コーセーアンニュアージュトーク

at 恵比寿ガーデンホール in Feb. 25, 2003

PART 2

【假屋崎先生お宅訪問の巻】

石:近ごろね、ふっと起きるじゃないですか。そんで「ぱちっ」とつけると先生がいるんですよ(客、笑い)。で一番最近見たのは『お宅訪問』ですね。
假:ああ、ありましたね。
石:あれすごいじゃないですか。椅子1個にしても相当するんじゃないんですか?
假:忘れちゃいましたね。
石:またまたぁ。
假:ほんとに忘れちゃうんですよ。先ほどお金じゃないと申し上げたじゃないですか。ですからほんとに、欲しい欲しいと思っちゃうと自分のものになっちゃうんですよ。
石:今日はね、スライドで先生のおうちを拝見したいと思うんですけど。
假:いいですよ。
(1枚目のスライド、でっかいシャンデリア、壁には大きな鏡、その下にサイドテーブル、手前にはソファ)
石:うわぁ。ルイ13世、これちょっと、先生…。
假:これはなんでもする部屋なんですよ。昼寝したりだとかお弁当食べたりだとか打ち合わせをしたりだとか、多目的な部屋なんですよ本当に。
石:え〜、じゃあ僕がここでペインティングしたりしてもいいんですか?
假:いいですよ。
石:あ、美輪さんの写真が…
(2枚目、同じ写真の壁際アップ。サイドテーブル上に美輪明宏さんの写真が所狭しと並べられている。しかも写真立てがみんなデコラティブな額縁仕様)
假:そう、美輪さんコーナーなんですよ。ここで毎日拝んでます。って美輪さん今日きていらっしゃらないですよね。怒られちゃう。
石:でも美輪さんってすてきな方ですよねぇ。
假:すばらしい方ですよね。
石:僕もお会いしたんですけど、対談させていただいたんですけども。ファンの方ならご存じですけどナイロンクラブっていう僕の(ツアーの)パンフレットに載せさせていただいたんですけど。造詣が深い、ここで言うこともないほど造詣が深いし。それに精神がね、美しいですよねあの方は。見てると悪魔的で妖艶で、すごいんですけど、とってもピュアなんですよね。
假:それで、やさしいんですよ。厳しいんですけどやさしいんですよ。
石:率直なんですよねきっと。…それにしてもこの写真の量は、先生。
假:もっとあるんですけど、並べきれないんですよ。
石:いかがなものか、と。ご一緒している写真ってないんですか?
假:ないんですよ。おそれおおくてとれないんですよ。
石:美輪さんというのは、假屋崎省吾先生から言うと、…人じゃないみたいな
假:第2の母です。弥勒菩薩みたいな方ですよ。
石:あの方は男性の感覚も持ってらっしゃるから優れてらっしゃいますよね。
假:元々男性の方ですから。(客、笑い)
石:そうだったんですか。あと後ろの油絵みたいなのは…
假:油絵じゃないんですよ、鏡なんです。うち絵は1枚もないんです。
石:そうなんですか?でも映ってる風景がもう油絵ですよ。
假:そうですね、おもしろい効果だ。
石:おもしろい効果だわ。これ先生ね、この台といいね、美輪さんの写真といいね、後ろの鏡といいね、もうきわまってますよ。…ちなみに家具なんかはどこ産の物がいいとかあるんですか?
假:見た目だけなんです。何世紀だとかルイ何世様式だとか全然こだわってないです。見た目でびびっときたら買ってきてうちに置くって感じで。ですから申し訳ないんですけど、ブランドも全然興味ないです。
石:近ごろシンプルな生活とか言ってねぇ、まったく。政治家がいってるけど、そうやってシンプルにシンプルにして、国民に金使わせないようにしてますけど。人生は1度きりなんですからんぇ。…こういう事を奥さん連中に言うとたいへんなんです。俺みたいなのがいっぱいできちゃいますからね。…次行っていいですか?
(3枚目、手前左右に大きなお花、正面の壁にチェスト)
石:ちょっと先生、このお部屋は…
假:これは2階の書斎なんです。この手前にソファがあって、そっちのほうが豪華なんですけど。このお花はアートフラワーなんですよ。みなさん私が華道家だから生のお花を飾ってらっしゃると思ってらっしゃるでしょうけど、もちろんそれが一番いいんですけど。でもアートフラワーだっていいんですよ。要は美しい空間を作るってことですよ。それから今プリザーブドフラワーといって生のお花を加工して2,3年持つようにしたのがあるらしいんですよ。今朝の花まるで言ってましたけど(客、笑い)。そういうのを自由にお使いになればよろしいんですよ。
お花だけじゃなくて、絵とか自分の好きなものを、それこそ広告を破って切って額に入れて飾るっていうのでもいいんですよ。

