![]() |
渋谷 Bunkamuraオーチャードホール、ふだん来ない会場。
エントランスを入ると、クロークもあって、この季節、冬のコートを席にかけながら、鑑賞なんて、無粋なことはしなくてもいい、大人の空間。
コートの下には、みな、 ちょっとよそ行きのお召し物。
ホールに入ると、目に入ってきた、オーケストラの舞台。
舞台の後方、左右には音符に羽のはえたオブジェが、向かい合って、セッテイングされている。
いつもと違う落ち着いた雰囲気に、なんだか、緊張してきた。
自分の席に向かう。そう今日は、大幸運にも1列目のドまんなか。席に座ってみると、目のまえに、 石井竜也のマイク・譜面台がある。
あまりの近さに、鼓動が一気に高まって、収まらない。鳥肌がたって収まらない。 こんな感覚ははじめてだよ。
ステージを見わたしてみると、舞台向かって右手に、渦巻きのいつもの椅子が二客とテーブル、その上の花。
今日のゲストは、雅楽の東儀秀樹さんだけど、トークでもあるのかしら?
一列目の他のみなさんも、あまりの近さに歓声や喜悦のため息を付いている。
けど、なんだか自分、息をするのも、忘れそうなくらい、緊張。はやく始まって・・・・
『NOSTALGIE』の演奏が終わり、すかさず響く拍手の音。一瞬の静けさのあと、流れる『手紙』のイントロ。
再び湧き上がる拍手の中、舞台の左側袖から、石井竜也が登場した。目の前。すぐそこに彼がいる。
両手を胸のすぐ下あたりで、両手の指をギュと重ね合わせて、うす茶のサングラスのしたに見える目も伏目勝ちなその姿は、
なにかの祈りのように、歌い上げていく。
歌い終わるとその姿のまま、こんどはピアノがゆっくり、 静かに語り始める。つぎの曲『ひだまり』。
間奏の二胡にまたもや、聞き入ってしまう。
今日の石井竜也の衣装は、やはり伝説ライブでも着ていた黒のロングジャケット。
『手紙』と同じく、 伏目がちに、訥々とうたっていく。
ものすごい緊張が伝わってくる。こんな石井竜也の表情は、はじめて見た。
![]() |
「今、聞いてもらった曲は、僕が最初に撮った映画『河童』より『LEGEND』・・・」
あれ?『NOSTALGIE』でしょ、 曲名間違えてる。それに気づかない位、緊張してるのかな?
「『手紙』『ひだまり』と3曲聞いていただきました。 ここで、二胡のチェン・ミンは、ちょっとお休みです。」拍手で送り出す。
「続いては二本目に撮った映画『ACRI』より・・・『LEGEND』という曲なんですけど」
さっき間違えたの、 気づいたかな?
「あと、その時に作った『水の星』そして10月のマキシシングルから『believe me』、海に関する 3曲続けて聞いてください」
流れ出す、寄せて返す波音。重なり合うオーケストラのメロディ。インストゥルメンタルの『LEGEND』という事で、
引っ込んで着替えかと思いきや、舞台左手の椅子に座り、石井竜也も一緒に聞く趣向。
椅子に座りながら、体をオーケストラのメロディに漂わせている。緊張からときほぐされたいかのように、 目を閉じ、メロディに漂い、
気持ちを高めていっているように見える。
イルカの鳴き声がかすかに交じり始まる『水の星』。バックのブルーが海の底にいるような気持ちに。
そして、また波音がすると、こんどは『believe me』へ。照明もオレンジへ変わる。
CDでは、エフェクトが かかった冒頭の英語の部分だけど、きょうは勿論、エフェクト無し。イイ。
でも、英語を間違えまいと、 ななめ前にある譜面台をちらちら確認してるのは、見逃しませんよ。
冒頭の気迫をつきつけられるような3曲から、この”海”コーナーで、心もち和らいだ気がする、そんなコーナーです。
![]() |
『古都』は「ZERO CITY-AQI」サウス・ハルオの演説で聴衆に見放されるシーンでかかっていた曲。
ピアノのもの悲しい音から始まる。こうして純粋にひとつの曲として聞くと、あらためて良さを実感。
東儀さんの篳篥(しちりき)が重なっていく。「ZERO CITY」は無国籍な街だったけど、篳篥(しちりき)の音色が アジアらしさを強調。
石井竜也は、『LEGEND』の時と同様、椅子に座って、一緒に楽しんでいる。
こんどは、『LEGEND』のときの目をつぶり、波にのろうとしている姿とは異なり、東儀さんの演奏する姿を嬉しそうに見つめている。
