キーワードとキーナンバー(1)「PL法」

キーワードとキーナンバー(1)「PL法」
大森吉美


 先日、つれあいの本棚をごそごそしていたら、「キーワード&キーナンバー大事典」というものが出てまいりました。サブタイトルに「時代の動きが一目でわかる」とブルーリボンに白抜きの文字も鮮やかな代物です。日本経済新聞を読まれているようなビジネスマンには、常識以前の言葉たちなのかもしれませんが。ただし、これは今年(つまり、平成9年度)版ではなく、ちょうど1年前の平成8年1月に出たものですから、時代の動きはこの一年でかなり変わっているのでは? とも思われたのですが・・・。そこは、それ。
 なにしろ猫みたいな性分の私は、珍しいものがあればいじってみなくては済まないたちです。パラパラと暇に、まかせて読んでみました。
 まず、開いたページに「PL法を知らない主婦、40%」とありました。ここで、私が「ふーん?」とうなり声をあげたのは、主婦の無知を恥じたわけではなく、隣でなにやら小難しいハウツウものを読んでいたつれあいに、思わず「ねぇ? PL法ってなんだっけ?」などと聞いてしまった40%の一人であったからです。でも、よぉく考えれば、私にも思い出せたほど世間を賑わせた法律でありました。
「あんたなぁ? ほんまに知らんの? ほら、説明書なんて読んでる人いるんやね? って変な事に感心しとったやんか?」とあきれかえるつれあいの顔を見て
「つまり、あぁ、あの? ほら、猫の電子レンジ騒ぎの・・」とようやく切り返せたのでした。
 思い出した記憶の断片に、たしか、(洗った猫か? 雨でぬれた猫か? は忘れましたが)猫を乾かすために電子レンジにいれたところ、猫が死んでしまった、怒った飼い主は説明書に「猫をいれてはイケマセン」と明記していなかったメーカーが悪い! と訴えて、それが、この法律ができたことで認められたとか、なんとか。そのときに電化製品の説明書はどこまでも説明が必要で、書かれていないことで消費者に不都合が生じた場合、メーカーの責任になるんだというふうな理解をして、なんともはや、メーカーも気の毒なことだなぁと思ったものでしたが。
 それと、同時に、世の中には説明書の類をすみずみまで読む人がいるんだなぁと決して自慢出来ない変なことに感心したのでした。
 そして、今、私の記憶は、その法律を遥か過去へ置き去りにしていました。
 だから、きっと 街頭で「あなたはPL法を知っていますか?」と問われたら「えーっと? なんだっけ?」と言う主婦の一人であったことに間違いはありません。そして、PL法が出来て消費者の一人である私にこの一年にどんな変化もなかった事は確かなことでした。それからも説明書の類を隅々まで読むような事は、少なくとも私にはナカッタのでした。
 そんな反省とも、感慨とも言えない思いを追いやって、同じページを見るとそこには
「20代女性の料理のレパートリー数」(これは平均10品目らしい。つくれない料理の中に「八宝菜」があるのにはビックリしました。)
「食事のマナーに自信のある女性」(これは、2.5%なんですって。)
「PB商品を知らない主婦」(なんと53.3%ですって。それなのに安いからっていつもPB(プライベート・ブランド)商品を買ってる主婦は60%もいたらしい。)
 そのなかで唯一ほっとしたのは「母親は料理が得意、と答えた子供が63%」という項目でした。思わず「良かったぁ、」とつぶやいた私を横からのぞきこんだ、つれあいは「それは、うちの子供の答えとは違うでぇ。」と宣うのでした。

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