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ナパのワインオークション


ナパでワインのチャリティ競売が行われたと今朝の新聞が報じていた。主催者はナパバレーヴィントナーで、地元の非営利団体への寄付から始まり、いまやその額はすでに84億円にものぼるという。記事によれば、売り上げの大部分は、移民労働者向けの医療施設や住宅建設にまわされるのだそうだ。

自国のワイン産業を、こういう慈善的な方面から他国とは違うやりかたでアピールしていくところが、いかにもアメリカ的だ。落札額は過去最高の980万ドル(おおまかに12億円弱)なんと驚きの数字だ。(この際、アメリカ成金の道楽、などとは言わないでおこう)オークション参加者は中国や日本、英国など世界から集まったと書いてあった。

ワイン経営は、農園、畑作業の部分で、大変な労働力がいる。移民労働者の力がなければ成り立っていかないのだから、労働力を確保し能率を上げるには労働者への配慮はかかせない。経営者達に収益を集中させることを避けて、「富」を分配し、それを還流させていくことは、品質の高いワイン作りには必要なことなのだろう。これをお祭り騒ぎでやってしまうところがアメリカの面白い所だと感心もした。

アメリカの歴史は「移民」に触れずには語れない。30年代の産業の急成長によるアメリカの富も、各国から流れ込む大勢の移民の力があってのことだった。彼等は低い賃金で長時間の労働を耐え抜き、狭いアパートで大家族が肩を寄せ合って生きてきた。この移民たちの力が基盤にあって今日のアメリカ産業の繁栄がもたらされたと言えるだろう。

ワイン産業もここ20年ほどで驚きの発展をしてきた。好景気を背景にワイナリーは増え、ワイン人口も急激に増大してきた。25年以上も続いてきたナパのオークションは、これからも様々な話題を提供していくのだろうが、世界のワインに吹く風は、いまやアメリカにとっては追い風になってきた気配もする。

先住民インディアンにとって「ナパ」とは「豊潤の土地」を意味するのだそうだ。 
 (2007.6.17.)

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