リプリー  ★★★

【1999年 : アメリカ】
 監督:アンソニー・ミンゲラ/音楽:ガブリエル・ヤーレ
 出演:マット・デイモン(トム・リプリー)、
    グウィネス・パルトロウ(マージ)、
    ジュード・ロウ(ディッキー)、
    ジェームズ・レブホーン(ハーバート・グリーンリーフ)、
    ケイト・ブランシェット(メレディス)、
    ジャック・ダヴェンポート(ピーター)  他

富豪の息子になりすまし、人生を塗り替えようとした貧乏青年の姿を描くサスペンス。原作はパトリシア・ハイスミスの小説『リプリー』で、1960年ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」に次ぐ2度目の映画化。
1958年のニューヨーク。貧乏青年のトム・リプリー(マット・デイモン)は、日銭稼ぎのピアノ伴奏のために赴いたガーデンパーティで造船業界の大物ハーバート・グリーンリーフ(ジェームズ・レブホーン)と知り合い、イタリアで放蕩生活を送る息子ディッキー(ジュード・ロウ)を連れ戻してほしいと頼まれた。
金銭的な好条件も提示され、早速ナポリへ飛んだトム。実際に会ってみると、ディッキーは作家の卵のマージ(グウィネス・パルトロウ)と豪奢な同棲生活を送っていた。彼は父からの命令を聞いて迷惑がるが、トムがジャズ・ファンと知るや彼を気に入り、優雅な遊びへとあちこち連れ回す。地位も金も恋人も、輝くばかりの美貌も手にしているディッキーはトムにとってこの上ない憧れであり、やがて愛情の対象にもなっていった。
だが気まぐれなディッキーにとってのトムは、しょせん物珍しいだけの客人。垢抜けない田舎の青年トムにディッキーが冷たい溝を敷いた時、トムの心にもまた暗い影が宿り始める・・・。

これねー・・・コメント難しいんですー・・・。もう一度ちゃんと見たら書けるかもしれないんですが、見るかどうかがまずわからない。
相変わらず男をたぶらかす役がうまいジュード・ロウ。こういう時の彼はナゼいつもこんなにキラキラしてんのかな?んん、おねえさんに教えてごらん?
一方どこまでも愚鈍でダサいトム役のマット・デイモン。このトムは実は愚鈍などではまったくなく、素早さがない変わりにおそろしく周到な性格です。要領が悪い自覚はあるから、搦め手で確実に獲物を追い込んでしまえというタイプ。おっかないですね。そういう怖さが妙にはまっていたマットをうっかり嫌いになりそうでした。ていうか元々少し苦手なところをもっと嫌いになりそうだった。そういう意味ではトムの正体を唯一見破っているマージに同情しそうなもんですが、あの女もイマイチ好きになれないんだよな困ったことに。
果たしてこのトムという青年に同情の余地はあるのでしょうか。あると思う人にはあのラストシーンはせつないかも。ないと思う人にはテメエこのやろーな気分かも。私的にはどっちとも言えません。唯一の希望はピーターでした。気の毒だな。いいやつだったのに・・・。
ともかく好きな映画とは言い難い。出来がどうこうというよりは個人的に判断に迷う映画です。



 レインマン  ★★★★☆

【1988年 : アメリカ】
 監督:バリー・レヴィンソン/音楽:ハンス・ジマー
 出演:トム・クルーズ(チャーリー・バビット)、
    ダスティン・ホフマン(レイモンド)、
    ヴァレリア・ゴリノ(スザンナ)、
    ジェリー・モレン(ウォルター・ブルーナー)  他

今まで他人同然に生きてきた自閉症の兄と奔放な弟の、再会によって変化してゆくそれぞれの人生を描く。
26歳の中古車ディーラー、チャーリー・バビット(トム・クルーズ)は、幼い頃から憎み合った父が急逝し、その遺言書によって自分に遺されたものが車1台と薔薇の木だけという事実にショックを隠せない。
その一方で300万ドルの財産を与えられた匿名の受益者がいることを知った彼は、苛立つまま父の管財人である医師を訪ねた。受益者の正体を聞き出そうとするチャーリーだったが、医師はそれを明かそうとはしない。
諦めて帰ろうとするチャーリー。だが外へ出てみると、車の中にはレイモンド(ダスティン・ホフマン)という自閉症の男がおり、よくよく聞けばその男こそが件の受益者で、自分の兄でもあるらしいことを知る。
遺産を自分のものにするためレイモンドの面倒を見ることにしたチャーリーは、出会ったばかりの兄をホームから連れ出し、半ば浚うようにしてロスヘ旅することに。
扱いのわからないレイモンドと進む道のりはハプニングと苛立ちの連続で、チャーリーは予想以上の困難に四苦八苦する。だがそれは、幼い頃の優しい思い出を甦らせる旅でもあったのだった・・・。

