ZERO CITY -HAL- LIVE REPORT PART3

【ディスコ・トムガへなだれこみ】

 儀式終了と同時に暗転したステージだが、ファンキーにボイスチェンジした英語のナレーションと共に、ステージのあちこちで七色の回転灯がぐるぐる回り始める。『ディスコ・トムガ』という儀式の始まりである。客席のあちこちでそそくさと準備を始める観客たち(笑)。

 浅黄の着物地とおぼしき上着(家紋がたくさんアップリケされている)に身を包んだカール・ビューチー・テツがダンサー2人を従えて登場。【HI TENSION LOVE】【ONE MORE】【GOLDEN FISH & SILVER FOX】【ONE NIGHT BRIDE(新曲)】と、おなじみのダンス曲オンパレード、題して「これでもか!」メニューに、ステージだけでなく客たちも汗を振り飛ばして踊っている。4曲目のONE NIGHT BRIDEなぞ、新曲でありながらダンサーもいない、というシチュエーションにもかかわらず、客席中が揺れていた。これでみなZERO CITYの住人『ゼーラー』となったわけである。

 4曲終わってステージが暗転すると、階段上に黒い人影が現れる。黒の中折れ帽と黒ロングコートを脱ぐと、そこには白装束のマリーザの姿。【イスタンブール幻想】にのって演舞を披露する。司祭の差し出す2mはあろうかという棒を振り回しての演舞、途中『突き』や『蹴り』が入り、これが戦いの舞であることがわかる。片手だけを使ってバトンのように回転させるところが力強く、プロとしての技を見せつけられる思いだ。

 曲の高まりと共にどんどん激しくなってゆく舞、そしてついには銃弾に倒れる。その姿は明治維新の犠牲となった白虎隊士の姿を彷彿とさせる(史実では彼らは自刃したのであったが)。司祭がそっと近づき、コートを着せかけたところで暗転。


【そしてゼロ戦記(?)へ】

(ステージ暗転のまま、風の音。雲が流れる様子が背景に映し出される。続いて機関銃の音や人々の絶叫が聞こえてくる)

ナレーション:ここモンゴル草原での戦闘は熾烈を極めていた。世界連合軍の攻撃に、今やゼロシティ軍は風前の灯火であった。テツ総督は、もはやこれまでと覚悟を決めていた。やはり武器の前には歌や踊りなど通用するわけもなかった。人々は次々に戦場の露と消えていった。

(以下、台詞はすべて録音。)

竹下二等兵(爆発にふっとばされながら下手から入場)隊長!
隊長(階段上から登場、降りてきながら)竹下二等兵!

(隊長・竹下共に白のスエットスーツのような衣装。肩には黒のアメフトプロテクター、頭は自転車競技で使う流線型のヘルメット(黒)、足下は黒ブーツ。2人ともベルトをつけているが、隊長のほうは階級を表すのか黒のチャンピオンベルト様の太めのものである。そしてなんと言っても2人の股間!ぴったり布があたっているのが笑える。カルツェ(イタリアルネサンス期に流行した男性用タイツ)のブラゲッタ(股間部が開かないようににあてられたという布)を模したのか?)

竹下:隊長、もうだめです。仲間がどんどん殺されていきます。
隊長:何を言うんだ、竹下二等兵。あきらめるんじゃない!
竹下:でも無惨でもう見ていられません! あっ、こんなところに機関銃が…(階段途中に置かれた機関銃に近づく)
隊長(行く手を阻んで)やめるんだ竹下二等兵!
竹下:だって…
隊長:世界軍と同じ方法で戦ってどうするんだ。我々には我々の武器があるじゃないか。さぁ踊るんだ

(隊長と竹下二等兵、階段踊り場で揃って踊る。お尻をつきだし踊る姿はなかなかラブリー(笑))

竹下(階段奥まで上がって向こう側(奧)を見下ろすしぐさ)踊ってる、みんな踊ってますぅ。は、はは…。
隊長(階段下で)竹下二等兵、目を背けるんじゃない。仲間たちの死に様をしっかりと胸に刻んでおくんだ。
竹下:むごい…。こんな戦争、誰が始めたんだ!(階段上で強く腕を振り下ろして怒りのポーズ)
隊長(竹下二等兵を振り返って)何を言うんだ竹下二等兵。(ステージ中央で前に出てきつつ)我らが総督、テツ将軍の決められたことじゃないか。
 それに我々の死は決して無駄ではない。これを見ているゼロシティの子供たちはきっとこのことを生かしてくれるに違いない。私は自分のために戦っているのではない! ゼロシティの子供たちのために戦っているんだ。
 (振り向いて階段を上がっていきながら)竹下二等兵、まだ若い君にこんなことを言ってもわからんだろうが、君もそのために戦ってはくれんか(竹下二等兵の肩に手をかける)

(5月19,20日、隊長の長台詞の間、階段上の竹下二等兵が何かしている。19日はどうも田植えでもしているよう。20日にはあちこちで拾い食いをしていた)

竹下:わかりません! だいいちゼロシティに残してきた恋人はどうなるんですか。
隊長:そうだ、その恋人のために戦ってはくれんか。
竹下(タメ)はい!(敬礼のポーズなのだが、片脚が後ろに跳ねている(笑))
隊長:それじゃいくぞ! 一世一代ハチプン・トムガの舞だぁ!!

