Mr.ディーズ  ★★★☆

【2002年 : アメリカ】
 監督:スティーヴン・ブリル/音楽:テディ・カステルッチ
 出演:アダム・サンドラー(ロングフェロー・ディーズ)、
    ウィノナ・ライダー(ベイブ・ベネット)、
    ジョン・タートゥーロ(エミリオ・ロペス)、
    アレン・コヴァート(マーティ)、
    ピーター・ギャラガー(チャック・セダー)、
    スティーヴ・ブシェミ(クレイジー・アイズ) 他

突如巨額の遺産が舞い込んだ田舎の純朴な青年が、大金目当てで近づいた女性レポーターと恋に落ちるラブ・コメディ。1936年の名作『オペラハット』のリメイク作品。
ロングフェロー・ディーズ(アダム・サンドラー)はニューハンプシャーの小さな街でピザ屋を営むまじめで心優しい青年。だがある日、そんな彼がニューヨークの大企業の甥であることが発覚する。メディア王の叔父が亡くなったことから、ディーズは400億ドルという莫大な遺産を相続する唯一の血縁者になったのだ。
街の人々の盛大な見送りを受けてさっそくニューヨークへと向かった彼は、見たこともない豪邸で召使いとの生活を送ることに。だがやがて周囲には、人の好い彼を騙して相続株を横取りしようとする会社の重役たちなどセコい人間が次々と現われる。さらにスクープ記事を狙う女性レポーター、ベイブ・ベネット(ウィノナ・ライダー)も真意を偽り彼に近づくのだったが・・・。

最初の数分見ていれば、これがいわゆるアホアホアメリカン・コメディのノリであることは一目瞭然です。
でも実はそれだけでもないんだな。ディーズはかなりのお人好しだけど、決してオツムの軽い男ではありません。 むしろ人として大事なことが誰よりよくわかっている。
で、そんな彼を騙そうとして失敗する周りのやつらこそアホであるというところをいかにもアホっぽく見せるコメディなのであります。アダム・サンドラーはやっぱりこういうノリはうまいんですよ。さすがはアメリカン・コメディ畑のベテランて感じすね。
ま、ウィノナ・ライダーが本作でラジー賞のワースト主演女優賞とっちゃったことは一応スルーの方向で。



 ミセス・ダウト  ★★★☆

【1993年 : アメリカ】
 監督:クリス・コロンバス/音楽:ハワード・ショア
 出演:ロビン・ウィリアムズ(ダニエル)、
    サリー・フィールド(ミランダ)、
    ピアース・ブロスナン(スチュ)、
    ハーヴェイ・フィアスティン(フランク)  他

離婚した父親が子供たちに会いたい一心で女装し、元妻の家庭へ家政婦として潜り込む騒動を描くコメディ。
声優のダニエル(ロビン・ウィリアムズ)は才能はあるが世渡り下手で、仕事中にボスと揉めとうとうクビになってしまった。子供と遊ぶしか能のない夫にうんざりしていたインテリアデザイナーの妻ミランダ(サリー・フィールド)は、長男の12歳の誕生パーティで子供や動物たちとバカ騒ぎをしたダニエルに怒り爆発、ついに離婚を宣言する。裁判の結果、ダニエルに週に1度しか会えなくなった子供たちは寂しがり、それ以上に子煩悩なダニエルは耐え難い落胆を隠せない。
一方新しい恋人との交際を始めたミランダは、留守中に子供の世話をしてくれる家政婦を雇う新聞広告を出した。それを知ったダニエルは、オカマで映画の特殊メイクアップ・マンの兄フランク(ハーヴェイ・ファイアスティン)の協力で、初老のイギリス夫人に変身。家政婦として元の我が家へ潜り込むことに・・・。