むかーし初めて見た時から大好きな映画です。アクションやサスペンス作品に出ることが多いトム・クルーズが、めずらしいくらい直球のヒューマンドラマやってますね。とんでもなく若いし。(笑)
それから、なんといっても職人芸のような抜群の演技力を披露しているダスティン・ホフマン。本職の精神科医が彼の演技を見て、アレほんとに演技?と心配したという逸話付きです。
いつも自分本位で他人のことは信用できない淋しい青年チャーリーが、レイモンドと格闘しながら少しずつわだかまりを溶かしていく様子があたたかく沁みてきます。けれども、心の病を抱えている兄の世話をすることは実際にはとても大変で、血のつながりや愛情だけでは解決しないこともたくさんある。そのへんのやるせない現実を、誤魔化さず正直に描いています。
普通の家族のようなやりとりはできないけれども、チャーリーにとってレイモンドという存在を取り戻したことは何にも勝る財産になったことでしょう。それこそが亡き父に貰った一番のものかもしれません。
チャーリーの恋人、スザンナは常識と優しさに溢れた賢い女性です。人との絆の大切さを知ったチャーリーは、彼女や友人のことをこれからもっと大切にしていくはず。ちょっとさみしいラストシーンも、そう思えば希望に満ちたものに見えてきます。



 レザボア・ドッグス  ★★★★

【1991年 : アメリカ】
 監督:クエンティン・タランティーノ
 出演:ハーヴェイ・カイテル(Mr.ホワイト/ラリー)、
    ティム・ロス(Mr.オレンジ/フレディ)、
    スティーヴ・ブシェーミ(Mr.ピンク)、
    クリストファー・ペン(ナイスガイ/エディ)、
    マイケル・マドセン(Mr.ブロンド/ヴィック)、
    クエンティン・タランティーノ(Mr.ブラウン)
    エディ・バンカー(Mr.ブルー)  他

宝石強盗に失敗し、やがて破滅していく犯罪グループの姿を描くバイオレンス・アクション。
瀕死の男を後部座席に乗せ、一台の車が郊外を疾走している。黒いスーツを血に染め泣き言まみれになっている男の名はM.rオレンジ(ティム・ロス)。彼を必死に励ましながらハンドルを握る男はMr.ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)と呼ばれ、共にある宝石強盗を計画した仲間であった。
遡ること数日前。ロサンゼルスの犯罪のプロ、ジョー・カボット(ローレンス・ティアニー)が持ち込んだ今度のヤマは、ダイヤモンド専門の卸売り業者に押し入るというもので、集められたのは彼の息子ナイスガイ・エディ(クリストファー・ペン)を筆頭に、用心のためコードネームで呼ばれる6人の犯罪のプロたちだった。
だが周到に練られたはずの彼らの計画は、襲撃現場に警官が待ち伏せていたため失敗に終る。
情報を漏らした裏切り者は果たして誰なのか。わずかな友情と渦巻く疑惑の中、犯人を追求する男たちの混乱はますます深まっていく・・・。

「パルプ・フィクション」「キル・ビル」でおなじみ、タラちゃん映画の出発点。 監督、脚本、出演をこなしておられます。それにしてもあれだなあ、そこはかとなくホモくさい映画だなァこれ・・・。(笑)
まあ友情といえば友情かもしれないけど、台詞がいちいちそれっぽいんだよ。特に吹き替え版。
そのくせやけにカッコイイんです。出てくるのはオッチャンばっかりなのに。あのオープニングのかっこよさはなんなんだ全く。タラちゃんてば音楽の使い方のセンスはこの頃からピカイチです。ちぇっ。
今でこそこういうタイプのクライム・ムービーは色々ありますが、10年前にこんなの出てきたらさぞや新鮮だったかと思います。最近映画界に進出してきたばかりの若手映画監督たちにとって、タランティーノ作品はひとつのブランドとさえ呼べる感じなんでしょうね。ドイツのタランティーノだの、第二のタランティーノだのと呼ばれてる人がどれだけいることやら。
結構バイオレンスばりばりなんで、血と暴力がダメな方にはかなり痛いかと思いますが、現代のスタイリッシュ・アクション映画と呼ばれてるものの原型は確かにここにあるなあと感心したことでした。



