■ARTIST FILE : Matsutoya Yuming Album Review 1999-2000 ※世紀末を迎えて、あらゆる意味で20世紀の総括を始めたYuming。国内では最大級のスペクタクル・ショーの制作には、相当なエネルギーを消耗したはずです。そしてその裏では、何とも魅力に溢れた作品をリリースしてくれました。千年紀を迎えることのできた意味を踏まえて、新たなYuming Worldが始まります。 |
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"Yuming Spectacle Shanglira"(VHS/LD/DVD) (R:1999/12/03) ![]() |
■既に伝説となった国内最大級の一大スペクタクル・ショー"Shangrila"の映像です。空中ブランコあり、シンクロナイズド・スイミングあり、ジャグラーやマジック・ショーなど、まさに何でもありのステージは、とてもコンサートだなんて呼べたものではありませんでした。Yumingの往年のヒット曲にのせて、まさに一時たりとも目が離せない2時間余の夢の時間でした。 セットリストには未発表の曲も何曲かありました。中でもシングルカットされた"Lost Highway"は秀逸。直球ズドンのYuming Popsでした。次回作に期待が膨らみました。 |
"Frozen Roses" (R:1999/11/17) ![]() |
■こんなアルバムを待っていました。2000年を迎えるにあたり、やっぱりYumingはメロディ・メーカーとして正面から正攻法で勝負してくれるようで、とっても嬉しいです。どの曲も実にYumingっぽいものばかりです。まだ歌詞のチェックは十分ではありませんが、アレンジは新しい試みを随所で聞かせてくれています。こんなアルバムが売れなくっちゃいけませんと強く思います。 今回のアルバムは、ともかくアレンジが斬新です。様々な新しい試みがあちらこちらで行われています。オープニングのSEにしてもそうで、もともとシンセアレンジと同じ位パーカッション(リズム)アレンジがサウンドの胆になっていたのだけれど、単なるリズムパターンとしてでなく、これからこのアルバムが何を語ろうとしていくのか、そのイントロダクションとしては、この騒々しい地下街での工事現場をイメージさせるSEは、聞く者の想像力をいやが応でも掻き立ててくれます。 <Now Is On>のイントロの、そんな音を背景に響くオルガンは神々しくもあり懐かしくもあり...。何が起ころうが、世界は常に回り続けていく。「今」が全て...分かってはいるけれど、過去や未来に引きずられて生きていく虚しさを歌っています。「結局、あなたは一人なのよ」と冷たく言い放つ残酷さみたいなものを感じます。 アコースティック・ギターのカッティングとベースのシンプルな8分のリズムが心地よい<恋は死んでしまった>は、まるで前々作の<Cowgirl Blues>ノリのようなテンポの良い曲。かつての恋人の事を捨てきれずにいる、思いっきり過去を引きずっている悲しい恋の歌です。こういうシチュエーションの歌ってユーミンには多いですよね。 この曲の出だしのSEもとてもユニーク。<巻き戻して思い出を>は、Aメロのボサノヴァ風の雰囲気が(途中のフランス語なども)、二子玉の昼下がりのカフェで時間をつぶしているマダムの光景をイメージしてしまいます。これも異国へと旅立ってしまう恋人を見つめる空港ロビーでの曲。異国を単純に外国と考えるか異次元と考えるかで、曲の解釈がまるで違ってしまいます。出だしのSEが、どこか宇宙船をイメージさせるところがあったり、歌詞の中であなたが旅立つのが「遠い国の時間に」だったり、もう意味深なんだから困ってしまいます。もしかしたらユーミンが巻き戻したかったのは単純に想い出ではなくて時間そのものだったりして(汗)。 そしてShangliraツアーでも異彩を放っていた<Raga #3>。めちゃくちゃヘビーでハードなアレンジです。この曲聞くと、Led Zeppelinを思い出しちゃうのって、分かっていただけるでしょうか...うぅ〜む、どう聞いてもカシミールなんだよね...(^^;;)。 そして<Spining Wheel>は、「悲しいことがあれば、楽しいことが待っている...」これってAGHARTAの「WAになって踊ろう」の世界じゃないか(笑)。でもユーミンの凄いところは、さらにその後に「喜びは知らぬ間に消える...」