これは結構むかしに見て以来、好きな映画です。ロビン・ウィリアムズの変身ぶりが見事でね。
彼にオバサンメイクを施すお兄さんの役をやってるのが「トーチソング・トリロジー」のハーヴェイ・ファイアスティンだということには、つい最近気付きました。こんなところにこんな役で出てたとはな。(笑)
愛する者に対して無限の愛情を注ぐ優しい男を演じると、やはりロビン・ウィリアムズの横に出る役者はなかなかいないですね。相手はまあ、生徒であったり患者であったり家族であったりいろいろですけど、感動ヒューマンドラマ物にやたら彼を使いたがるのもわかる気はします。たまにそれがあざといなあと思ったりもしつつ、本作ではそのへんの人情っぷりとダニエルのダメ男っぷりがうまいバランスでミックスされていて、楽しい作品になっているのではないかと思います。



 ミッドナイト・エクスプレス  ★★★☆

【1978年 : イギリス・トルコ】
 監督:アラン・パーカー/音楽:ジョルジョ・モロダー
 出演:ブラッド・デイビス(ビリー・ヘイズ)、
    ランディ・クェイド(ジミー)、
    ノーバート・ワイザー(エリック)、
    ジョン・ハート(マックス)  他

麻薬不法所持の罪でトルコ刑務所に投獄されたアメリカ人旅行者の青年が、緊迫した国際情勢の中で祖国からも見放され、異国の独房で絶望的な日々を送った末、遂には脱獄を決行するまでを実話を基に描いた作品。

作中でのトルコの描き方がひどいとかなんとか、ちょっと言われたりもしましたけどね。
まああくまで米国人青年の目から見た世界ですから。どっち側から描くかで物語ってのは全然違って見えるのが世の常だと思うので。
麻薬密輸という罪を犯したのは主人公の自業自得です。犯罪は犯罪だろっていう気もしないでもない。
しかしながら異国のムショでの非道な仕打ちとか、思いがけず何十年も閉じこめられることになってしまった青年の苦悩と孤独、絶望に涙し追いつめられていく精神状態は、見ていても大変つらいものがあります。
その中でひっそりと繰り広げられる人間模様の描き方がやぱりアラン・パーカー監督はうまいね。
それにしても、脱獄の実話モノってのはやっぱ重みがありますわ・・・。ズッシリ。



 ミニミニ大作戦  ★★★☆

【2003年 : アメリカ】
 監督:F・ゲイリー・グレイ/音楽:ジョン・パウエル
 出演:マーク・ウォールバーグ(チャーリー)、
    エドワード・ノートン(スティーヴ)、
    シャーリーズ・セロン(ステラ)、
    セス・グリーン(ライル)、モス・デフ(レフト・イヤ)
    ジェイソン・ステイサム(ロブ)、
    ドナルド・サザーランド(ジョン・ブリジャー)   他

強盗のプロフェッショナルたちが金塊を巡って激しいカーチェイスを繰り広げるクライム・アクション。
イタリア・ベニス。窃盗における緻密な計画に天才的な才能を持つチャーリー(マーク・ウォールバーグ)は、とある最新型金庫に厳重保管されている50億円の金塊を奪おうとその道のプロフェッショナルたちを集め、見事強奪に成功する。だが仲間の一人スティーヴ(エドワード・ノートン)の裏切りで、金塊のみならず、父のように慕っていたジョン(ドナルド・サザーランド)の命まで奪われてしまった。
1年後、ロサンゼルス。チャーリーたちはジョンの娘で鍵師のステラ(シャーリーズ・セロン)を仲間に加え、スティーヴに奪われた金塊の再奪取を計画。それはミニ・クーパーを使った大胆なプロジェクトだった…。

この邦題じゃもったいなさすぎる!と思った映画の最たる一本です。
公開当時に映画館でポスターを見た時は、てっきり「スパイキッズ」の親戚かなんかだと決めてかかっておりました。こんなのわざわざ映画館で見る人いるのかなーとか、それくらいひどいこと考えてた・・・。
元々は69年にマイケル・ケインが主演した同名映画のリメイクだったのですね。その時からこのタイトルだったので、今さら変えられなかったというわけ。原題は「イタリアン・ジョブ」です。これはストーリー上のポイントをきちんと押さえた普通のタイトル。しかしこれをまんま「イタリア仕事」に訳すとパッとしないんでミニミニだったと。ミニミニはパッとするんかい。
中身はすごく面白かったです。大きな盗みが劇中で2本展開されますが、少ない仲間でぴしゃっと仕事をするプロの手際が爽快です。なんだー、「オーシャンズ11」みたいにゾロゾロいなくたってこういう仕事できるんじゃないの、とすごく感心。確かにタイトル通り、ミニもばっちり活躍してるしね。(笑)
つい先日のことですが、このオリジナルキャストと主要スタッフそのままで続編の制作が決定したそうです。楽しみ楽しみ。



