俺は走り、飛び上がってボールをアタックする。
叩きつけるようなやり方ではなく、少し浮き上がるように力を調整し打つ。
しかし案外、スピードがついてしまった。
ボールは近くにいた真澄ちゃんの横に派手に水しぶきをあげて落ちる。
それを呆然と見る真澄ちゃん。
「はぁい! 真澄、アウト!」
「ちょ、ちょっと待って! 今のアリなの?」
頬を膨らませて文句を言う真澄ちゃん。
「ありあり。なんでもありよ」
「そんな〜、由希子姉さん」
「甘えた声だしてもだめ。じゃ、罰ゲームね」
由希子さんは真澄ちゃんの側に行くと、俺と俊治さんにも手招きをして近くに来るように指示する。
俺は思わず真澄ちゃんに「ごめん」と合図を送りながら彼女の隣に行った。
「ほら、あんたたちは真澄の両腕を持ってを持ち上げて」
由希子さんが俺と俊治さんにそう指示を与える。
俺は少しためらったものの俊治さんの真似をして彼女の脇の下に潜り込む。
うわ…真澄ちゃん水着姿だからなんかドキドキする。
けっこう役得だったりして…。
「え? え?」
突然の事に状況があまり飲み込めず、あたふたしてる真澄ちゃん。
由希子さんは彼女の足をつかむ。
「い〜い? せーの、それぇ!!」
「きゃああぁぁぁ」
ざんっばーーん!!
真澄ちゃんの体は宙に浮き、一回転して海面に落ちる。
「あら、ちょっと力いれすぎちゃったかしら?」
由希子さんがとぼけたように言った。
ゆっくり海から顔をあげる真澄ちゃん。あまりの事にぼうぜんとしてしまっている。
「大丈夫か?真澄ちゃん」
「宇佐美先輩?」
まだぼーとしている真澄ちゃん。俺の顔をきょとんとした表情で見つめる。
「酷いわ、由希子姉さん! あたし、死ぬかと思ったじゃないですか!」
急に正気に戻って海面を叩き由希子さんに抗議する彼女。
「酷い目に合わないと罰ゲームの意味ないでしょ?」
涼しい顔で答える由希子さん。真澄ちゃんはそれを睨み付けて立ち上がった。
「宇佐美先輩、俊治さん、由希子姉さんを捕まえて持ち上げて下さい」
彼女を指さして言う真澄ちゃん。
おいおいおい…なんかいつもの彼女と違うぞ。
俊治さんが指示に従って由希子さんを捕らえる。仕方なく俺も彼に続く。
「な、なにするのよ! こら、俊治、放しなさい」
「由希子姉さん、お礼させてもらいますからね」
そう言って彼女の足を握る真澄ちゃん。
「真澄〜あんたね〜!! ちょっと、宇佐美君も降ろしてよ、きゃぁ! こらぁ、俊治変なとこさわるんじゃないわよ!!」
「いいですか? せーの!」
「ちょ、ちょっと待って!」
「それぇぇ!!」
ドバーーン!!!!
あ〜あ。頭から真っ逆さま。
ゆっくり起きあがってこっちを振り向く由希子さん。
「ま〜す〜みぃ」
「え?」
恐ろしい顔で真澄ちゃんを睨んでいる。それを見た真澄ちゃんはひきつった笑顔を彼女に向けた。
「大変な事をしてくれたわね。あんた!! あたしにこんな事をするとどうなるか、わかってるんでしょうね!!」
彼女につかみかかろうとこちらにやってくる由希子さん。真澄ちゃんは悲鳴をあげながら逃げ出した。
「こぉら!! またんかい!! ますみ!」
「ご、ごめんなさぁーーい」
浜辺の方へ駆け去って行く二人
……なんだかなぁ。
「いつもこんな感じなんですか?」
「ああ。いつもの事、いつもの事」
俺が彼女たちを指さしていうと俊治さんは苦笑して答えた。
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