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 ドタバタの展示会
「あなたが花をするなんて、不思議」
家族や友人から、いつもそう言われてきました。生来、がさつでセカセカの慌て者、おまけに早とちりという性格は「花を創る」などという一見繊細に見える落ち着いた仕事とは全く結びつかないのですから、無理もないことです。

子供達に手がかからなくなった頃、好きな「料理」と一緒に始めたのが「花アレンジメント」でした。花と料理は、結果がすぐ出ますから、せっかちな性格にはぴったりだったのです。それから年月だけは経ったものの、とても「継続は力」などという言葉が当てはまるような状況ではなく、うまくいったかと思えば次はまったくダメの繰り返しで、いつまで経っても満足のいく創作は出来ていません。不器用さは、もうあの世が近くなってきた今のトシになっても一向に改まることもなく、磨かれるはずのセンスなどはカケラもみえてきません。ただ一つ、それでもなぜかやめる気にはならなかったのですから、これだけがが取り柄といえば言えるのでしょう。

移って来た浜松でも、常に部屋に花があればそれでいいからと続けていた花は、縁あって街のグループに出会うことが出来ました。関西でやっていた年月は無しにして、メンバーに入れて頂きました。ベテラン揃いで技術力があり、和気藹々の優しい雰囲気は、年寄りの新参者にとっては有り難く、これもまた幸運でした。その花の会が、今年は「展示発表会」なるものをやることになり、私にも作品を創るようにとのご指示です。今回は他の教室と連携して、ホテルを借りての作品展示発表会ということでした。

どの程度の花を出品したらいいのか見当もつきませんでしたが、使いたかった花器を使って、好きなようにやってみようと思いました。花材が少ない2月ですが、思い切って風に吹かれる花を表現してみよう、浜松へやって来て何が驚いたかと言えば、遠州灘の空っ風でした。そこで「風」をネーミングに取り込むことにいたしました。用意された花材をめいっぱい使って仕上げた花に「遠州灘の風」と記して、作品の搬入を終えました。土日2日間の展示です。土曜日はあいにくの雨、稀代の雨女にふさわしい天気でした。

何事も「いっちょうかみ」の連れ合いジジは、「写真を撮ってくる」と申しまして、デジカメをぶら下げ、一人で出かけて行きました。程なくして戻って来て言うことには、
「あんたのん(君の作品)は、あらへんかったでぇ、、」

そんなはずはないと言っても、「絶対にあらへんかった!!」と言ってききません。仕方ないので、持って帰ったカメラを確かめて見れば、SDカードにはちゃんと花も名札も撮影されています(いよいよボケはったんか、、)もうアホらしゅうて、何も言う気にもなりません。絶対に自分の非を認めないのは今に始まった事ではありませんから、返事をしないことにいたしました(笑)。

二日目はよく晴れていましたが、遠州灘からの強風が吹きすさんでいます。それでも雨が上がったせいで会場は大勢の方たちで賑わっています。10年の間に、見に来て下さるお知り合いもできて、華やかな笑い声が会場に溢れています。嬉しくて晴れがましい気持ちでした。あっという間にコーディネーター認証会や昼食会も終わり、もう夕方です。花の撤収時間となりました。それぞれの花を持ち帰らなければなりません。自分の花器をソロリと持ち上げてみました。

このまま総てがうまく終わるなんてことが無いのが、本来のワタクシです。

花器が持ち込んだ時よりずいぶん重いと感じました。水が補充されていたから当然ですが、この水を捨てると言うことに思いがいたらなかったことが不覚でした。下の部分と上広がりのガラスの器が、細いガラスのリングで貼り付けて止めてあるだけの花器は、上部に一杯に詰め込まれた花と水の重みに耐えうる限界点を、すでに越えていたのでしょう。先を急いだおババがエイヤッとばかりに器を抱え込んだ瞬間、音もなく上下が別れて折れたのです!バッシャ~~ン!!、、転がり落ちた花の周りにガラスの破片がば~っと飛び散っています、うわ~っ!!無残!最悪!

何とかしなければなりません。

周りにいた方々が駆け寄って破片を拾ってくださいますが、床は修羅場です。こんな時に人は「頭が真っ白とか、パニックになった」とか言われるようですが、図々しいおババは、ガラスを拾い集めながら、ただただ腹が立っていました。なんという粗忽者!考えが足りない先急ぎのバカ者!そして頭にうかんだのは、「この花器は××製に違いない!こんなにもろい接着剤で上下を貼り付けておくなんて、、日本製のはずがない!絶対××製だ!」などという見当違いな怒りでした。心のどこかで自分の失敗を認めたくない何かがあったのでしょう、そうだとしたら、自分は間違っていないと主張してやまない連れ合いジジに、長い年月をかけて感化された結果なのかもしれません(笑)。

すぐに駆け寄って助けて下さった方々や、フロントに床掃除を依頼して下さった方に、お礼もそこそこだったことが、今は悔やまれてなりません。

そんなことで、おババの「花の展示発表会」は、いくつになっても先急ぎのドタバタ気質という欠点が、少しも克服できていないことを、自ら再認識しただけの、すこぶるつきのお粗末さでございました。常にも増して強い空っ風が、髪を逆立てて吹き抜けていきました。(2016.2.22.)


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