Session7:音楽メディアに関する考察

音楽を聴く、携帯するというのは現在、一般的な文化である。20年前、SONYのWALKMANが発売され、街中で奇異の目で見られていた時代があってのものではあるが。

聞きたい音楽に対する自分の歴史と追求してきた軌跡をちょっと振り返ってみる。


カセットテープとの出会い
まだ小学校1年生くらいのころ、どこで知ったのか、テレビで放送されている番組(主にアニメだったと思う)を録音する事のできるラジカセというものの存在を意識し始める。 なんでも、これを使えば、気に入った歌を何回でも好きなときに好きなだけ聴くことができるのである。これは画期的だ(と当時は思ったわけだ) 細かい経緯は忘れてしまったが、おねだりしてビクターの8000円くらいのラジカセ(いかにもラジカセ。でかくて重い。もちろんダブルデッキやCDなどはない)と、 60分テープ(生テープってやつだ。もちろんNORMAL)を3本ほど買ってもらい、 しばらくはそれにTVアニメを録音したり、自分のしゃべりを撮って「変な声ー」とかいって楽しんでいた。

その頃、市販品のカセットテープも数本買ってもらい(ドラえもん歌集など)曲間の無音部分に感動する(汗)。 当時、ラジカセにラインで入力するという方法がなく(マイク端子はあったが・・・)、ラジカセ本体についているマイクに直接TVのスピーカーから録音していたので、どうしても録音・停止時の「ガチャ」という音が曲の頭と最後に入ってしまうのであった・・・。それでも小学校の間はそれで十分だった。

余談として、小学4年の時に買ったNECPC6001でプログラムを保存するのにも活躍した。良く「Tape Read Error」を起こしてくれたものだが・・・。

ライン入力とウォークマンとの出会い
中学に上がりウォークマンが周りで、はやりはじめる。今から15年くらい昔か。 他メーカー、AIWAやSHARP製とかも似た奴を出してきて、自分も欲しくなったので比較検討に入った。 何せ中学生にとっては1,2万円のものということで高価な買い物である。 結局、SONYのWALKMANがデザイン的に優れていたので絞ったのだが、ラジオ付きで厚いのか、ラジオ無しで薄いのかで悩み、結局厚いのにしてしまった (このころはかなりデザインよりも機能偏重だった)。 単3電池が2本入る奴でガム型電池が使えないタイプだった・・・。後で、山梨はTVチャンネル用の電波が飛んでいないのでろくにTVは聞けなかったことを加えておく。

しかし、これを使ってAIRチェックした放送を録音したりTVの出力をラインで録音できたりしたので、「ガチャ」に悩まされること無く録音できたものだった(苦笑)何より感動したのはこのとき初めてヘッドフォンによるステレオの音というものを聞いたことだった。有る意味、それまで耳に入っていた音はモノラルだけだったので・・・。

この頃、知人のところにはいわゆるWラジカセなるものがあり、色々とダビングしてもらったものである。CDもやっと少しずつはやり始めてきた頃だったのだが、まだ「アルバム」というものを見たことが無かった・・・。所持テープも10本くらいか。

そしてデジタルになった
高校に入学の際、以前から買ってもらえる約束をしていたミニコンポを買ってもらう。これも非常に良い買い物だった。当時、SONY、KENWOOD、PIONEER、その他(AIWA、SANYO、DENON、ONKYO、etc)などのカタログを集めて、中学の帰りには量販店に通い詰め、あれやこれや考えた末にKENWOODに決定。人気モデルらしく入荷に時間がかかると言われブルー入ったのも懐かしい。

なんといっても今回はNEWメディアの「CDプレイヤ」がついたのである。テープのように記録はできないが高音質の音楽をランダムにアクセスできる(好きなところから聞ける)。頭だしをしなくていいのは画期的だったわ。しばらく、CDを知人やレンタルショップから借りたり、買ったCDをテープに落としてWALKMANで聞くという生活で満足する。 初めて買ったCDはファルコムのRPG「ソーサリアン」の原音のサントラ。まだ持ってる。

しかし、テープに比べて、CDに不満が無かったわけではない。例えば、記録時間。 テープはそのころ最大120分というのがあったわけだが、CDでは74分(最大でも80分) というわけで、なんとなく短い。もちろん、メディアも1枚3000円と高い(このころ、 すぐに価格改定が入ったけどなんだったのだろう)商用なのでしかたないのだが。。。 まだまだ究極の理想メディアには遠かった。

デジタル音、そしてMIDI
音楽との歴史を振り返る時に切り離せないのが、パソコン上での音楽というものである。PC6001におけるPSG3音に始まり、PC8801FHでのFM音源3音+SSG3音。正確に音楽を鳴らせることにいたく感動したものである。しかし、いかんせん音が本物の楽器とは違う (これはこれで好きな音色なのだが)そこで高校時代に初めてMIDIによる音を知ることになる。

データは軽量で音は、楽器に限定すれば(歌声などは入らない)ほとんど本物(語弊はあると思うが)という代物。しかし、音源が最低でも5〜10万円。演奏するパソコンも高いときている。まだまだ、高校生が手の出るものではなかった。

大学に上がり、X68kを入手することになる。FM音源8音+ADPCM1チャンネルという音源構成は中々どうして、かなりいけており、しばらくはそれで満足していた (このころ、数千というMDXと呼ばれる68用のデータをFDでしこしこ整理していた) その後、ほどなくしてMIDI音源のSC55mkIIを購入。曲を作るというスタンスでは PC88のMMLや、MSXでのダンプリスト入力などでチャレンジしたことがあったが、 いまだ、このX68k+MIDIという構成以上のものには出会っていない。

