INDEX(Topページ) | News & Topics | Glossary | Column List | GuestBook | Link & Profile
前回のコラム「Mac OS X環境で「Google Docs(Writely)」〜アプリケーションの背景や概要等〜」に引続き、Googleよりサービス提供されているオンラインワードプロセッサGoogle Docsの紹介となります。今回はMac OS X環境における各種Webブラウザとの互換性等の現状に関して、Apple純正Webブラウザ「Safari」を中心に検証してみたいと思います。
エンドユーザに対して、これまでにない斬新さや様々な可能性等を示してくれているGoogle Docs等の各種Webアプリケーションですが、Webブラウザをベースとして稼働しているだけに各種Webブラウザにおける対応状況は敏感にならざるを得ない項目ではないかと思われます。そんな各種Webブラウザとの互換性に関して、現時点での「Google Docs & Spreadsheets」における対応ブラウザが以下の通りに示されています。
※何れもcookieとJavaScriptの利用が必須。「Opera」はUser Agent(注1)にて拒否される模様。
また、公式アナウンスこそ発せられていないものの、「Internet Explorer 7」「Firefox 2」及びMozilla Suiteのソースコードを基盤とする「SeaMonkey」等も問題なくサポートされるのではないかと思われる一方、Mac OS X環境に限定した場合には以下のブラウザがサポート対象として挙げられています。
※Mac OS X環境におけるOperaでは、未サポートを通知するページすら表示されず、ログイン画面へリダイレクトされる事となります(Operaに関しては後述するSafari共々、将来的なサポートの意向は示されているようです)。また、Mozilla系Webブラウザはコードベースが「Firefox 1.0.7」以降(「Firefox 1.0.8」、Mac OS X版「Firefox 1.5b1」を除く)に限定されている他、Macintosh版「Internet Explorer 5.x」はサポート外となっています。
上記リスト中では、開発終了がアナウンスされているMozilla Suiteを除いた「Camino」「Firefox」が実質的な選択肢と成り得るでしょう。個人的には「Camino」をメインとして利用していますが、機能制限を受ける事もなく動作も軽快。Google Docs自体にはAjax故の非同期通信が随所に有効活用されているものの、ブラウザベースのWebアプリケーションである以上はレンダリングパフォーマンスの高さが大きなアドバンテージと成り得るだけに、個人的には現時点におけるMac OS X環境でのファーストチョイスはCaminoではないかと考える次第です。特にパフォーマンスの低いレガシーなハードウェア上で動作させた際には、その差が顕著に現れる事でしょう。
↑Google Docs by Camino 1.0.3(クリックで拡大します)
尚、正式リリースされて日が浅いFirefox 2.0も(個人的に使用した限りにおいては)安定した動作を示していますので、標準以上のパフォーマンスを有するハードウェアにおいては、ストレスのない操作環境が望めるのではないかと思われます。
続いてApple純正Webブラウザ「Safari」における対応状況の現状を確認してみたいと思いますが、結論から先に申し上げますと2006年11月現在、Safariは「Google Docs & Spreadsheets」が示しているサポート対象ブラウザからは外されており、デフォルト状態にて同サービスにアクセスした際には以下のページにリダイレクトされる事となります。
↑クリックで拡大します
上記ページはUser AgentにてSafariを検出した際に表示されるオリジナルページと見られ、文面通り近い将来における正式サポートを予告するものかと思われますが(「Writely」時代よりSafariへの対応は、OpenOffice.org対応共々、高い優先度として認識されているようです)、Safariの軽快なレスポンスをWebアプリケーション環境にて存分に活用してみたいと考えるのも事実。現状どの程度の完成度にて利用可能であるのか検証してみたいと思います(以下に示すのは、開発サイドのサポート外の手法となります事を御了承下さい)。
まずはログインが成立しない事には何れの作業も行う事ができませんが、サーバサイドが各種ブラウザをUser Agentにて識別しているであろう事は察しがつきますので、ここではUser Agentの変更にてログインを試みる事とします。SafariにおけるUser Agentの変更には幾つかの手法が存在し、「Safari Enhancer」等の一部オンラインソフトウェアを利用したGUIのインターフェイスによる制御も可能となっていますが、ここでは追加リソースは使用せず「Terminal(ターミナル、/Aplication/Utilities/Terminal.app)」を利用したコマンドラインによる制御を試みてみる事とします。同アプリケーション起動後、以下のコマンドを実行します。
コマンド実行後にSafariを再起動すると、メニューバーの右端に「Debug」メニューが追加されます。表示されたメニューをプルダウン後、下から3行目に位置する「User Agent」にマウスカーソルをポイント。表示されたサブメニューからGoogle Docs & Spreadsheetsがサポート対象とするブラウザを選択(現状では「Netscape 7.0」「Windows MS IE 6.0」が良いかと思われます)する事によってUser Agentの変更が可能となります。