 耳に残るは君の歌声  ★★★☆

【2000年 : イギリス・フランス】
 監督:サリー・ポッター/音楽:サッシャ・ヴィエルニー
 出演:クリスティーナ・リッチ(スージー)、
    ジョニー・デップ(チェーザー)、
    ケイト・ブランシェット(ローラ)、
    ジョン・タトゥーロ(ダンテ)  他

ユダヤ人の娘が第二次大戦中の激動の時代を渡り歩いてゆく様を、多くの歌曲と共に描いた大河ドラマ。
1927年、ロシア。ユダヤ人の幼い少女フィゲレは、村を襲った暴動から逃れるため父親(オレグ・ヤンコフスキー)とも別れ、たった一人ロンドンへ向かう。
10年後、スージーと名付けられた彼女(クリスティーナ・リッチ)はコーラス・ガールとしてパリで働くことに。美しく野心家のロシア人ダンサー、ローラ(ケイト・ブランシェット)と知り合い、アリアの名手であるイタリア人オペラ歌手ダンテ(ジョン・タトゥーロ)の美声に惹かれるものの、その人間性に失望した彼女は、やがてジプシーの青年チェーザー(ジョニー・デップ)と恋におちる。
だがナチスによる第二次大戦とユダヤ迫害の影は、刻々とパリにも迫っていた…。

テーマがテーマなので、非常に重厚な雰囲気が漂う作品。言葉少なに淡々と流れる場面の中、人々の表情によって静かに感情が語られます。無口だけれど意志の強い美少女クリスティーナ・リッチ、毒々しいのに高潔なケイト・ブランシェット、哀愁を纏いつかせる白馬のジプシー、ジョニー・デップ。配役はパーフェクトだと思います。特にジョニー・デップの声を殺した泣きっぷりに胸を打たれるお嬢さんも多いハズ。
随所に使われるジプシー音楽やオペラ、素朴な伝統歌も印象深いです。スージーのか細い歌声は、決して美声とも思わないけど作品の中では重要な要素。戦争を背景とした陰鬱な空気の中をかすかに漂うあの声こそが、この作品の美しいタイトルそのものです。



 ミュージック・フロム・アナザールーム  ★★★

【1998年 : アメリカ】
 監督:チャーリー・ピータース /音楽:リチャード・ギブス
 出演:ジュード・ロウ 、ジェニファー・ティリー 、
    グレッチェン・モル 、マーサ・プリンプトン 、
    ブレンダ・ブレッシン 、ジョン・テニー 、
    ジェレミー・ピヴェン  他

幼い頃に出会った少女に再会し、運命と信じるその恋を実らせようと奮闘する青年を描いたラブストーリー。
5歳のダニー少年は亡き母の友人グレースに招かれ、父と共にスワン家を訪れた。だが、突然産気づいた臨月のグレースの出産を手伝うことになり、ダニーは生まれた女の子アンナを見て「この子と結婚する」と宣言。
その後モザイク・アーティストとなったダニーは、モザイク修復の仕事のため帰郷した。そこで彼は成長したアンナと再会。ダニーはこれを運命だと信じるが、実は彼女には婚約者がいて…。

ジュード・ロウ主演の、ジュード・ロウによって成り立っているフツーの恋愛物語です。
人を殺さず、いたずらに脱がず、皮肉っぽく笑わず、ギャングでないジュード・ロウの、貴重なほど爽やかな笑顔をご覧になりたい方はどうぞこの作品で補給して下さい。
ストーリーとしては取り立ててどうという山場もなく。キャラクターにしても、主人公二人よりもヒロインの盲目の姉の方が興味深かったり。・・・何度も言いますが、ジュード・ロウ観賞用作品。



