「きんきんイカのターボ祭」に参加して★清水鱗造

「きんきんイカのターボ祭」に参加して
清水鱗造


 朗読会というのに初めて参加したきっかけは、今年2月に催された岡田幸文さんのミッドナイト・プレスと楠かつのりさんの「なまもの」という会に出て、2次会の宴会で初めてお目にかかった青木栄瞳(えいめ)さんのお誘いだった。朗読というのは何回か観ているが、詩人の肉声というだけではよほどその世界に引き寄せられるのでなければ、あまりおもしろくない。演劇的要素、音楽的要素も大事だし、かといってあまりすべてが洗練されていてもおもしろくない、という難しいものだという感じがしていた。でも、あまりごちゃごちゃ考えずにやってみようというところだった。
 FCVERSEの片野晃司さんが観にきてくださるということと、ビデオ詩というものを作っているので、それの音入れの打ち合わせもあって、彼の車で西八王子に向かった。だいぶ、出演者の集まる時刻に遅れて着き、すでにバー「アルカディア」の前には人がたむろしていた。昼食を食べていなかったため、急いでマイクに声を一度通し、昼食を食べてからすぐに本番となった。
「アルカディア」の朗読会は八王子に住んでいる天野茂典さんが主催している。もう23回目だという。東京郊外に住む詩人が中心になって行われているこの朗読会には、都心で行われるものと違った気楽な雰囲気があった。それに天野さん、青木さんはじめとても元気がいい。いろいろと雑事が頭をかすめる今日この頃、とてもストレス解消になる猥雑さもある。自分の朗読がすんで、シバさんの歌になったころにはアタマが按摩される感じでとてもいい気分になった。この会はジャムセッションが朗読にマッチしているのがいい。天野さんもたぶんジャズはたくさん聴いているのだろう。
 女性はみなさん、きれいだった。荒川純子さんはデパガの詩を読んだからデパートに勤めているのだろうか。平居謙さんはとてもH(?)な詩を読んだが、よく聴いていると抑制も利いている。演出もよく考えられていた。関富士子さんの詩は前から親しんでいるが、きちんとマイクの前に立って色気のあるちょっととろんとした目で読む詩はまた違った印象をもってくる。
 次は僕で、用意した詩3編を読んだ。富樫さんはあっというまに僕の詩に合う音楽をつけてくれて、それがまた音楽的に鋭いのがすぐにわかる。プロなのだろうと思った。実際作曲ではプロの方であることがわかった。
 シバさんはプロのエンタティナーの素晴らしい演奏をしてくれた。小池昌代さんは前にお会いしたことがあったが、どこか端正なところがある、でもそれはこの会では異質ではない。中上哲夫さんはアメリカのビートの詩の翻訳をされていると記憶していたが、その線に沿ってブコウスキー追悼の詩を読むのが音楽にマッチしていた。筏丸けいこさんは、平居さんとはまた違った猥雑さをもった詩を読んで、場内を沸かせた。青木栄瞳さんは、子供的なところと母性的なところをもったとても明るい可愛い人である。青木さん一家の海水浴はとても楽しいだろうな、と想像させる詩であるし、並でない描写力がある。
 最後に天野茂典さんが詩を読むころにはかなりアルコールが入っていた。ここに掲出した詩を読んでみるとわかるが、そのレトリックにはけっこう生真面目なところもある。それがもうメチャクチャに音楽と混ざった言葉を絶叫する、という感じになった。でも、天野さんみたいな人が近所に住んでいたら楽しいだろうな、と思わせて、会は終わった。
 その後ぼくはリラックスして酔態を見せた。でもかなりみなさんめちゃめちゃだったので、これでよかったのだろう。長尾高弘さんも途中から来てくれていて、一緒に飲むことができたし、初めて会う方とも酔っているなかではあったが話が弾んだ。
 車を運転する片野さんには飲めなくて悪かったが、途中ぼくは車をとめてもらって、胃に残ったジントニックを吐いた。酒をほとんど飲んでいない昨近、無理やりに緊張を解消してくれたこの会に感謝する気持ちが湧く。八王子から片野さんの住む鎌ヶ谷まではちょっとした小旅行だ。夜中、家族の寝静まったウチの居間で二人でコーヒーを飲んだ。

   1997.7.18記

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