↑SafariのDebugメニューよりUser Agentを変更。変更したUser Agentは永続的に反映される訳ではなく、Safari再起動時にはデフォルトとなる「Automatically Chosen」に戻る事となる
User Agent変更後、再度Google Docs & Spreadsheetsにログインする事によって、Safariによる暫定的な同サービスの利用が可能となります。
↑User Agentを「Windows MSIE 6.0」に変更した状態のSafariにてログイン(クリックで拡大します)
当コラムの原稿は、上記手法を利用したSafariにおけるGoogle Docs上で作成してみましたが、現時点ではプルダウンメニュー、装飾、書式等の一部機能、或いは「ことえり」の予測変換等が正常に動作しない事を確認しております。Safari利用時における最大のメリットでもある軽快なレスポンスは魅力的ではありますが、「File」メニューが機能しない点はアプリケーションの一つとしては致命的(画面右上の「Save」「Save & close」ボタンを使用することにより、任意のタイミングでの保存は可能)。オンラインテキストエディタの一つとして利用できない事もありませんが、やはり今後の正式対応を待つべし、といったところが現状ではないかと思われます。
尚、Debugメニューは、上記コマンド末尾を「true」→「false」に置換して実行するか、或いは以下のコマンドを実行する事によって消去可能となります。
また、Safariと同一フレームワーク「Web Kit」が利用されている国産Webブラウザ「シイラ」に関しては、Safariとほぼ同一の振る舞いを示すようですが(こちらもUser Agentの変更にてログイン可能。尚、シイラのUser Agent変更は「シイラ」>「環境設定...」>「詳細」よりGUIインターフェイスにて制御可能)、現時点ではテキスト入力(編集)等が不可能となっています。
現時点におけるGoogle各種サービス(アプリケーション)は、類にそぐわずWindowsプラットフォームを高い優先度として構築されているように感じられ、Mac OS X版が存在するアプリケーション等においてもバージョンアップを始めとした各種対応等が遅れがちとなる傾向が見られます。しかしながら世界中に点在する数多のWebベースサービスの現状と比較した際には、Mac OS X環境に対するより柔軟な姿勢が充分に評価されるところであり、2006年8月29日(米国時間)にAppleの取締役会議において発表されたGoogle会長兼CEOであるEric Schmidt氏(Dr.)の取締役選任が、直接的ではないにせよ、Mac OS X環境とGoogle各種サービス間の更なる親和に多大な貢献を果たしてくれるのではないかと期待している次第です。事業内容の根本的な資質が違うとはいえ、当時のSteve Jobs,CEOの発言に見られる「innovation」というキーワードで結びつく両社の融合は、それぞれのユーザならずとも、大きな期待を持って受け入れられる事でしょう。近い将来、彼らによってもたらされるであろう革新的事業に、大きな期待を膨らまさずにはいられません。
尚、米国時間10月9日からはMacintoshユーザを対象とした「Official Google Mac Blog」も新規開設され、GoogleにおけるMacintosh関連情報やTips等を掲載していく事も表明されています。そして、同Blogにおける最初のエントリでは「世界中の情報を体系化し、普遍的にアクセス可能で有益なものにする」というGoogleのミッションが引用されると共に「普遍的にアクセス可能という事はMacintoshユーザも含めて、誰もが使える製品を作る事を意味する」と解説。「Google Calender」のSafari対応や「Google Video」「Google Earth」のMac OS X環境への対応等が実現されている現状等を考慮すると、殊更現実味に溢れる言葉ではないかと感じています。
このように、今後のアプリケーションの在り方に大きな一石を投じた形となっているGoogle Docs & Spreadsheetsを始めとする一連のオンラインアプリケーションですが、ビジネス用途での利用を考慮した際には「セキュリティ」という概念が大きな課題になるのではないかと思われます。しかしながら円滑に運用された際に得られるメリットには大きな可能性が感じられますし、最近ではイスラエルにてオンラインスプレッドシートを開発する「iRows」買収の意向も噂される等、(当面はコンシューマ用途での利用がメインとなりそうですが)今後の展開にも要注目となりそうです。
HTTP Request中に含まれる各エージェント(Webブラウザ、メールクライアント等)の識別等を目的としたテキスト情報。Web上に構築されている様々なサービスにおいて、未対応(未検証)の各種クライアントからのアクセスを拒否する必要が生じる場合等は、User Agentに基づいたフィルタリングが行われるケースが多い。しかしながら多くのクライアントはUser Agent情報の詐称が可能なため、任意のWebサービスに対する非対応ブラウザからのアクセスを可能としてしまうケースも多いが、その際には全てを自己責任として認識する必要がある。尚、同一のクライアントであってもプラットフォームやバージョン等の差異により、異なる情報が出力される事もある。
Created Date : 06/11/25
Modified Date :