1997/03/04(TUE)

1997/03/04(TUE)



倉田氏は、いまマクベスに題材をとった詩を書いているといっていた。その前は確か、フェリーニの『道』のことを言っていたっけ。こうした詩に対する距離といったものもいまのわたしには、なかなかに正しいものと思われる。たった一つの言葉でも、ただの断片としてではなく、何か意味をもった全体として感じているとも、かれは言った。
かれのこうした傾向は、わたしは、面白いものとみている。要するに、かれは、物事をいま、とりあえず受け入れるという方向を行っているのではないか。何かに題材をとって詩を書くというのは、確かに一つの方向だ。もうそうした、いわば、間接的な方法しかないのかもしれない。詩の直接性は失われたのだ。詩もまた、限りなく散文に近づくのだろう。詩とエッセイ、詩と日記、詩と小説との距離は限りなく縮まって、区別のつかないものになるだろう。この変容のカーブをわたしたちは、いま、曲がりつつある。

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夏際敏生日記2 [1997/02/23-1997/03/20] 目次| 前頁(1997/03/03(MON))| 次頁(1997/03/05(WED))|