■真澄編■
3日目【7月23日】


 
 

 俺達が館内に入った時、ちょうど映画が始まっていた。
 素早く手頃な席に座る。

 この映画は南の孤島を舞台にした洋画のアクションものだ。事件の捜査に来た新米FBI捜査官が地元の腕利き刑事と一緒にその島を牛耳る麻薬組織と対決するストーリー。ありがちな内容だが派手なアクションとストーリー展開でかなり人気の出ている作品だ。

 やっぱ、こういうのって見入っちゃうよな。
 派手な爆発シーン、カーチェイス、銃撃戦、格闘シーン。う〜ん、なんか血が騒ぐぜ。

 「あれ?」

 映画に夢中で忘れていたが気がつくと肩に触れるものがある。俺は何気なく真澄ちゃんの方を見た。

 …寝てる…。

 彼女は目をつぶって俺の肩におでこをあてて寝ていた。俺は寄りかかられている事よりも爆発や銃の発射音などの大音響の中、彼女が眠っている事に驚いた。

 まぁ、いいか。
 やっぱ疲れていたんだろうな。俺は彼女を起こさないようにしながら、再びスクリーンに視線を戻した。

 映画が終わって、俺はそっと彼女を起こすと映画館を出た。
 デパートの休憩所のベンチに腰を下ろす真澄ちゃん。俺はカップのコーラを買ってきて彼女に渡した。

「あ、ありがとうございますぅ」

 まだ、寝ぼけまなこで目をしばしばさせている彼女の隣に座った。

「ごめん、映画つまんなかった?」
「え…いいえ、そう言う訳じゃぁ。私こそごめんなさい。せっかく連れてきてもらったのに」
「でも、ちょっと驚いたぜ。あんなうるさい中で眠てるんだから」
「ご、ごめんなさい。あたし、ああいう映画ってあんまり興味なくって…涼しくて気持ち良かったから寝ちゃってました」

 顔を真っ赤にしながら俯いて言う真澄ちゃん

「最初に言ってくれれば良かったのに。それなら他の映画にしたぜ」
「でも、先輩は面白かったんでしょ?」
「そりゃ、まぁ」
「じゃあ。いいじゃないですか。あたし先輩が楽しめたんなら満足です」
「でもさ、真澄ちゃん」
「こういう言い方って失礼かもしれませんが、あたしは、気持ちよく睡眠をとれましたから問題ないです」

 そう言って真澄ちゃんは照れた笑顔を見せた。
 う〜ん。彼女の好みも聞くべきだったよな。まぁ、本人がこう言ってる事だしよしとするか。