画のヒロインと自分をだぶらせてるって事だよな。って事は…。
「もしかして映画みたいにハッピーエンド期待しちゃってる?」
「そ、そうですね。それは先輩次第かな?」
少しからかうような言い方で俺を見上げる真澄ちゃん。
俺はその言葉にドキッとした。真澄ちゃん、時々、こうやって思わせぶりな事言うんだよな。
「それなら頑張らないとね。主人公としては」
「はい。期待しちゃいます」
そう言って笑う真澄ちゃん。俺もつられて笑う。
う〜ん、ちょっと真澄ちゃんらしくないけど、映画見て、少し大胆になったのかな?
俺達はそんな感じで話をしながらデパートを後にした。
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