同級生  ★★★☆

【1998年 :イギリス】
 監督:サイモン・ショア/音楽:ジョン・ラン
 出演:ベン・シルヴァーストン(スティーブン)、
    ブラッド・ゴートン(ジョン)、
    シャーロット・ブリテン(リンダ)、
    ティム・ハリス(ケビン)、
    ステイシー・ハート(ジェシカ)  他

自分の性癖を自覚しているゲイの男子高生が、学校のスターである憧れの同級生との恋を通じて成長する姿を描く青春ドラマ。

扱ってる内容のわりにとても爽やかな雰囲気で、そうかそうか、可愛いなあキミタチ、と思わず頷いてしまう作品です。まあ主人公がスピーチの壇上で『Get Real』(原題:真実を見よ)とカミングアウトするシーンは多少できすぎというか、頑張りすぎてるような気もしなくはないですが。
個人的にはそういうのって、必ずしも大声で主張しなくてはいけないものではないと思うんです。そこらにいる全員に理解を求めることよりも、信頼の置ける人との間でコミュニケーションによって心底受け入れられることの方が大事だし、本当の意味で大変なんじゃないのかな。
その点この作品での主人公は、すでに理解者として幼なじみの女の子を友人に持っているわけで、それはかなり幸運な方でしょう、多分。 それでも、あえて声にして主張したい!と思っちゃうところが若さなんだよな。
ちなみにそんなスティーヴン、なんだかトビー・マグワイアと岡村隆史を足して割ったような顔立ちです。
そして彼の憧れである相手役のジョンは、TOK○Oの長瀬くんをがっちりさせたような感じだなあとか思ったのですが・・・私だけ?
同性愛者である自身を早くから受け入れているスティーヴンに比べ、自分がそうだと認めるにはまだ抵抗のあるジョンは、学校のいじめられっこであるスティーヴンと人前で接触を持つ勇気がなかなか持てません。
そんなジョンのつれない素振りに傷つくスティーヴン。落ち込むスティーヴンを見て、やっぱり勇気を出そうと思うジョン。青春まっさかりで微笑ましい限りです。
二人が選ぶ結論は決してハッピーエンドというわけではありませんけど、スティーヴンには彼の味方をしてくれる心強い女友達が二人もおり、また母親も息子の在り方に理解を示してくれます。
が、男どもはというと揃ってダメなんだなこれが。父親しかり、ジョンしかり。
やはり同性の方が抵抗感は強いらしく、この映画の中でゲイの真の味方は女だけか?と思わざるを得ない。
それだけにスティーヴンの隣にビシリと立つ彼女たちはとても格好いいです。
・・・・ところで、同級生っていう邦題はどうなの? なんか一時流行ったシミュレーション・ゲームを連想してしょうがないんですが。



 トゥームレイダー  ★★★☆

【2001年 : アメリカ】
 監督:サイモン・ウェスト/音楽:グレアム・レヴェル
 出演:アンジェリーナ・ジョリー(ララ・クラフト)、
    イアン・グレン(マンフレッド・パウエル)、
    ノア・テイラー(ブライス)、
    ジョン・ヴォイト(クラフト博士) 他

スーパーヒロインの冒険を壮大に描くアクション作品。同名の人気ゲームの映画化。
トレジャー・ハンターのララ(アンジェリーナ・ジョリー)は、20年前に失踪した父(ジョン・ヴォイト)の隠し部屋から不思議な時計を発見する。それは、5000年に一度のグランド・クロス(惑星直列)によって巨大な力を発揮するという、古代の秘宝への手掛かりだった。ララは父の遺志を継ぎ、相棒の天才プログラマー、ブライス(ノア・テイラー)や、執事のヒラリー(クリス・バリー)、アレックス(ダニエル・クレイグ)と共に謎解きにとりかかる。しかし、ララと父の宿敵であるマンフレッド・パウエル(イアン・グレン)もまたこの機会を狙っていたのだった・・・。

アンジェリーナ・ジョリーとその実父ジョン・ヴォイトが共演!というあたりもちょっと話題だったらしい。
撮影後はまた疎遠になっちゃったみたいだけどね。
これは映画館で見ました。ともかくアンジェリーナ・ジョリーのスタイルとアクションがすんばらしい。
それだけを見るための映画だと思います。ストーリーはなんてことなかった。アンジェリーナの、アンジェリーナによる、アンジェリーナのための一本。