(とても言葉では言い表せそうもないほどに珍妙な舞、動きと動きの『間』が、何とも言えない。鳥のように両手を広げ、左右に揺れながら踊っていると…)

隊長(突然のマシンガンの音&火花)うわぁ!(のけぞる)
竹下:隊長!
隊長(腹を押さえよろけつつ階段を降りる)う、ぐぁ、ぉあぁ…
竹下:隊長、死なないでください。(隊長に手をさしのべ)上がってきてください。(踊り場横に立ててある赤旗をとり)この自由の旗のひらめくここまで…。
隊長(はい上がろうとするが果たせず)俺はもうだめだ。(階段下にひざまづいた形で芝居)私にかまわず、君には君のやるべきことがあるはずだ。忘れてはいけない。ゼロ(両手で○)は百万をかけても(両手で×)ゼロ(両手で○)なり! ぐぁ〜!(前に突っ伏す)
竹下:たいちょぉ〜!
竹下(曲イントロかかる)竹下二等兵、隊長の遺志を受け継ぎ、アイム・ソーリーを歌います!

(【I'm sorry】演奏。曲はカラオケ、途中の♪ひとりのソーリーふたりのソーリー、と速くなるところで竹下二等兵右往左往、これにあわせてドラゴン・スレーヤーズの面々も右往左往する)

(またカラオケにはバックボーカルも入っている(もしかしてSMEの録音そのもの?)のだが竹下二等兵♪なさ〜けないけど、のところが上がりきらずバックボーカルとの違いくっきり(笑)←しかし回を追うごとにせりあがり、だんだんと音程が近づいていった)

竹下:♪忘れた頃にウノソーリ(で一気に暗転)

(嵐の音、数秒後照明が戻ってくると、そこにはヘルメットをはずし周囲の歓声に応え手を振る隊長と竹下の姿。上手奧ではスタッフが赤旗を振っている!)

ナレーション:突然の大嵐がゼロシティ軍を勝利へと導いた。そこには人々の歓呼に応え凱旋する兵士たちの姿があった。

竹下:隊長が生きていたなんて知りませんでしたよ。
隊長:死に真似がうまくなくちゃ兵隊なんぞやっていられんよ。いやぁ長生きはするもんだ。
竹下:おみそれしました!(おどけて敬礼)
隊長:はっはっは…(下手ソデを見て)おっと竹下君、きみの未来が近づいてきたようだ。

(言い残して竹下を見ながら上手へ去る。同時に下手から恋人(ハルミ)登場、ステージ中央で2人ポーズ。上方を指さす竹下、寄り添う恋人、まるで中国のポスターのよう(笑))

ナレーション:こうしてゼロシティに平和な日々が戻ってきた。今モンゴル草原に真っ赤な朝日が昇ってゆく

(ステージバックに巨大な朝日登場)


【超かっこいい2曲】

 暗転の後、ゼロシティ軍の勝利を祝うかのごとく【ZERO CITY】が演奏される。ハルミ(vo.)、マリ(per.)、マリーザ(dance)、の女性3人『ZERO SISTERS』の楽曲。ハルミ嬢のパワフルなボーカル、マリーザの女性ならではの身体のしなりを使ったダンス、マリちゃんのティンバレスソロ、と見どころ聴きどころたっぷりの1曲だった。ラスト♪ZERO CITY!で一気に暗転。

 次いでヘリコプターのホバリング音と共に、ステージ中央にぶら下がっていたUFOもどき(失礼)のセットが降りてくる。と、階段上方に人影。青の淡いバックライトに浮かび上がったのはカール・ビューチー・テツその人であった。黒いサテンの上下、モデル立ちできめたその姿は、ファンでなくてもため息の出るほどのかっこよさである。

 曲は【SOUL SNAKE】、ダンサーの拳を繰り出すような硬いフリと、♪SNAKE〜の柔らかいフリの対比が美しい。また、テツ総督の歌いながらの階段降りにも細心の注意が払われ、あくまでかっこよく美しい。これが屈辱の儀式をやっていたのと同じ人なのだろうか。

 間奏部ではCD『H2O』どおり「やってるかい諸君…」の語り(録音)が流れ、それにあわせてフロント3人がカクテルグラスで乾杯、首を一気に傾けてあおるしぐさのテツ総督に場内は歓喜の声。しかしこの部分、日を追うごとに変貌し、飲み終えた後グラスに指をつっこんでしつこくなめる、というしぐさが加わり、場内の反応は『歓喜』を通り越して『爆笑』へと一転したのであった。

 さらに続く長い間奏、ここでは左(コータロー)、正面(テツ)、右(マリーザ)と階段の高低差をも利用した3人のフォーメーションが見もの。まるでチャーリーズエンジェル(失礼)を彷彿とさせるポジションで立ち、まず呼吸を合わせて、上体をゆっくりと左右に揺らす。次いで懐からピストルを出し、構える。これがバックライトで浮かび上がるのだから歓声もおころうというもの。この1曲でハートを射抜かれた女性客約2万人(推定)であるのもうなずける。かく言う筆者も例外でなく、これでチケット代の元は取ったと思った次第であった(爆)。

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もう帰りたい