点々と ひとつ★筏丸けいこ

点々と ひとつ
筏丸けいこ



夏にタネをまく
のは スイカを盗んだ男 深夜 まあたらしい
ダンボールにごろりとスイカが六ツ入っていた
それを見たら何だか怒りたくなった
矢も盾もたまらず その一つを
地面に叩きつけた
唇にあまい睡蓮とティオ・ペペの
ほら舌を濡らしたよ
喉を通らせろ むしゃぶりつく
忙しい感じがするほどに湧き出る水と自分の間
を男は行ったり来たりした
はじめてのことではない気がする
すると手のひらに妊婦の腹が落ちてきた

スイカならスイカ
タネならタネ
とろりとした心地の自由
たくわえている
彼の 白いシャツの胸あたりいちめん真っ赤


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