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社会保険事務所から電話がかかった、何だろう?とおそるおそる返事をする。日本のお役所は、度重なる不祥事の露呈で国民からいろいろ言われ、「公僕」という古い言葉の本来あるべき姿を問われるようになり、さぞかし大変なことだろうとは思っていた。しかし、ちょいと昔、お役所と名の付く所は、居丈高で不親切、高圧的な対応が当たり前だったから、役所と名の付く所からの電話は、つい身構えてしまうのは年寄りのクセのようなものだ。

年金申請も最終段階の70になったので、先日申請をしてきたが、電話はこのことについてだと言う。又書類が不備だったとか言われるのだろうかと思ったが、どうもそうでもなさそうだ。先日の申請は、事前にインターネットからダウンロードした申請書に全て必要事項を書き込んで持参した、そしたらこの書類の方が新しい書式だったらしく、市役所の係官は少し慌て驚いて、非常に親切丁寧に対応してくれた。書類にぬかりはないはずだった。

「お伺いしたいことがございます、○×さんですね?」

「○×さんは、結婚される以前に東京と大阪でお勤めをされてはいませんか?」

「はぁ、、勤めておりました。でも大昔のことですし、そんなに長い期間でもありませんから申し上げなかったですが、それが何か?」

「そうですね!確かに記録がございます!」

「エッ?そんな昔のですか?」

「ハイ!大阪の○×会社と東京の○×会社がありますが」

「大阪では勤めましたが、東京のは違います、別人だと思います。東京では勤めたことがありません」

「あぁ、そうですか!ではこの大阪の会社の分を60才までさかのぼって、国民年金にたして支払いいたします」

「えっ?そんな昔のものを頂けるのですか?」

「ハイ!きちんと調査しておりますから、これはご本人に間違いありませんから、お支払いの対象になります」

「へぇ〜!?そうなんですか!わざわざ恐れ入ります!ご連絡、有難うございました!」

、、、これはスゴイ!国民が、そしてマスコミが、ブーブー言ったことがちゃんと反映されているではありませんか!オソレイリマシタ!マスゾエさん!

いったい、いくら上乗せされるのかは聞き漏らしたけれど、役所はとにかくやっているんだということが分った。何万件の不明者があると言われても、このようなケースの人も多く含まれていて、もうこの世にはいない人々もたくさんあるのだろう。いくら調査を頑張っても、調べきることなどできないのだろうし、役所の末端の事務官の、終わりが見えない作業の苦痛と、達成感のない長丁場の事務処理を思った。そして、いちいち確認し連絡してくれた事へのお礼を丁寧に言ってよかったと思ったりした。

連れ合いが言った。
「大騒ぎして役所に押しかけても一向に埒の開かない人が多いのに、な〜んもせん人にはちゃんともどって来るんやナ〜、、」

若かったあの頃が、いやおうなく思いだされた。皺もトシも、もうもとには戻らないけれど、、雨が降り出した庭の緑が、にわかにひかり輝くように見えた。単細胞おババです。(2008.4.17.)

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