米の旨さについて

米の旨さについて



 例えば、煮魚の煮汁などで何杯もお代わりする、というような米の食い方を私はしないが、パエーリヤやリゾット、本式のジャンバラヤや炒飯などは何か米自体を料理するという趣旨があって好みである。特にパエーリヤやリゾットは、主食というよりは料理の一品という傾向が顕著で、これはそれを食するときにワインが欠かせないという事実を見てみても明らかなのではないか。酒の介在ということから言えば、いささか個性的な食い方には類するが、中華街などでお土産で持ち帰ってきた炒飯を、翌朝、その冷えたぱらぱらしたやつを肴にビールを頂くなんてのも乙なもので、ちょっと二日酔い気味で外に雨なんか降っていたりすると一入である。ちなみに、パエーリヤは大掛かりで家庭でこしらえるのには少し難があるが、リゾットのほうはフライパンひとつあれば意外に簡単に本格的なものが出来るので試されることをお勧めする。米を料理として食うのはかくのごとくであるが、もし主食ということであるのなら、副食にゼイタクなものは要らないと個人的には思う。ウルメが二三本に甘くない漬物少しと、そこに理想を言えば麦を混ぜた飯に薯蕷をかけて食うというのが枯れていて、しかしこれを本物のゼイタクと謂うのかもしれないが。


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解酲子飲食 五 目次| 前頁(西南思慕)|