石:ええ?広告ですか。先生、この部屋で広告って説得力ないですよ。
假:ですから、新聞に毎日広告が入ってきますでしょ? あれを1枚ずつ見て、「あ、これきれいだわ」っていったら切って、額に入れて飾る、それでもいいんですよ。私はそうやって暮らしていますけど。…すいません、私、変なこと言って(赤くなる)。
石:そうか、広告でもなんでも、美しいもので飾るというのが大事なんですね。それじゃ次いきますね。
(4枚目、寝室の写真。白が基調になった豪華なベッドにサイドテーブル、その隣には背の高い花瓶に花が生けられている)
場内大爆笑、石井しばし絶句…
石:先生、これは…、クレオパトラかなんかが寝ているような…
假:いや、ただの家具売り場でございますよ。
石:家具売り場でもこういうレイアウトはしないと思います。先生、あのベッドサイドのサイドテーブル、すごいですよね。
假:あのうえに目覚まし時計が5つものっているの(笑)。
石:低血圧ですか。
假:全然起きられないんです。
石:なんか白い手袋はめて開けなきゃいけないような。
假:そんなことないですよ。寝ながらぴゅっと開けます。あの中に耳かきが入っているんですよ。
石:耳かき入れですか、あれは。
假:芸術論を話さなきゃいけないんでしょう。大丈夫かしら?
石:だんだん話したくなくなってきました。(客、笑い)
假:あのベッドはイタリアなんですよ。うちの(家具)はほとんどアンティークなんですけど、ベッドだけはアンティークやだったんで、発注したんですよ。それで3ヶ月ぐらいで来たんですけど。ほら、石井さんイタリア大好きだから。
石:でもこのイタリアじゃないんですよ(客、爆笑)。申し訳ないんですけど。
假:でもイタリアこういうのいっぱいありましたでしょう?
石:ありましたありました。昔の建築というのはすごいですよね。だから、おうちというのも作りたくなるでしょう。
假:なりますよ。自分でデザインしたりとかね。際限がないですよねぇ。
石:だから全てのものが建築に通じる。だから、心と建築というのが密接につながってると思うんですよね。だから、これから建築の美学っていうものが必要とされてくるんだと思うんですけどね、日本では。
假:ここなんてすてきですよね。バカラのシャンデリアが煌々として、すばらしいですよね。クリスマスにここにいらしたことあります?
石:ありますあります。でもそんなのありましたっけ?
假:バカラさんのね、ロシア皇帝…
石:もうキスしてるカップルばっかり見てました。「お、やってるやってる」ってそればっかりですから、下世話なんで。あの時期、すごいですよ。こう男の人がね、口は笑ってるんですけど目は笑ってないんですよ。これからやるぞ、ってね。こうしゃっちょこばって歩いてるのばっかり。……でもあの、このへん雰囲気いいですよね。(客、笑い)
假:日本っていうのは、古いっていうのを悪いって思ってるんですよね。それが私、悔しいんですよ
石:それはしょうがない面もあるんですよ。戦後すぐに建てられた家は、木材がなくてあまりいい普請ができなかったんですよ、日本人たちは。だから、それを建て替えなきゃならないって発想になっていったんだと思うんですけどね。でも、それ以前に建てられたものはすごいですよ。
假:そうですよ、何百年も保つ。そういう技というか匠の力、を受け継いでいかなきゃいけないんだと思うんですけどね。
石:俺んちはたいした家じゃなかったんですけど、おふくろが、大事なお客さんが来るときに、二階の掛け軸の下に花を生けるんですよ。そうすると子供心に「今日はいつもの日とは違うんだ」って思いましたね。そういう生きた花を生ける、というのは神聖な行為だと思いますね。
假:その方もよろこんでくださる、なおかつ自分もお客様を迎えるという気持ちになれますしね。緊張感がただよってきますからね。

「書」の話から、石井の心境へと、つづく。。。


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