 トーク・トゥー・ハー  ★★★☆

【2002年 : スペイン】
 監督:ペドロ・アルモドバル/音楽:アルベルト・イグレシアス
 出演:ハヴィエル・カマラ(ベニグノ)、
    ダリオ・グランディネッティ(マルコ)、
    レオノール・ワトリング(アリシア)、
    ロサリオ・フローレス(リディア)  他

バレエダンサーのアリシア(レオノ-ル・ワトリング)は事故で昏睡状態となり、4年もの間あいだ深い眠りの中にいた。看護士のベニグノ(ハビエル・カラマ)そんな彼女の髪や爪の手入れをし、体を拭き、クリームを塗り、服を替える。彼女に日々の出来事や感動的した映画などについて語りかけるベニグノは、2人の間に言葉ではないコミュニケーションの存在を確かに感じており、それだけが人生の生き甲斐だった。
一方、女闘牛士であるリディア(ロサリオ・フローレス)もまた、競技中の事故によって昏睡状態で入院していた。彼女の恋人であるアルゼンチン人のマルコ(ダリオ・グランディネッティ)は、突然の事故に困惑し、為す術もなくふさぎこんでいる。そんな互いの境遇を語り合ったベニグノとマルコの間には、いつしか厚い友情が生まれていった。 そしてある日、ベニグノの盲目的な愛は予想だにしなかった悲劇と奇跡を招き、それぞれの運命を大きく変えてゆく・・・。

同じ時期にこの映画を鑑賞した人と「・・・おいおい、えらいモン見てしもたぞ・・・」とため息をつきあったかなりの衝撃作。侮るなかれスペイン映画。情熱の国はすげえなァ。
ベニグノがアリシアに向ける愛はそもそも本当に愛と呼べるのか、という部分からして見る人の判断が分かれるでしょうね。物語の中で起きるある事件は、まともに考えるとかなりの嫌悪感を伴うんですが、見終わってみると暗い卑しさがあんまり残らないのが不思議です。それはなぜだろうと一生懸命考えてみたものの、うまい答えが見つかりません。ベニグノの動機がその純粋さから生まれたものだから、といえば聞こえはいいけど、純粋だったら許されるかというとそんなはずもなく、考えれば考えるほどウウ〜ンと唸りたくなります。

主要登場人物四人の関係はとても複雑。ベニグノからアリシアへの愛はあまりに一方的で、マルコとリディアの間にある愛もいざとなれば確証が揺らぎます。ベニグノとマルコの関係は友情のようなそれだけでもないような、マルコとアリシアのこれからの関係は恋であるようなそうでもないような。 名付けるのが難しい人間模様が微妙な距離感で示されているところは、観客にいろいろな余韻を残すと言う意味ですごくうまいです。
気になるところはもうひとつ。アリシアがマルコと知り合うきっかけは、ベニグノとマルコの出会いと同じなんですね。 泣いてる彼に目がとまる。でもマルコが泣いてる理由は最初とは全然違うのです。 そういう違いで言うと、アリシアに対しては触ってない所がないくらいずっと側にいたベニグノなのに、マルコと心を通わせた時はガラスに隔てられて指一本触れられないわけです。そのへんの対比も興味深いなあと思いました。
「時に狂気は一見正気と見分けがつかないことがあり、そして時には正気よりも優しいことがある」。
監督はインタビューでそんなふうに話してました。まさにその境界線の部分を、あらゆるシーンにおいて図々しいほど美しく描いた作品のような気がします。



 トーチソング・トリロジー  ★★★★☆

【1988年 : アメリカ】
 監督:ポール・ボガート/音楽:ピーター・マッツ
 出演:ハーヴェイ・フィアスティン(アーノルド)、
    マシュー・ブロデリック(アラン)、
    ブライアン・カーウィン(エド) 、
    アン・バンクロフト(ママ)、
    エディ・キャストロダッド(デイヴィッド)  他

