仙台のときと同じく、雑踏の音から始まった。今回新たに聞き取ったのは、交差点に設置された盲人用の誘導音「夕焼け子焼け」の♪おててつないで皆かえろ、の部分と、「手まり歌」♪後ろの正面だぁれのところ。そして、コンビニの女店員らしき声で「528円のお返しです。ありがとうございまぁす」というもの。その後道路工事を横目に歩き、ビルの中に入り、鍵を開け、LIFE
MAGICへと続く。
ピッコロの音に導かれてイットマンを抱えて登場した石井は、仙台とちがい白のロングコートを着用している。【青い朝】、【予感】、【KISS】の3曲を歌い終え、最初のMCへ。
ソルトレイクオリンピック、閉幕まであと3日になりました。でも僕はまだ『金』の望みは捨てていません。数秒あれば金とれるんですから。
銀メダルの清水さん、すごいですね。他の人とは違う。体格が違います。だってこんなちっちゃい(手をかざす)んだから(客、笑い)。
それにしても世界の壁は厚いですね。…銅メダルのあの人…えっとなんだっけ(里谷多英選手)?…(客:モーグル)そうそう、モーグルモーグル。すごいですよねあんなタッタッタッタ素早く動くなんて。運動神経が違います、って当たり前か(後ろに向かって)。
正直言って僕もうあきらめかけてるんですよ(客、笑い)。Tubeの前田が解説やってるのを見てから、なんか違うなと思ったんですよ。俺なんかスポーツとか全然関係ないと思われてるから、そういう話は全く来ないんですよ。俺が水泳の解説とかしたら、違う方向にばっかりいったりして。「あの水着がいいですねぇ」とか(客、笑い)。
はぁ汗かいちゃった。3曲しかやってないのにすごい汗かいちゃって。楽屋にいたときから汗かいてて。…今日はあったかいですよね。あがってんのかな? あがってないと思いこもうとしてるんですよ。長いことやってるんですけどねぇ。いつまでたっても…。
さ、えー、(客、笑い)こういうくだらない話はおいといて。
3月27日に『浪漫』っていうアルバムが出るんです。浪漫っていいでしょ?今時こんなクサイタイトルつけるの、俺ぐらいしかいないよね。その浪漫のアレンジを、今回金子くんが全編やってくれたんですけども(客、拍手)、いいアルバムなんですよ。ほんとに。で、その中に入っているキスという曲が3曲目だったんですね。1曲目が『青い朝』2曲目が『シナリオ』で、3曲目が新曲の『KISS』です。
石井のコンサートが初めてだっていう人なんかは、「全部知らねーよ」とか思うでしょうけど、そんないじわる言わないで、1曲目が青い朝って言ったら「ふーん(うなずく)」ってやってくれるとうれしいな(かわいく)。
今日は変わった客が多いんでいいですよ。一番前の席も空いてますし(客:えー?)。ぽっかり空いてるんですよ。(実は撮影クルーのための席だった)
そんなこんなでソルトレイク。そのあとくるのはワールドカップですよ。あれは監督と中田くんが、うまくコラボレーションできなさそうですよね。そうするとだめか(客、笑い)。
あの熱狂している、新宿アルタ前かどっかでわー!そこだ、行けー!ってやって、でも負けちゃうんです。負けるといやですねぇ。ついさっきまで自分がわー!ってやってたのに。負けちゃうと隣の人と目を合わせられない感じですよね。急にしゅんとしちゃって。…だから行かない方がいいですよ。
長野で、なんであれだけ金メダルがとれたかというと、主催国が有利なように裁定をするらしいですね。
ジャンプもねぇ、日の丸飛行隊とか言われて、ねぇ。カミカァゼ、(小さく)ハラキィリ、(後ろを向く)
ジャンプっていうのは、最初は刑罰だったんですってね。人殺したり物取ったりした人に刑罰のためにやらせたんだって(客:えー?)。(マイクはずして半ば立ち上がる)ほんとだって! ほんとほんと。(客、信じてない)ほんとーだ!…っていうとよけい信じてくれないんだよね。(下手向いて)あ、あの、奥さん!(客、笑い)。…あぁ、いいよいいよ(ふてくされ&苦笑)。ほんとに見せしめのためにジャンプさせたんだってば。(客、まだ信じてない)
あとカーリングね。あれは漬け物かなんかしてて、「ぬかみそが冷たいな」とか言ってたら、漬け物石がつーっと滑って、そこから始まったんじゃないですかね。あの擦ってる人たち、トイレ掃除をさせたらうまいでしょうね(客、笑い)。あれだったら俺もできそうかな?とか思うんですけど。