 恋愛小説家  ★★★☆

【1997年 : アメリカ】
 監督:クエンティン・タランティーノ
 出演:ジャック・ニコルソン(メルビン)、
    ヘレン・ハント(キャロル)、
    グレッグ・キニア(サイモン)、
    キューバ・グッディング・Jr(フランク)  他

偏屈で口の悪いひねくれ者のベストセラー作家が、隣人との交流やバツイチで子持ちのウェイトレスとの不器用な恋を通して人並みの愛を知るまでをユーモラスに描くラブコメディ。
マンハッタン。メルヴィン・ユドール(ジャック・ニコルソン)は甘く切ない女心を描くことで知られた人気恋愛小説家だが、実生活の彼は中年を過ぎていまだ独身、潔癖症で毒舌家で異常なほど神経質というかなりの嫌われ者だった。そんな彼がある日、行きつけのレストランでウェイトレスをするキャロル(ヘレン・ハント)に淡い恋心を抱くのだが・・・。

いやもう犬!犬が!前足の間に顔をうずめて、ムムと様子を窺ってるあの上目遣いがさ!(悶)
動物をこんなにうまく使ってる映画を久しぶりに見たぞ。ああ、犬たまらん。
恋愛映画として、またヒューマンドラマとしてもとてもよく練られた作品だと思います。
潔癖性で最悪の毒舌家メルビンは、目の前の相手をことごとく貶して歩く変人の恋愛小説家。しかし優しい気持ちがないわけでもなく、ただそれを伝える術がまったくわからない男です。時に彼の皮肉は相手を励ます目的で放たれるのに、相手はますます怒ってしまう。怒られると即座にビビるのがメルビンの口だけぶりをよく表していると思いますが、本人としては、相手がなぜそんなに怒るのかが本当にわからないのです。
そんな彼が少しずつ変わるきっかけになったのが、近所の画家が飼っている小型犬と、行きつけの店のウェイトレス。それから、その犬の飼い主のゲイの画家です。
メルビンの変人ぶりにうんざりしつつも、やがて彼の内面を知って少しずつ心を許していくウェイトレスにヘレン・ハント。同じく、メルビンの毒舌に心底嫌気がさしつつも、なんとなく縁が続いていく画家にグレッグ・キニア。そしてそして、このどうしようもない嫌われ者で、そのくせなんだか憎めないおかしな小説家に怪優として名高いジャック・ニコルソン。配役はばっちりでした。ほんとうに彼らでよかった。アカデミーで男優・女優賞をダブル受賞したのも納得です。グレッグ・キニアも助演でノミネートされてましたしね。
実はジャック・ニコルソンはジョン・トラボルタの代役だったという話もあるようですが、この役はやっぱりジャック・ニコルソンでないとダメです。と私は思う。
ストーリーだけ読むと、厄介な中年小説家が恋をして人が変わった、というありきたりなハッピーエンドを想像するかもしれませんが、この作品の面白いところは、変人メルビンの変人さは結局ずっとそのままだということです。ほんの少し、人との関わり方を知っただけ。相手が怒る理由を、ほんの少し理解できるようになっただけ。でもその「ほんの少し」というスパイスがこの話の面白みであり、暖かみでもあるのだと思います。ほんわかと素敵で、ちょっと笑える小粋なラストも秀逸。



 ロック, ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ  ★★★★

【1998年 : イギリス】
 監督:ガイ・リッチー/音楽:デイヴイッド・ヒューズ
 出演:ニック・モーラン(エディ)、
    ジェイソン・フレミング(トム)、
    デクスター・フレッチャー(ソープ)、
    ジェイソン・ステイサム(ベーコン)  他