あるゲイの主人公をめぐる愛と葛藤の人間模様を描くヒューマンドラマ。脚本・原作戯曲は主演のハーヴェイ・ファイアスティン。
ゲイで女装のエンターティナー、アーノルド(ハーヴェイ・ファイアスティン)は、トーチソング(恋歌)を得意とするダミ声のシンガーだ。誰かを愛したいといつも願っているが、この道の多くの者がそうであるように求めるほどには満たされない。傷つき続けた過去を教訓に恋には用心しながらも、友人とでかけたバーでハンサムなエド(ブライアン・カーウィン)に声をかけられ、彼はまたしても恋に落ちた。だがエドはバイ・セクシャルであり、いつのまにか女性の恋人も得ていたことからアーノルドの恋は消え去ってしまう。
そんなある日、クリスマスショーで起こったトラブルをきっかけにアラン(マシュー・ブロデリック)という優しげな青年と出会ったアーノルド。気の進まない彼をよそに、アランは熱心なアプローチを繰り返してくる。最初は若すぎる彼にとまどったアーノルドだが、その真っ直ぐでひたむきな愛情はやがて欠けがえのないものとなっていった。しかしアランと二人で養子を迎える準備を進める矢先、彼らは思いもかけないアクシデントに襲われてしまう・・・。

もともとは舞台作品として数々の賞を受賞した物語です。喜劇と悲劇、ある種の猥雑さ、それでいて清々しいほどの人のぬくもりを感じさせる作品。私は最初に見た時より、繰り返して見た2度目、3度目の方が泣けました。人生の奥深さや、長い時間の中で熟成されていく豊かな愛情を見せてもらったという感じです。
主人公のアーノルドは飛び抜けて美しいわけでもなく、枯れた声を売り物にしたコメディエンヌ。ぶっきらぼうだけどあたたかく、淡々としているようで懐が深く、人間としてはとても成熟した人物です。けれどゲイとして生きてきた中でその胸には常に哀愁を抱えており、だからこそ余計に愛を欲し、同時に与えたがっている人でもあります。エドやアランは彼のそうした優しさに惹かれたのでしょう。また、ママをはじめとする彼の家族たちも、様々な葛藤に苦しみながらもやっぱり彼を愛しています。
波乱に満ちたアーノルドの人生。しかし、苦しみや悲しみを越えて彼は思います。大切なアラン、腐れ縁のエドや奔放な息子、気の強い母親。憎たらしい日もあるけれど、結局いつだって、まるで陽溜まりのように、穏やかな灯火のように愛はそこにあるのだと。
ハーヴェイ・ファイアスティンの表情ひとつひとつに本当に泣かされました。ラストで静かに満ちる幸福感を、ぜひたくさんの方に味わっていただきたい秀作です。



 ドライ・クリーニング  ★★★☆
【1997年 :フランス・スペイン】
 監督:アンヌ・フォンティーヌ
 出演:ミュウ・ミュウ(ニコル)、
    シャルル・ベルラン(ジャン=マリー)、
    スタニスラフ・メラール(ロイック) 他
    ※【現在VHS発売のみ】

平凡なとある夫婦と、ふたりを魅了する美青年の危険な関係を描く異色のラブ・ロマンス。
フランスとスイス国境の小さな街ベルフォールでクリーニング店を営むジャン=マリー(シャルル・ベルリング)とニコル(ミウ・ミウ)はごくありふれた夫婦だ。しかしそんなある日、ふたりはヨーロッパの場末の盛り場を転々とするドラッグ・クイーンの美青年ロイック(スタニスラフ・メラール)と知り合う。これまでずっと行動を共にしてきた姉を失い、今や孤独となった彼を、二人は親切心から迎え入れることにするのだが…。

まあこの青年はですねー、奥さんの方を手始めに誘惑しつつ、奥さんもつい夢中になっちゃったりするわけですが、でもあれでしょ?彼、ほんとは旦那のほうが好きだったんでしょ?最初から。
ヒゲのカタブツくんである生真面目なご主人。ほんとは彼も青年に惹かれているけど、プライド高いので死んでもそんな振り見せるもんかという意固地さがあります。
青年はあのストイックさがよかったのだろーか。すぐになびく相手はつまりませんか?
ともかくフランス映画は意地悪です。まさにフランス映画らしいブラックなエンディング。



 ドグマ  ★★★

【1999年 : アメリカ】
 監督:ケヴィン・スミス/音楽:ハワード・ショア
 出演:ベン・アフレック(バートルビー)、
    マット・デイモン(ロキ)、
    リンダ・フィオレンティーノ(ベサニー)、
    アラン・リックマン(メタトロン)  他