でも、自分の漬け物石(客、笑い)、漬け物石でいいじゃないですか。ここだけなんだから。その自分たちの漬け物石の前を擦るんですけど、相手のを動かしちゃうと失格になっちゃうんだそうですね。自分たちのを見ながら、回りも見ながらって、俺にはできねーな。
あとスケルトン、あれもすごいですね。あのスケルトンに出た選手(越選手)っていうのが、40歳か39歳かなんですよ。それもあのスケルトンで使う、なんて言うんですか?こう乗る、あのそりも年齢もいってるし、選手もいないしで売ってくんなかったんですってね。それをなんとか調達してオリンピックに出たという。40歳でオリンピックに出るってすごいですよね。人は年齢じゃないな、って思いますよ。でも60歳じゃ出られないと思いますけどね。
それとノルディック、あのずーっといくヤツ、あれなんて言うんですかね?(客:クロスカントリー)、クロスカントリーっていうんですか、あれ。(客に)あなたはえらい。明日の日本をしょって立つ人になりますよ。…あれもわからない。あれ、どこが楽しいんでしょうね。だって野原を何キロも走るんでしょ?
どうやって見るんでしょうかね。あれは観客の方が過酷なんじゃないでしょうかね。野原の真ん中で体寄せ合って「まだこねーよ」とか言ってたりして。
…さて。次のコーナー(吹き出す)。俺が「さて」って言ったら、次のコーナーか、じゃなきゃ話題がなくなったかどっちかですから。次の曲いこうか。
次の曲は『アイシュウ』といって、僕の出した『遠くへ…』というマキシシングルの2曲目に入っているんですが(客:え?)。…あ、まちがいましたね。よかったですよ気づいてくれて。気づくってことは仲間ってことですからね。…今年の1月に出した『あなたへ(正確には、あなたに)』というCDに入っている曲です。日本的な感じでいい歌なんですよ。
それから『予感』、これはアートヌードで歌ってたんですけど、ファンの人から「いい曲だから歌ってください」というのをいっぱいいただきまして、金子くんにアレンジし直してもらって入れてみようかな?ということで今度のアルバムに入れたんですけど。
それと(後ろを見る)『透明』という曲、いいんですよ。この曲はね、いいな!
こないだ俺、実家に帰って、茨城県のはずれのほうなんですけど。田舎もんとか言わないでくださいよ。そんで港町なんですよ。ちっちゃい港町(照れ笑い)なんですけどね。
そんで堤防のところとか歩いてると、釣りやってる人がいるんですよ。おっちゃんなんですけど。んで「ふぐがつれた」とか思って、ふっ、て顔みると、中学校時代の友達なんですよ(客、笑い)。「おー石井じゃねぇか」って。俺、そいつにいじめられたんですよ。それがそのまんま続くんですよ。その関係性が変わんないんですよ。
「けんちゃん、いっぱいふぐ釣れたねぇ」なんて、なんで俺がおべっかつかわなきゃいけないんだ(客、笑い)。なんですかね、あれは。成功してるとかしてないとか、稼いでるとか稼いでないとか、そんなことは全く関係ないんですよ。小さいときの関係性がそのままでてくるんですよねぇ。…くやしかったなぁ。うちに帰っておふくろの胸で泣きましたけど(客、笑い)。
俺、ほんとにそいつにいじめられたんですよ。50円とか頭に投げつけてくるんですよ(投げるフリ)。「(気弱そうに)なにするんですか」つったら「牛乳買ってこいよ!」とか。すごい強かったんですよそいつ。番長やってて。けんかばっかりしてて、出張してけんかしてくるようなやつだったんですよ。誰も来てくれって言ってないのに(客、笑い)。
でも、助けられたこともあったりしましたね。高校時代、悪そうな奴らに囲まれたときに「おぅ!」って来て連れ出してくれたりしてね。翌日、そいつ顔ぼこぼこでした(客、笑い)。
『透明』というのはそんな子供時代を歌った歌です(客、笑い)。そういうのって残るから、ぶんなぐっちゃだめですよ、おかあさん(客、笑い)。そんな、いいお母さんたちに(客、笑い)……。
すいません皆さん、今日はおれ、やる気ないんですよ(客、爆笑)。…ごめんね。(ウケねらいで)正直に言ってみました(客、笑い)。
こんなことばっかり言っているとイメージが崩れてくるんですよ。……(かっこつけて)そんなに見つめるなよ。(ふきだす)えーソルトレイクオリンピック(客、爆笑)…(後ろを向いてバンドに向かって)やるぞ!(自分に気合いを入れている?)