カード賭博で借金を抱えて一獲千金を狙う4人組の若者と、たくさんのギャングたちが入り組んで争奪戦を繰り広げる様を、巧妙でスピーディな展開で綴った犯罪アクション。
ロンドン、イーストエンド。ヤミ商売で小金を稼ぐチンピラ、エディ(ニック・モーラン)、トム(ジェイソン・フレミング)、ベーコン(ジェイソン・ステイサム)、ソープ(デクスター・フレッチャー)の4人組は、ポルノ王として町を牛耳るハチェット・ハリー(P・H・モリアーティ)相手にカード賭博で勝負を挑むが、ハリーの用心棒バリーの八百長にひっかかり、50万ポンドと巨額の借金をつくってしまう。ハリーはかつて張り合ったことのあるエディの父親JD(スティング)の酒場を、借金のカタに取り上げてしまおうという腹だったのだ。
返済期間はたった1週間と決められ窮した4人だが、エディの隣のフラットに住む麻薬の売人が上流階級の子弟仲間で営むマリファナ工場を襲う計画を話しているのを偶然盗み聞き、ブツを横どりすることに決める。
はたしてこの無謀な計画は成功するのか…?

なんせ出てくる人数がハンパじゃないので、顔を覚えるのに一苦労です。
でも覚えてしまえば入り組んだストーリーがすごくおもしろい。せっかく巻き上げた金を奪われて、奪ったヤツらが喜んでるところをまた別のヤツに取り上げられて、という右往左往がユニークでした。
「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」という長ったらしい題名は、元々は銃を装填する手順を並べた言葉からとったもので、「準備オッケーいつでも来い」という意味が転じて「なんでもあり」というような雰囲気を伝える文句らしいです。ナルホド、金と麻薬を巡って大騒ぎな男たちは何でもありといえばまったくそのとおり。もちろん銃も重要なアイテムとして出てきます。
主人公エディはカードの天才でありながら、いざ負けてしまうとかなりのダメダメくんです。そこがちょっとかわいいというか、仲間たちもそんな彼を捨ててトンズラしないのが微笑ましい。ジェイソン・フレミング演じるトムはみんなに「デブ!このデブ!」とさんざん言われてますけど、実際はちっとも太っていません。
そのくせ本人もすごく気にしてる。デブだった過去でもあるのか?
エディの父親役でちらっと顔を出しているのはスティング。ガイ・リッチーは元々ミュージックビデオやCM製作で活躍していた監督だけに、そのへんのつながりなのかしらとも思いますがどうなんでしょう。
繰り返すようですけども、まずは主役4人の顔を覚えることが必須かと。そうしますと、脇の敵対キャラの個性なんかも面白く見られますよ。最初の数十分は画面をじーっと見据えることをオススメします。



 ロック・ユー!  ★★★★

【2001年 : アメリカ】
 監督:ブライアン・ヘルゲランド/音楽:カーター・バーウェル
 出演:ヒース・レジャー(ウィリアム)、
    シャニン・ソサモン(ジョスリン)、
    ポール・ベタニー(チョーサー)、
    マーク・アディ(ローランド)、
    アラン・テュディック(ワット)、
    ローラ・フレイザー(ケイト)、
    ルーファス・スェール(アダマー)  他

中世ヨーロッパの若者たちが槍試合に挑む姿を、ロック・ミュージックをバックに描いた青春活劇。
14世紀。平民のウィリアム(ヒース・レジャー)は身分を偽り、騎士しか参加できない馬上槍試合の大会に仲間たちと共に参加を繰り返していた。そんなある日、街で見かけた貴婦人ジョスリン(シャニン・ソサモン)に一目惚れした彼は、競技と恋を巡り名手アダマー伯爵(ルーファス・シーウェル)と火花を散らす。しかしやがてアダマーは戦地に派遣されて欠場を続け、ウィリアムは優勝を重ねるものの心は満たされない。
アダマーがようやく復帰したのは、ウィリアムの故郷でもあるロンドンでの世界選手権。順調に勝ち進んだ二人は、いよいよ決勝で戦うことになるが・・・。

