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葉書騒動


パスポートの期限が切れそうになっていることに気がつきました。ほっておくと失効してしまい、再度の申請にはまたシチ面倒な書類が必要になります。大阪の市役所から抄本などを取り寄せねばなりませんし、お役所で何か足らないと言われるのはイヤですから、切れないうちに浜松で引き続きの申請に行くことにしました。連れ合いも一緒です。

前の晩にいるものをチェックしました。「葉書2枚」が必要です、すると、連れ合いは葉書はあるから用意すると言うのです。そんなら、、と任せて、翌朝出かけました、予想外の雨日です。「今日は降らんと言うていたのに、、気象庁は謝れっ!!」と怒っています。いつもの癖でホンキで怒っているから可笑しいのですが、こういうときは何も言いません、すぐにおさまるのがわかっているからです。下手に合いの手など入れようものなら、ヨソ様が夫婦喧嘩かと思われるほど大声で罵詈雑言の雨を降らすお人です。声が良く通るのがまた、年甲斐も無くて、困ったことです。

行ったことの無いビルでウロウロしても行き着けません、やっとのことでお隣のビルだとわかり、外へ出て雨の中、隣のビルに駆け込みました。この段階でヌシはもう機嫌が悪くなってきているのがみてとれましたが、無視、無視です。「梅田やったら、目ぇつぶっていてもわかるのになぁ、、」そうでしょう、そうでしょう、ここは知らない所だから、そんなこと言うても仕方おへん!なんやったら大阪へ帰りはる??!と、おババは意地悪を言いました。

5Fのパスポートセンターは空いていて、笑顔でオネエさん達がお迎えしてくださいました。写真が必要だから3Fまで行って撮影をして、又5Fへ戻り書類を出しました。

「葉書はお持ちでしょうか?」

「ハイッ!!持っています!これではあきまへんか?」

連れ合いが張り切って(声で分ります)ビニールの袋から葉書を取り出したようでした。

「はあぁ??、、」

「これは、、ちょっと、、」

他の席に座っていた2〜3人のオネエさん達も集合してきます。

「え〜?!これ?」

ゴチョゴチョと雰囲気が変です。隣の席で書類を書いていたおババは嫌な予感がしました。
顔を上げると、困ったような、笑うような、なんともけったいな感じの顔が2枚の葉書に集中しています。

「通用しないということもないのですが、、」

と言いながら他の人もその葉書に見入っています。

オネエさんの手元の机には、茶色に変色した小型の葉書らしいものが2枚、なんとも場違いな感じで置かれています。切手部分には「5」と大書してある超小型の年代物です。

又やってる!!今は葉書は10倍の50円です!なにをやってはりますのんや!

「そんなん、使えるはずがないですやん!」

おババはあわてて言いました。そして、

「スミマセン!新しいのをすぐに買ってきます!」

ブツブツ言っているヌシを引っ張ってその場を離れました。

「あんな古い葉書持ってきて!もうっ!」

「使えるはずや!5って書いてある!」

「5は5円です!今は50円!!」

「あっ!そうか、、、」、、、

「スミマセン、、これでいいでしょうか?」

慌ててもらってきた新品の葉書を差し出しました。

「ハイ、結構ですが、、この葉書はどうしましょう?」

「頂いて帰ります!ほんとうにお騒がせ致しました!申し訳ありません!」

最敬礼して退場しました。背中の「目」に、お互いに笑いあっているオネエさん達がみえるような気がしました。突然思ってもみないことを華々しくやってくれる連れ合いには、もう付き合いきれない気がしてきました。プンプンしていると、横でこう言うのです。

「あの子たちは今日一日楽しいと思うでぇ、、あんな真面目な所に毎日座っていて、面白いことなんかな〜んもあらへんやんか!笑うただけ時間も早う進んで、面白かったと思うで、」

どこを押したら、そんなことが言えますねん!発想が珍妙なうえ、一向にめげないお人にあきれ返りました。そして不本意ながら、おババも笑ってしまいました。

後日「検索」してみたら、この5円の葉書は「夢殿」のスタンプが印刷されており、昭和30年代に通用していたもので、もうオークションにかかっているシロモノだとわかりました。

これからも大事に持ち続けて、1000円になったら売りますか?一体なんまい持ってはりますのん?(笑)  (2007.10.12.)

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