おとうさん、そこで笑ってないで。だんだん(曲の感じに)なってゆくもんだから、ね。……だいたい何日もやってるんだから、こういう日もあるんだよ。人間なんだから。
やる気があるフリして、あいつらなんて。ほんとだぞ! 作り笑いして! おれは正直にいくから。やる気なし!!(身をよじって笑う客たち>含、自分)(にやっとしてバンドを振り返る)……こういうMCをすると次のアイシュウにいきづらいんですよ。なんかしーんとした話をしないと。誰かが死んだ話とか…(客の笑いは治まらない)…今の日本もいろいろありますよね…宗男ハウスとか(と言いつつ坂田利夫あるきの手つきをする、客、爆笑)。曲、いきましょう。『アイシュウ』
ライトが落ちイントロが始まるが落ちつかなげな様子、ついには横を向いて大きく吹き出してしまう石井(マイクをはずしても声が聞こえた)。長い前奏中に気持ちを立て直し、無事歌いきった。
『アイシュウ』『予感』『透明』と3曲歌って開口一番。
『透明』という曲は、番長が釣りをしていた歌です(客、笑い)。今回の『浪漫』というアルバムに入っています。
米米CLUBを解散して5年たつんですけど。最初の頃は「元米米CLUBの」って言われるのがイヤでね。でも考えてみたら、自分は米米CLUBがバックボーンになっているんですよね。で、ようやく3年ぐらい前から「元米米CLUBでいいんだ」っと思えるようになって。そうしたらいろんなことが自由にできるようになりましたね。それまではきっとどっか納得してなかったんでしょうね、納得してやっと一人になれる。5年という年月を感じますね。こんなの見てると(イットマンを指す、イットマンにあたるスポット)ねぇ。
今回のアルバムも、最初は「ラッパ入れてコーラス50人ぐらい入れてがんがんやろう」みたいなことを言ってたんです。そうしたら金子くんがじーっとそれ聞いてて「てっぺいちゃん、なんかボーカリストとしての姿勢を見せた方がいいんじゃないか」って言われたんですよね。
僕はもともと米米CLUBが先にあって、それが自分のイメージだと思っていたし、エンターテインメントを見せるんだってつもりでいたから(そう言われたのは)意外でした。それで「自分の正直な気持ちを語りかけるみたいに歌ってみなよ」って。たぶんみんなそう思っていたんだよねきっと。
最初「いいのかな。こんなのを求めてるのかな?俺に」って思いながら。でもスタジオで歌ってみて初めて「歌ってこういうもんなんだ」って思いましたね。今回のレコーディングは本当に勉強になりました。歌を詩の朗読のように伝えるのは一番たいへんだけど、やりがいのあることだと思いましたね。
さて、皆様、次の曲は【Eことあるサ】といいまして、米米CLUBの中で一番売れた『Octave』という、900万?600万?300万?…70万枚ぐらいですか?…売れたアルバムに入っている曲で、米米ではほとんどやってない、コンサートではね。…という曲です。それと後1曲……あと2曲でおわりなんですよ。(客、え〜?!)いい人たちですねぇ。お金払ってあげたくなるぐらいですよ。笑っていいともとかに出るといいですね。(客、笑い)
あと1曲は【ON MY OWN】といいまして、ひとりぼっちとかたった一人とかいう意味なんですけど、いろいろ行き詰まったりしたときに、一人になることって大切だと思うんですね。一人になると自分が見えてくるんですね。そういうのを歌った曲です。
【Eことあるサ】はオリジナルよりより軽く、おとなっぽく、リズミカル。なにより本人の歌い方がりきんでないのがききやすい。【ON MY OWN】はまさに熱唱。サビでマイクを掴んだ手に力がこもり、高音部では半ば立ち上がるようにして歌っていた。