この映画のユニークな点は、舞台が中世ヨーロッパにもかかわらずバックに現代ロックがガンガン流れるところですかね。 競技場を取り囲む観衆が、騎士たちを迎えるために手や柵を叩きながら一斉にQUEENの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」を歌ったりして。それが不思議と違和感なくおさまってます。
主演のヒース・レジャーは自分に正直で熱血型の主人公がよくお似合いです。ライバルのアダマーは絵に描いたようなイヤーなやつ(笑)。良心がないわけでもないんですけど、微々たるもんでございますよ。
ヒロインも美人さんで、惚れられてるのをいいことにウィリアムに無茶苦茶な注文をつけたりする気の強さもなかなか面白いと思いますが、個人的にはケイトを演じていたローラ・フレイザーの方が好みです。
主人公を囲む個性ある仲間たちの中では、やはり何といっても文筆家のジェフリー・チョーサーに目が行って仕方ありません。なぜなら演じているのがポール・ベタニーだから。 全裸でフラフラ農道を歩いていく男の後ろ姿に、オォさすがに向こうはお尻も白いぜちょっとタレてるけど、とか思っていたら振り向いた顔がベタニーだった・・・。べつにそういうサービスショットだったわけではなく(当たり前)、賭博に負けて身ぐるみ剥がされた文筆家が、職業を活かして良き仲間になるという筋書きです。
チョーサーは「カンタベリー物語」を書いて名を残した実在の作家ですが、むろん本作でのキャラ付けは激フィクション。それだけにあのイカサマくさい存在感がたまりません。基本的には口ばかりが先に立つダメダメくんでありながら、荒れる民衆たちからみんなでウィリアムを守ろうとするシーンでは悔しさのあまりウッカリ涙ぐんだりしているのです。かわえー・・・。
などというベタニだらけのウザイ感想ですいません。作品自体は何も考えずに一気に楽しめる、シンプルで爽快な映画ですよ。見終わったら無性にQUEENとか聴きたくなりました。 とりあえずスカッと気晴らししたい方におすすめです。



 ロード・トゥ・ヘル  ★★★

【2002年 : アメリカ】(劇場未公開)
 監督:エドワード・バーンズ/音楽:デヴィッド・シャイア
 出演:エドワード・バーンズ、イライジャ・ウッド、
    ロザリオ・ドーソン、オリヴァー・プラット  他  

1980年代のニューヨークの街、ヘルズ・キッチンを舞台に、アイルランド系ギャングとプエルトリコ系ギャングの抗争を描いたバイオレンス・ムービー。

暗い話だった・・・。
イライジャ・ウッドの役柄には見てるこっちがハラハライライラしました。おめーのためを思って言ってるんだよ!ワガママぬかさねェで言うこときけよちっとはよ!と、何度毒を吐いたかわからない。
まったくもって気の毒なのは兄です。弟はかつての事件を兄のためにやったと言い張っていますが、なにぶんにも配慮の足りない子ですので、尻拭いは結局兄がする羽目に。あの街で生き残るための掟の非情を描きたかったのかもしれませんが、だからといってもの悲しい以外の何の印象も残りません。
ただひとつ、アイリッシュたちの静謐な街並みが本当に美しく、それをきちんと画面に収めた映像美は絵画のようでとても綺麗でした。



 ローマの休日  ★★★★

【1953年 : アメリカ】
 監督:ウィリアム・ワイラー/音楽:ジョルジュ・オーリック
 出演:オードリー・ヘップバーン(王女アン)、
    グレゴリー・ペック(ジョー・ブラドリー)、
    エディ・アルバート(アーヴィング)、
    テュリオ・カルミナティ(将軍)  他

ローマを舞台に某小国の王女と新聞記者との恋物語を描くラブストーリー。
ヨーロッパの各国を親善旅行中の小国の王女アン(オードリー・ヘプバーン)は、美しい街ローマを訪れたものの、たび重なる固苦しい日程にすっかり疲れ果てていた。侍医は王女に鎮静剤を飲ませたが、疲労の為に却って目が冴えて眠れない。そこでアンは侍従のいない隙を見計らい、こっそりと夜の街へ出かけてみることに。しかしその頃になって薬が効いてきて、とうとう広場のベンチで寝こんでしまう。
そこへ通りかかったアメリカの新聞記者ジョー・ブラドリー(グレゴリー・ペック)は、善意から彼女を助けおこし、自分のアパートへ連れ帰った。ところが翌朝の新聞を見てみると、どうやら彼女は失踪中の王女であるらしい。ジョーは目の前の偶然に驚きつつも、これこそ特ダネ記事をものにするチャンスとばかり、ローマ見物の案内役をひきうけるのだが・・・。