という悲しい現実までしっかりと歌い込むところにあると思います。(角松自身もそのようなことをコンサートのMCでは言っていましたけど...あ、角松じゃなくて長万部か...笑)。そんな永久連鎖の時間の流れを歌った曲だと思います。エンディングのオルガン系のシンセの音がめちゃくちゃに揺れているのは、時間の流れは決して定まっているのではなくて、常に揺れていて、決めるのはその時間を過ごすあなたなのよと言っているような...うむ、考えすぎですね(^^;;)。 そして事前の評ではモロJAZZっぽいと言われていた<Josephine>。そんなにぽく無いです。わざとホワイト・ノイズを乗せて古い音源の感じをだしているのはさすがです。ジャズというよりゴージャスなポピュラー・ボーカルって感じでしょうかねぇ。 そして収録曲の中で、私が最も気に入ったのがこの<8月の日時計>。どんなに愛し合っていても結局一人と一人、どんなに理解しあってもしょせん孤独なのだと...。そんなことは100も承知で永遠の愛を求めていくのですよね。 曲繋ぎのためのSEが追加されて、シングルとしてリリースされた<Lost Highway>へと続きます。独立してこの曲を聞いていた時はまるで<Hello, my friend>みたいだと思っていましたが、アルバムの中に収まると、まるで違った印象を受けます。リゾート帰りの車の中での曲かと思っていましたが、孤独な時間旅行の歌のように思えてなりません。「君と会った夏」もただ窓の外を流れただけの景色なのかもしれません。 そしてラストはレゲエ調<春よ、来い>(爆)の<流星の夜>。天体マニアの方に言わせると、ちょうどこのアルバムの発売日に流星群が見える日なのだそうですが、それは偶然 ! と本人も言ってましたネ...(^^;;)。しかしサビの部分の歌詞は凄いですね...「時は誰にでも同じに流れて、人はそれぞれの魂預ける...」だって。あまりにストレートすぎて、みんな本気で聞かないですよね。でも、きっとこのアルバムで一番言いたいのは、このことだと思います。先日のANNにユーミンが出演していた時に、電話でゲスト出演していたダ・バンプとのやりとりの中でユーミンが、「... いいねぇ、そういう日常の中の永遠って..」って言っていたの気づきましたか?。やっぱりユーミンの曲って、こういう視点で解釈するのが正しいような気がしてなりません。 とにもかくにも2年ぶりの新譜では、ユーミン健在を大いにアピールしています。歌詞の解釈は別として(笑)、メロディは最高です。こんな正攻法でこれからも作品を作り続けていってほしいものです。 |
"millenium" (R:2000/01/21) ![]() |
■NTVの番組企画で制作された曲。Yuming初のカウントダウン・コンサートで、Froze
Roses Tourの本編終了後、大晦日番組へと流れ込み、カウントダウンの後に、2000年と同時にイントロが流れるというもの。企画は企画として、とっても大切な時間を汚されたような気がしたのは私だけではなかったと思います。しかもド素人の芸人とのパフォーマンスで、あの<A
Happy New Year>を聞かされるとは...。ファンの積年の夢が無残に踏みにじられた...そんな瞬間でありました。 で、この曲は2000年のスタートとともに発表された新曲がシングル盤としてリリースされました。殊の外Yumingぽい曲で安心したものの、やはり企画物の域を出ず、爆発的なヒットとはなりませんでした。「いつか、どこかで、必ず、あなたに巡り会える...」というデビュー当時からYumingが歌い続けてきたメッセージは、こんな時代だからこそ大事なのだと思うけれど...。 |
"Super Best of Yumi Arai" (R:2000/04/26) ![]() |
■オリジナルはアルファ・レコード。事実上版権管理だけとなった同社の販売権を獲得した東芝EMIが同じ内容のベスト盤をリリース。東芝EMIとして積年の夢...Yumingの全カタログを扱えることとなった記念すべき作品といえるでしょう。その後、順次リマスターの後に、全てのYumingサウンドが21世紀を迎える準備ができたということになります。ご苦労様でした>Gさん。このアルバムで特筆なのは、やはり最後に<翳りゆく部屋>が収められていることでしょう。この曲1曲だけでも、このアルバムを買う価値ありと断言してしまいましょう。名曲です。 |
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