■真澄編■
2日目【7月22日】


 
 
 いや、前にいる由希子さんの方が近そうだ。
 俺はその場にじっとしていた。

 由希子さんも動こうとはしない。俺達は海面にポチャンとおちるビーチボールを見て、お互いの顔を見た。

「……」
「……」

 次の瞬間。由希子さんはニタッと笑う。

「はい! 宇佐美君アウト」
「ちょっとまてい! 今の由希子さんじゃないか?」
「はいはい。審判は私、苦情は受け付けません」
「そんな、ずっこいですよ! インチキじゃないですか!」
「じゃぁ罰ゲーム!」

 俺の非難を完全にシカトして由希子さんはみんなを集めた。

「じゃあ、俊治、真澄、彼の両腕を持って」

 由希子さんが嬉しそうに指示をする。
 うげ…マジでやるのかよ…。

「そんな、由希子姉さん、冗談でしょ?」

 真澄ちゃんも不満そうな声で由希子さんに抗議する。

「なに言ってるのよ。本気に決まってるでしょ? ほら腕持って」
「せ、先輩にそんなことできないよ」
「なぁに?あーー!! もしかして、真澄、照れてるの?」
「そ、そんなんじゃないわ」

 真っ赤になって反論する真澄ちゃん。

「宇佐美先輩と肩を組めるいいチャンスじゃない。ねぇ?」

 いや、俺に振られても…。

「いいから、やるの!」

 強い口調でそう言われてしぶしぶ従う真澄ちゃん。

「先輩、ごめんなさい」

 そう言って俺の右腕を取って背中に回す。
 うわ…柔らかな感触。真澄ちゃんの肌に触れられるなんてけっこう役得だったりして。
 俺の方も少しドキドキしてきたぞ。
 そして反対の腕も俊治さんに持ち上げられた。

「用意は出来たわね。それじゃ、いくわよ」

 由希子さんが俺の足を掴む。
 うひゃー、そんなに抱きしめたら…うぅわ、胸の感触が…。

「せーの、それ!!」

 景色が一転する

 ばしゃーーん!!

 ごぼべがべげ!!

 俺は頭から一回転した形で海面に放り投げられた。
 あわてて体制を立て直そうともがく。

 そしてなんとか水面に顔を出せた。うげ〜、少し海水呑んじゃったよ。
 ふぅ、死ぬかと思った…。