天国への帰還を企む堕天使コンビと、彼らを阻止するためにつかわされた女性の戦いをコミカルに描いた異色の宗教ドラマ。
時代に即して教会のイメチェンを図るキャンペーンを企画したニュージャージー州・レッドバンクカトリック教会のグリック枢機卿は、教会の門をくぐって聖堂に入ればすべての罪が許されるという「特別の日」イベントを発表する。大むかし『神』に逆らって以来2000年間ウィスコンシンに追放されていたバートルビー(ベン・アフレック)とロキ(マット・デイモン)の堕天使コンビは、このイベントを利用して天国へ帰還しようと計画した。だがこれが実行されるということはすなわち、神が定めた決定に矛盾が生じるということ。神の教義が覆れば世界はたちまち滅亡してしまう。
これを阻止するべく選ばれたのが、シカゴの女性堕胎医ベサニー(リンダ・フィオレンティーノ)だった。
突然現れた大天使メタトロン(アラン・リックマン)から命令を受けた彼女は、ジェイ(ジェイソン・ミューズ)とサイレント・ボブ(ケヴィン・スミス)という頼りない預言者コンビと共に、一路ニュージャージーへ向かうのだが・・・。

なにもかもがありえないコミック調の設定とあからさまB級の視覚効果。大真面目に遊んでることが見え見えの仕上がりとなっております。そのくせオチは結構ブラックなのよね。
クレジットにはあたかもベン・アフレックとマット・デイモンがメインキャストであるかのように出ていますが、実際の主人公は間違いなくリンダ・フィオレンティーノ演じるベサニーだと思います。ベンとマットを組まりゃいいってもんじゃありませんよ奥さん。
敬虔なクリスチャン相手に見せたら罵詈雑言の嵐であろう劇中設定も、無宗教者としてはユニークでわりと面白かったです。ただ、人物事情や過去の経緯についての説明をいちいち役者に喋らせるので説明台詞が長くてねー・・・。そのへんがますますコミックくさい感じでした。
本作で予言者コンビとして登場したジェイとサイレント・ボブ(つまり監督本人)の珍道中を描く姉妹作も数年後に製作されたようです。楽しく遊べてよかったね。



 トレインスポッティング  ★★★☆

【1996年 : イギリス】
 監督:ダニー・ボイル
 出演:ユアン・マクレガー(レントン)、
    ジョニー・リー・ミラー(シック・ボーイ)、
    イーウィン・ブレムナー(スパッド)、
    ロバート・カーライル(ベグビー)、
    ケヴィン・マクキッド(トミー)、
    スーザン・ヴィドラー(アリソン) 他

ヘロイン中毒に陥った若者たちの生態を斬新な映像感覚で描いた青春ドラマ。
マーク・レントン(ユアン・マクレガー)は平凡な生き方よりも「誠実で真実あふれる麻薬の習慣」を選んだ麻薬常習者の青年。ふと思い立って麻薬断ちを決めるものの、成功したためしがない。理屈屋で遊び人のシック・ボーイ、気弱で人の好いスパッドや短気で暴力魔のベグビー、子持ちのアリソン、唯一クスリをやらないトミーらと溜まってはうだうだと過ごす毎日だ。気が滅入ったときはとりあえずドラッグ。目の前の苦難を一時忘れるためにはそれが一番だから。
しかしそうして皆で酩酊していたある日、彼らはとうとう目を逸らすことのできない惨事を招いてしまった。レントンは今度こそ、本当に人生をやり直そうと固く決意するのだが…。

楽しい時はクスリ。悲しい時もクスリ。抜け出そうと思うけれど結局抜け出せない堂々巡りの若者たちを、陽気にカラッとブラックにえげつなく描いた作品です。
ともかくあの『赤ん坊』が怖くてさー!イヤもう、夢に出そうだったよマジで。ヤク中って実際こんな感じなんだろうか。うーん、サムイ。
この無力感、懈怠感。ひょろひょろのユアン・マクレガーやその仲間たちが醸し出すなんともいえないデカダンスこそが、この作品のテーマであり色であり形です。
それでいて不思議に湿っぽさがないのは、入れ替わりバックに流れる音楽の力も大きいのでしょう。サントラもよく売れましたねー。イギー・ポップから始まるオープニングは、何はともあれ格好良いのです。
この作品が劇場で公開されていた当時、私はなんの興味も持たずに素通りしていたわけですが、ボウズのユアンが全面にのしっとデザインされたポスターだけは妙に記憶に残っています。
あの時代の若者たちに衝撃を与え、いまなお支持されるこの青年群像は、それこそ麻薬のように時代の虚無感を引き寄せるのかもしれません。