October

October
大村浩一


鏡だとか
本だとか
見たくないものばかり
どうにかしのぎながら
時間は往く
駅さえ通り過ぎている
気づかない 居並ぶ顔
脚 暗い店 笑い声
細い華 鈍い曲調
たってしまえば
すぐだと分かっている
じきに晴れ渡る冬だ

かぼそいにぎやかし
それがすっと沈む
もの柔らかにふるまうその人の
しずかな午後のくるしみに
いまはじめて気がついたりする

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