このような歴史的な背景によって、実戦に使えない套路
(型)だけが権力者たちに容認され、戯劇(舞踏の類)な
どの形態をとって現在まで生き残ることが出来たのだ。だ
から、中国武術の表演大会を観ていると、日本武道の表演
大会には見られない明らかに戯劇(舞踏の類)と言えるも
のまでが混在しているのだ。それは、長い禁武政策を経て
きた経験から、民間武術の伝承を守るために、わざわざ、
武術表演と戯劇(舞踏の類)を混ぜて来たと考える方が自
然であろう。そして、それが日常になり文化になったので
はないかと推測できる。
ようやく最近になって、一般に知られるような組み手練
習が、出来るようになった。しかし試合に関しては、まだ国政
によって多くが規制されている。これらの事から、近代格闘技とし
ての歴史の浅い現在の中国武術は、指導者の問
題等により、実用に足らない形で継承されていると言わざ
るを得ない。
また、各流派に多くの武勇伝が伝えられてい
るが、その根拠として、優れた理論と技術だから等とよく
言われる。しかし、それらの武術がかつての実戦でどの位
有効だったのか等は、史実上明らかではなく、物語の域を
出ていないのだ。
-2-
![]()