なんといっても オードリー・ヘップバーンが一番美しく撮られている作品です。もう、この可愛さをなんと表現したものやら・・・・。
当時から50年も経って、ハリウッドをはじめ世界中にはまったく掃いて捨てるほど美しい女優はいるというのに、いまだにこの頃のヘップバーンを越える魅力を持った女性は出てきていないと思うわけです。上品とか可憐とか清楚とか、彼女を讃える誉め言葉はいろいろあります。でも「ローマの休日」での彼女はその全部。全部まとめてドンなのですよ。魅力の種類というか、次元が違うのよね・・・。
物語のストーリーは主にローマ観光巡りであり、身分の相違によって道の交わらない恋の顛末という筋書きも考えてみりゃそう目を瞠るほどのものではございません。それでもやっぱり見終わった後どこか切ないような甘酸っぱい余韻が残るのは、やはり主役二人の魅力や、その魅力を最大限に引き出した演出の手腕によるところが大きいと思われます。
とりあえず、ヘップバーンがどれだけべらぼうに可愛かったかということを動画で確かめるための一品。



 ロマンスに部屋貸します  ★★★☆
【1993年 : アメリカ】
 監督:ウォーレン・レイト/音楽:エヴァン・ルーリ
 出演:マシュー・ブロデリック(サム・レスター)、
    アナベラ・シオラ(エレン・ホルダー)、
    ケヴィン・アンダーソン(ブライアン・マクベイ)  他


【現在VHS発売のみ】

貸しアパートで知り合った男女の恋の行方を綴ったロマンティック・コメディ。
グルメ・デリに勤めるサム・レスター(マシュー・ブロデリック)は、だらしないルームメイトたちに部屋を占領される生活にうんざりし、一人になれる空間を切望していた。そこで見つけたのが、1週間のうち二日だけ部屋を貸しますというアパートの広告。その部屋の持ち主は証券マンのブライアン・マクベイ(ケヴィン・アンダーソン)で、同棲を始めた婚約者のジャネット(ジャスティン・ベイトマン)に内緒の遊び場が欲しいために、独身時代のアパートを維持しようと苦肉の策を打ったのだった。
同じ頃、スポーツ観戦だけが趣味という無粋な夫アーロン(マイク・マンテル)との生活に疲れ、好きな絵を描いて過ごせる自分だけの居場所が欲しいと考えていた歯科衛生士のエレン・ホルダー(アナベラ・シオラ)が部屋の利用を申し出る。お互い顔も知らないまま、こうして1週間を曜日ごとに割り振って部屋を共有することになった3人。部屋を使った後の後始末や置き手紙からお互いの仄かな素性を垣間見つつ、自分だけの空間を満喫していたはずの彼らだったが・・・。

巧妙なニアミスや擦れ違いを繰り返す三人の様子が面白いです。特にマシュー・ブロデリックのコメディセンスはさりげないのに笑える。そもそも人の好い顔立ちだし、表情が可愛いんです。彼と言えば茶髪のお坊ちゃんというイメージだったので、栗色ヒゲモジャの顔を見たときはちょっとびっくりしましたけど、女の子に振られてばっかりのキャラは情けなくてやっぱり可愛かった。彼の演じる主人公サムは、ともかくおひとよしすぎてそのうえ女運が悪く、女絡みで酷い目にあってばっかりです。なのに相手を責めきれず、気が付くと相手の愚痴を聞きながら手料理を出してたりする。イイヤツだなあ。(笑)
アナベラ・シオラ演じるエレンは確かに旦那に恵まれてないんけど、だからって「ヨーシ浮気するぞー!」ってなっちゃうところがなんだかさァという気もしなくもない。で、勢い余って事態がさらにもつれると。
アメリカのラブコメってこういうタイプの女性よく出てきますね。実際にいるのか?こんな女・・・。
部屋の持ち主ブライアンは、悪いヤツではないです。自分の遊び方の流儀がちょっと奔放すぎるだけ。単に無神経とも言いますが。
ともかくマシュー・ブロデリックの軽妙さが楽しかった。小品だけど結構満足しました。



 ロングタイム・コンパニオン  ★★★☆

【1990年 : アメリカ】
 監督:ノーマン・ルネ/音楽:ゲレッグ・デベルス
 出演:キャンベル・スコット(ウィリー)、
    ブルース・デイヴィソン(デイヴィッド)、
    マーク・ラモス(ショーン)、
    スティーブン・キャフリー(ファジー)、
    ダーモット・マルロニー(ジョン)  他
    ※写真はVHSのものです。