 ムーランルージュ  ★★★★

【2001年 :アメリカ】
 監督:バズ・ラーマン /音楽:クレイグ・アームストロング
 出演:ユアン・マクレガー(クリスチャン) 、
    ニコール・キッドマン(サティーン) 、
    リチャード・ロクスボロウ(公爵) 、
    ジム・ブロードベント(ジドラー)   他

19世紀末のムーラン・ルージュで繰り広げられる作家と高級娼婦の悲恋を描いたミュージカル。
1900年、パリ。作家を目指してモンマルトルにやってきた青年クリスチャン(ユアン・マクレガー)は、ふとしたきっかけからショーの台本を代理で担当することになる。ショーが行われる舞台はパリで最も華やかなナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」。仲間たちと店に紛れ込んだユアン・マクレガーは、高級娼婦サティーン(ニコール・キッドマン)の宝石のような輝きにすっかり心を奪われるのだった。
一方女優になるためにパトロンを探していたサティーンは、クリスチャンを公爵だと勘違いしてベッドに誘い込もうとするが、心を込めて詩を口ずさむ彼に本気で恋してしまう。クリスチャンが貧乏作家だと知っても、もはや恋の炎は消えなかった。作家と女優の関係を装いつつ愛し合う二人。だが、その恋には思わぬ悲劇が待ち受けていた・・・。

甘美で妖艶、ド派手で華々しい夢の箱庭で綴られる、ちょっと悲しい恋物語です。
ニコール・キッドマンの白い肌と真っ赤な唇はまさに夜の花。けれどそんな彼女を幸せそうに微笑ませるのは、少年のようにニカッと相好を崩すユアン・マクレガーの無邪気さなのであります。この作品でのユアンはとびきり可愛い。それだけに苦悩するシーンは気の毒だ・・・。
歌う二コールは堂々たるもんです。ちょっと高めの声なんで多少好き嫌いはあるかもですが、作品のイメージを損なうほどのことはありません。ユアンはもともと上手いからほっとこう。
19世紀が舞台とは言いつつも、使われる歌の数々は現代のポップスです。クイーン、エルトン・ジョン、マドンナ、ビートルズなどなどのお馴染みの曲をツギハギしながら、ミュージカルソングとしてお互いに歌いかけるという具合。選曲はかなり面白かったと思います。歌モノ好きの私としては大満足。
ディスコをイメージしたという華美な世界と、おとぎ話のような儚いストーリーが同居した作品ですが、完璧に作り上げた「ムーラン・ルージュ」の世界は見応えたっぷりです。



 メイド・イン・マンハッタン  ★★

【2001年 :アメリカ】
 監督:ウェイン・ワン /音楽:アラン・シルベストリ
 出演:ジェニファー・ロペス(マリサ) 、
    レイフ・ファインズ(クリストファー) 、
    タイラー・ガルシア・ポジー(タイ) 、
    スタンリー・トゥッチ(ジェリー)   他

ホテルのメイドを勤めるシングルマザーと未来の大統領と噂される上院議員候補に訪れた恋の模様を描く。
マリサ(ジェニファー・ロペス)は、マンハッタンの五つ星ホテル、ベレスフォードで客室係をするシングル・マザー。同僚と共にスイートルームの清掃にとりかかっていると、パーク・スイートに宿泊している社交界一のプレイガール、キャロライン(ナターシャ・リチャードソン)から部屋にあるドルチェ&ガッバーナの服を店に返却してくれと頼まれる。そのコートに5000ドルの値札が付いているのを見て、ステファニーはビックリ。「こんな機会は二度とないんだから」と、しぶるマリサに試着をすすめる。
と、そこにマリサを探しに来た彼女の息子・タイが現われた。ひとり遊びに飽きてホテルを散策していた彼は、エレベーターで上院議員候補のクリス・マーシャル(レイフ・ファインズ)と出逢い、一緒に犬の散歩に出かける許可をもらいにやって来たのだ。タイの後から部屋に入ってきたクリスを見て、驚くマリサ。もし宿泊客の服を勝手に着ていることがバレたら大変なことになる。仕方なく彼女は「キャロライン」になりすますが・・・。