大学3年くらいになり、NECのPC98ノートなどが出始めた。これとMIDI音源を持ち歩いて、どこでも作曲、というのをやってみたが(RS232Cを使うRSMIDIなんてのも作ったっけ) これまた重くてつらい。とても「携帯」という感じではない。MIDIはこのあと、 SCP-55なる、GS音源のPCカードを購入して、リブレット(あ、PC-110でもやったわ。DOSで、このカードのドライバ入れるのがきつかった)でMIDIデータを聞く、というところまで行くが、結局、そこどまりだった。

そこでテープメディアに戻ってみる
大学4年になり、DATというものを知る。いや、名前は聞いたことがあったのだが、 使ったことはなかった。小さなカセットテープ(8mmより小さい。miniDVくらい) にデジタルで音楽を記録するというものなのだが、なんと、CDと同等、もしくはそれ以上の音質でさらに時間は最大180分までもいけるというのだ(音質をさげれば6時間までも!)このころ、デジタル記録メディアとしてはMDが出ており、徐々にはやってきているころだったのだが、MDは最大でも80分くらいしか入らないこともあり、音質も明らかにCD以下(周波数成分カットもしている、圧縮もしてるしね)ランダムアクセスできるという点を除けばあまりメリットが無かった。そこで、DATの導入を真剣に考えはじめる。

何せテープは小さいので、携帯するにも向いているし、収納にももってこい (当時、カセットテープが200本くらいあり、かなり邪魔くさかった)一時は、 カセットをDATに全部落としておこうかとも思ったが、DATが1本300〜500円くらいしたため、やめた。しかし、問題は色々あった。まず、再生・録音機構がメカ的に複雑なのである。カセットのヘッドと異なり、ローリングし、記録密度をあげるため、ヘッドがかたむいているのだ(そのためトラッキングの問題というのも発生)さらに、ローリングのため電気をたくさん使うので携帯機では4時間程度しか電池が持たないという・・・。

結局、デッキ1台、携帯機1台を購入するが、理想の携帯メディアとしてではなく、CDを録音したり、ナレーションのマスタリング、などの用途で使われた。記録に実時間(60分のをテープに移すのに60分かかる)かかるというのも痛かった。 他には、時にジャムり(テープをかむ)、わかめちゃんになることがあったのもいただけなかったし、いくら巻き戻し時間がカセットより速くてもシーケンシャルアクセスしかできないもの弱かった。

#このころからCD-RドライブによるCDのまるごとバックアップも手軽になりはじめ、 メディアもやすくなってきていたことからも、「だったらCDでいいじゃん」という 流れになった。

デジタルだったらメモリに入れてしまえ
大学院も修了するころ、圧縮された音楽ファイルが脚光を浴びはじめていた。 MP3やTwinVQなどである。それまでにも、X68kでのADPCMや、WindowsでのWAVファイルなどはあったのだが、どれも音質が低かったり、CDの音質に近づけた場合、とても大きなファイルサイズになってしまっていた(FDのやりとりが一般的なころに、1曲でFD50枚分とかは、まずかろう)

そこで、圧縮してみたわけだ。例えば、MP3。これは大体1/10のサイズになるので、 1曲でも3,4Mbyteである。しばらくはこれらをHDDの中にためこんで、プレイヤーとして楽しんでいたのだが、携帯プレイヤーなるものが、この後発売される。

今でこそメジャーになったMP3プレイヤーであるが、初めて店頭に現れたのは2年以上前ではないか?メモリも32Mで5万円くらいだったと思う(初代MPMAN)まさに一部のマニアのためのマシンだったのだが、自分には「これぞ究極のメディアの1つの答えか?」と 思ったものだ。1年後に、MPMANの64MBを購入。現在、通勤中に使用中。

そうはいってもこれも、不便なことが無いわけではない。64MBでは15曲くらいでいっぱいになってしまうし、携帯プレイヤーへの転送時間も、実時間ほどではないが、1曲、30秒〜1分はかかる(最近のプレイヤーはUSB接続などでこの点は解消されている) フラッシュメモリを記録媒体として使うのでどうしてもICのコストに左右されてしまう。テープのように長さを伸ばせばよい、というものでもない。

もちろん、物理的な駆動部がないので、電池の消耗はある程度抑えられるだろうし、 振動による音飛びもない。物理的なヘッドの接触がないから当たり前なのだが。 最近は、SONYからも軽量なメモリースティックWALKMANなども出てきて、ここいらで このメディア的には限界かな、と思う。

結局、より理想とするものはなんなのか〜まとめ
目標は分かりやすい「いつでも、どこでも聞きたい音楽を聴きたいだけ聞ける環境になる」ということであり、そのための答え探しなわけだ。これから、Bluetoothによる無線通信での音楽配信や、携帯電話などを通した音楽配信などもはじまるようで、 どれがこれから出てくるか分からない。しかし、MPMANにしても根本的な、 「どこかにある音楽ソースをダウンロード(記録)して、携帯して取り出している」 ということに、WALKMANとの違いがそんなに大きくは無い。音質は良くなってサイズは小さくなっているが、だ。

そろそろ、なんでも取ってきて手元において安心するのではなく、自由にカスタマイズできる、それでいてラジオを聞くような身軽さで自由に音楽を聞けるようになる日は、 これから果たしてくるのだろうか。。。アイデアの幅を物理的制約で狭められるのは そろそろなんとかしたい。

今日はこの辺で