『古都』の演奏が終わると、もの凄く、嬉しそうな笑みが、この日はじめて、石井竜也からこぼれた。
そして、『言の葉』へ。テレビのミュージック・フエアでも、披露された、 石井竜也と東儀秀樹のコラボレーションが、ここに再演。
バックの照明で浮かぶは、当然あかね雲。 夕焼け空に浮かぶまだらな白い雲。
『春雷』も懐かしい一曲。 バイオリンの弦を指でつまみはじいて、 太鼓的な音を出しているのが、面白かった。
和ムードの3曲が続き、ステージも客席もすっかり和んだ。
「篳篥(しちりき)、いい音ですよね。ここで、東儀さんとのトークのコーナーにいって見たいと思います。」
ということで、ステージ右手に作られていた、椅子二客とテーブルのほうへ。
二人座ると、意外とふたりの距離が近かって、ひざ寄せ合うような感じ。なんか、照れくさそうな二人は無言。
その姿に客席は笑い。口火を切ったのは石井さん「いいツーショットですね(照れ照れ)」。
両足を閉じて座る東儀さんに対し、ガバッと足を開いた石井竜也。
ボソと「そんなに足を開いて座らないと いけないんでしょうか?」という東儀さん。 これには、会場爆笑。
「育ちが悪くって(笑)。今、宮中の話題と しては”愛子”さまですか?」むりやりですね(笑)
(この後のトークは”トークレポート”で、どうぞ)
![]() |
東儀さんの雅楽が身近に感じる楽しい話の後は、東儀秀樹の楽曲『NEW ASIA(ニューエイジア)』。
この曲では、トークコーナーの椅子に座り、石井竜也も鑑賞。アジアの大陸、スケールの大きさを思い起こさせるような曲。
東儀さん曰く「アジアの持っている繊細さ・やさしさを表現したかった曲」だそう。
ゲストコーナーはここで終了。「心が洗われますね」と石井トークが続いていると、いつのまにか風切りの音が湧き上がっている。
「さて、風が吹いてきました(笑)聞いてください、あの曲を・・・」(観客笑い)
そして始まる『浪漫飛行』。過去にはアコーステック・バージョンもあった曲だけど、
オーケストラのアレンジが、前半とっても軽やかな感じ、後半は重厚で新鮮。
両手を胸元において歌いながら、なぜか薬指にはめたリングをもう片方の手でクルクル回しながら、うたってるのが可愛い。
「さて、ここから後半戦です」ということで、再び、二胡のチェン・ミンさんを呼び込み。
「次の曲ですが、10月に『遠くへ』というマキシシングルを出したんですが、その中に入っている曲・・で・は・・・・ありません」
(客爆笑)『LEGEND』言い張りに続くミステイク、まだ、緊張は続いていたようです(笑)
「来年、来年(強調)出るマキシシングルです!思い入れたっぷりのイイ曲なんです」もうフォローは無駄です(笑)
「1/17に出るマキシシングルなんですが・・・・なんだっけ?・・・『あなたに』ね、聞いてください『アイシュウ』」
『アイシュウ』やっと聞けました。「ZERO CITY-HAL」「ZERO CITY-AQI」の大ラス、大坂でしかやらなかった幻の曲。
『アイシュウ』はなんだか、民族音楽のような始まりから始まる、大陸的なアレンジの曲。二胡のアレンジもきいて、
中国の大河に浮かび、風に吹かれる舟と恋人達、そんなシーンが脳裏に浮かびました。赤から紫にグラデーションする照明が、
夜その前のたそがれ時のよう。そうそう、この曲から、サングラスを外した石井竜也にもウットリ。
そして、叔父さんに向けて作った曲『遠くへ』へ。歌いだしの前に、大きく深呼吸してから、一歩前でて、歌いだす石井竜也。
歌いだす時に、また、指輪を一瞬、触っていた。おまもり代わりなのでしょうか?
バックがオーケストラ、 ごまかしの利かないシンプルな曲、叔父さんへの思い、いろいろな思いが詰まった入魂の一曲でした。
本編最後は「米米解散してから、自分のためだけに作れた曲です」ということで、最後の曲『想い』へ。
![]() |
本当に最後の曲は『あなたに』。万雷の拍手のなか、座るようにジェスチャーした石井竜也。そのまま静かに始まるバラード。
この晩を象徴する至高の時間。鳴り止まぬ拍手のなか、石井竜也・オーケストラの競演「D−DREAM」は終了していきました。
石井竜也の楽曲を純粋に楽しめる、上質のコンサートとして、是非、次もやってほしいと思います。