「書を捨てよ 町へ出よう」

1971年 人力飛行機舎+ATG

制作・原作・脚本・監督 寺山修司

撮影 鋤田正義/音楽 下田逸郎 J・A・シーザー 柳田博義

美術 林静一 榎本了壱

演出グループ 萩原朔美 竹永茂生 前田律子 東由多加

照明 水村富夫/録音 大橋鉄夫/編集 浦田敬一

作曲 クニ河内 加藤ヒロシ 田中未知 荒木一郎 

制作 九条映子

キャスト

私 佐々木英明/親父 斎藤正治/妹 小林由紀子/彼 平泉征/彼女 森めぐみ/地獄のマヤ 丸山明宏/みどり 新高恵子/老娼 浅川マキ/飛行機三兄弟 クニ河内 チト河内 川筋哲朗/隣の男 下馬二五七/サッカー部キャプテン 昭和精悟/狐の面・実は私の母 蘭妖子/長髪詩人 J・A・シーザー 

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「あんたらこんな昼間からサ、こんな暗い映画館にやってきて、何かサ、イイ事ないかナ、と思ってやって来たんだろうけどサ、何もナイヨ。ここは闇。明りをつければ消エチマウンヨ」

「あかりをつけてください」と主人公がいっている。映画はできあがってしまってはどんなにいろいろな方法、イメージが詰め込まれていようと、それは固定され毎日何度も、そして映画館のみならずテレビでビデオで上映される。そんな決まりきった見せ方しかない事への寺山のいらだちが伝わってくるようだ。映画館であれば映画という道具をつかってまだパフォーマンスを続けられる、そんな可能性を映写室にもとめた。フランスでは映画館に映写技師の名前が掲げられているという。それを見た寺山は映画を作成するのはカメラが回るの間だけでなく、上映中に映写機とスクリーンによりイメージのさらなる層を構成するのが可能であることを感じたということを記述している。

カット割が基本的になく、ワンカットワンシーンでドキュメンタリー的に撮られている。ドキュメンタリー的な緊迫感、一方でフィクションのユーモアがあり、映画というものの虚構性を問直している。豊富な運動量と遊び、それに加えて歌謡曲、ジャズ、ロック、フォークが入り乱れていて、時代を駆け抜けてゆく軽快さがなによりも魅力的である。そういう意味ではパンク映画といえるほど、多様な要素が荒々しい新鮮な衝動を保ったまま投げ込まれていると思う。クニ河内作曲のおかまたちの国民歌謡「健さん愛している」、森忠明の詩「母捨記・ははすてき」がロックをバックに朗読されるなど、当時レコードも発売されていた。(CDで復刻された)

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