首都

首都
荒川純子



首都を つくるのです
私が 一人前に なるために
そこに 首都を つくるのです
紙の上の 変わった形をした 土地に
4Bの鉛筆で 太くふちをなぞり
青い 蛍光マーカーで 塗りつぶし
そこに 首都を つくるのです
そこへ 産み落としていく
私の 部分を はじかれて
孤独になった 私の 部分
・・悪党だった 私の
・・善人だった 私の
私の 部分を そこに投じて
裏ごしされて 敏感な 私になる
疎外され かわいた日常で
割れていった 光るところだけを
もう一度 掻き集めて
私の 首都
ひきだしにしまった
とっておきの 激しい香りと
青い カラーを 今こそ 発散させて

 一人前の基準?
 一体 何が本当の一人前なのか
 子供を産むことか 夫がいることか
 同じ会社に ずっと勤めていることか
 ――――――
 人並みだったら 一人前なのか
 他人と 足並みを
 そろえないでいることが
 普通でないように 思われる
 私は 私であるだけなのに
 なぜ 人と同じでなければ
 いけないのか
 
私の首都には
つりあがった眉毛はなく
むきだしの 好奇心も
千里眼をもつ噂も ない
自分なりの 大人になればいい
打ち砕かれた 私の 部分が
もう一度 集まってくる

    偏って/
    渇いて/
    割れた/
    パーツが/

そんなパーツが 私の首都で
もう一度 光を放つ
手を つなぎあって
きちんとしたものへと
堂々 姿をあらわす

首都をつくるのです
紙の上に しるしをつけて
ここを 私の 首都とします
ここを 私の 首都としました
私が 一人前か どうか
私が 決めます
首都は ここです
青い服を着た 私が
濃い色で ふちどられ
歩きだしていく


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