エイズが発見された1981年から9年間の日々を、ある同性愛者たちの視点を通して描くヒューマンドラマ。

まだエイズという病気を誰も知らなかった頃、どうやって彼らの闘いの日々が始まったのかということを教えてくれる映画です。
あくまで原因不明のガンと呼ばれていたこの病気に対して、抵抗する術もなにもわからないまま大切な人が次々に倒れていく不安と恐怖。それはどれほどのものだったろうなあと思いますね。今でもこれだけの偏見や差別が残っているわけですから、社会的な立場だってとても厳しかったはずです。
この作品には立場や生き方の違う多くの男性が登場し、それぞれの運命を辿っていきます。命を落とす人、それを見送る人、病との闘いに敗れた人、なお立ち向かおうと決意する人。
9年という月日は短くありません。彼らはその日々の中で別れを繰り返し、また人としての優しさ、生きるということの現実を学んでいきます。そして気が付けば、残っているのは主人公とその恋人と友人。ふとこれまでを振り返る彼らの追憶の中、消えていった人々が一斉に集う浜辺のシーンはやりきれないほど悲しいです。
それでもロングタイム・コンパニオン(生涯の同伴者)を奪っていくこの病と、自分たちは闘っていかなきゃならないという彼らの決意が、静かに熱く語られる作品でした。



 ロンドン・ドッグス  ★★★☆

【1999年 : イギリス】
 監督:ドミニク・アンシアーノ、レイ・バーディス
 出演:ジュード・ロウ、ジョニー・リー・ミラー、
    リス・エヴァンス、サディ・フロスト、
    レイ・ウィンストン、ショーン・パートウィー  他

ギャングに憧れる若者が、念願のファミリー入りを果たすものの勢い余って破滅していくまでを描くクライム・ムービー。
郵便配達員のジョニー(ジョニー・リー・ミラー)が憧れるのは、 クールでヒップなギャングスター。とうとう憧れが高じ、ファミリーのボスを叔父に持つ親友のジュード(ジュード・ロウ)に頼み込んで ノース・ロンドンのギャングに仲間入りする。
郵便配達の仕事を活かし、 クレジットカードの強奪を計画。まんまと成功して顔役の信頼も得、 次第にギャングに染まっていくジョニー。しかしノース・ロンドンのギャングたちは、 派手なドンパチよりもカラオケが好きだった。本物のギャング・アクションを求めるジョニーは、とうとう敵対するサウス・ロンドン・ギャング団のコカインを盗み、 抗争の引き金を引いてしまう・・・。

みんなで仲良くマイクを握り、赤カーテンの前でカラオケを熱唱するギャング・ファミリー。シュールすぎて笑える。ジョニーとジュードという主人公二人が役者の名前そのままというのが何ともはやですが、実際の役者同士も親友だったりするのがさらにあああーな感じです。本編自体の作りがそもそも、その場のアドリブで成立していたという話を聞いたような聞かないような。
ジョニーの親友ジュードは、わりと辛抱強くジョニーの肩を持っていた方だと思います。そう思わずにはいられないくらいジョニーはやんちゃくれでございました。憧れとか理想が強すぎて、そうでない現実をムリヤリ理想に近づけようとするタイプですね。それが身の破滅を呼ぶわけですけど、まあ因果応報といいますか、そりゃーしゃーないわなーアンタ、といったところ。
全体的に完全なバイオレンス・アクションというわけではなくて、そこはかとなくコメディです。部下の人たちが二人、なんか夜の生活のことで訥々と悩み相談をしてるんですが、それがあんまりおかしくて吹き出してしまいました。でも顛末は非常にブラックでシニカル。いかにもイギリスっぽい。
そういえば「ノッティングヒルの恋人」でトボけたルームメイト役をやってたリス・エヴァンスが敵のファミリーの幹部役で出てまして、「あ、なんか(スパイクよりは)まともな役(とも言い切れないけど)・・・」とか思って見てました。この人のシリアスな芝居ってもっと見てみたい。
ジュード・ロウは相変わらず人殺しの役がよくお似合いで、もはや言うことございません。・・・あれ?奥さん(元の)も出てるじゃん。・・・一体どこに? (いま気付いた。)