1997/01/28(TUE)

1997/01/28(TUE)



わたしの詩は大丈夫だろうか。
こんなデタラメがいったい通用するのだろうか。
清水鱗造氏は、通用すると言ってくれた。
どうやら通用するらしいと、わたしも思った。
こうして二篇の作品が、いま、かれの手元にあって、活字になる日を待っている。
だが、その後の詩でかれがまだ読んでいないものが沢山ある。
それらは全部、大丈夫なんだろうか。心配だ。
活字になってしまえば、もうこっちのものだ。なにがこっちのものかは分からないが。鱗造氏に早く残りの詩を読んでもらいたいが、そうもいかないらしい。
かれはわたし一人のものではないらしいのだ。
阿部薫は、自分の演奏が罪なのではないかと常に不安に脅かされていた。
間章の仲介でさまざまな海外の演奏家と共演することで、しだいに、自分の演奏もまたけっして罪なのではないということを悟っていったという。
わたしも、清水氏によって、わたしの詩がけっして犯罪でもなんでもなく、やはりこれはこれで詩と呼ばれるものの範疇に入るものであることを、保証されたといっていい。この保証は逆にあまり名誉なものではなく、また、それ自体、かなり曖昧なものではあるが、それはそれで、充分重要な意味を担っているものだ。
なぜなら、この保証があって、はじめてわたしは、何ものか、わたし以外のものと連絡がとれ、何かに参加できたからである。
そればかりではない。このことで、わたしの得たものは、実は計り知れないといってもいいくらいのものなのだ。
何よりもまず、わたしは、あの針穴の一点に、ついに立てたということが一つある。

|
夏際敏生日記 [1997/01/21-1997/02/22] 目次| 前頁(1997/01/27(MON))| 次頁(1997/01/29(WED))|