ええと。これが全米NO.1ヒット・・・?マジすか?
ジェニロペがいかんというよりもすでに設定というか筋書きがいかん。客の服を勝手に試着するようなメイドがホテルのマネージャー職なんか目指していいわけないでしょうが。プロ根性はどこだプロ根性は。向こうに出てくるメイドってよく客の服試着してるよな。実際こういうヤツが多いのか?
なんかそこでもうすっかり興ざめしてしまったので、あとはアラにばっか目が行ってしまいまして・・・。
息子は子どものくせに聞き分けよすぎて却って気味悪いくらいだしさー。リアリティっちゅうもんがどこにもない話です。だからこそのシンデレラストーリーだと言われるかもしれませんが、私にはダメでした。 お好きな方には申し訳ない。退散退散。



 モーリス  ★★★★

【1987年 :イギリス】
 監督:ジェームズ・アイヴォリー/音楽:リチャード・ロビンズ
 出演:ジェームズ・ウィルビィ(モーリス・ホール)、
    ヒュー・グラント(クライヴ・ダーハム) 、
    ルパート・グレイヴス(アレク) 、
    マーク・タンディ(リズリー)   他

上流中産階級の偽善を、若者同志の愛を通して描くクラシック・ムービー。
1909年、ケンブリッジ大学キングス・カレッジの寮生だったモーリスが別寮の知的な学生クライヴ・ダーハムに出会い、友情と愛情の狭間で揺れながら、やがて真実自分の求める生き方を見つけるまでを追う。
ジェームズ・アイヴォリーによるE.Mフォスター作品の映画化第二弾です。
これを最初に見たのは確か昔テレビでやってた深夜映画だったような気が・・・。最近ちゃんと見直してみて「アレ、こんな話だったっけ・・・?」ときょとんとしたものでございました。
少年同士の恋を描く耽美映画の最高峰として名を馳せる本作ですが、それを差し引いたとしても絵の撮り方から何から丁寧で美しい文芸作品です。・・・まあ、DVD化してからは裸体も無修正になっちゃったんで・・・知らずに見るとちょっと引くかもしれません。(笑)

ジェームズ・ウィルビィ演じるモーリスは、もともと快活で人当たりの良い気さくな青年です。古典文学の授業で語られる同性同士の愛情に対してさえ少々懐疑的なほどノーマルな若者でしたが、友人を介して出会ったクライヴと無二の親友として付き合っていたある日、彼から愛を告白されてビックリ仰天。混乱のあまり一度は拒絶するものの、モーリスは自分にとってもクライヴがかけがえのない存在なのだと気付きます。
このクライヴ・ダーハムを演じているのが若き日のヒュー・グラント。天下のラブコメキング、俳優として注目を浴びた最初の作品はこれだったりする。あのカツカツした独特のクイーンズ・イングリッシュはこの頃から変わってません。若さも味方してかなり別嬪です。タレ目だけど。そしてときどき声ひっくりかえるけど。
で、このクライヴという青年はモーリスよりも少し階級が上の家柄に生まれた人で、のちのちの出世を考えると世間体にも敏感にならざるを得ないわけです。だから自分からモーリス巻き込んでおきながら、結局彼の愛情が深まるのを拒絶してしまう。そのくせ友情はなくしたくないと都合の良いこと言うんですね。
モーリスとクライヴの微妙な関係はそれから何年も続きますが、モーリスに恋するダーハム家の使用人、アレクの登場で新たな展開を迎えます。
自分の性癖を病気かもしれないと思い悩むモーリス。階級社会の実態を考えると、アレクの愛情も信用しきれない。閉塞感漂う保守的な時代に生まれたばかりに、彼の苦悩は絶望的なほど深いのであります。
今ならきっと「そりゃ別に病気じゃないよ」と言ってくれる人もいるだろうにね。
ラスト近く、クライヴの追憶の中で無邪気に「来いよ!」と彼を呼び、微笑みながら手を振ったモーリスの姿がじんわりきます。クライヴの心にひそむモーリスへの未練と、その未練への決別を見たようで。
素朴で美しいエンドロールの旋律を聴きながら、なんとなく少しせつない気分になってしまう作品です。