プリシラ  ★★★★

【2001年 : オーストラリア】
 監督:ステファン・エリオット/音楽:ガイ・グロス
 出演:テレンス・スタンプ(バーナデット)、
    ヒューゴー・ウィーヴィング(ミッチ)、
    ガイ・ピアース(フェリシア)、ビル・ハンター(ボブ)、    サラ・チェドウィック(マリオン) 他

3人のドラッグクイーンが、バスに乗って大自然をゆく珍道中を描いたロードムービー。
ショウガールの仕事で結ばれたバーナデット(テレンス・スタンプ)、ミッチ(ヒューゴー・ウィーヴィング)、フェリシア(ガイ・ピアース)の3人は、オーストラリア中部の砂漠の真ん中にあるリゾート地でショウを行うため、大都会シドニーからプリシラ号と名付けたバスに乗り、遙か3千キロの旅に出た。
新しい出会いを楽しみ、好きな歌を歌い、ちょっとした騒動に傷ついたりしながらも、一行は派手派手しく砂漠を突き進む・・・。

ええと・・・エージェント・スミスが・・・エルロンド様がえらいことになってます・・・。
ヒューゴー・ウィーヴィング演じるドラッグクイーンぶりの素晴らしいこと。そしてオソロシイこと。
ドラッグクイーンとは“ロングドレスをドラッグする(引きずる)”という意味から名付けられた女装のゲイの方々をさす言葉です。ともかく派手なことにかけては凄まじいのですが、プリシラの三人もこれまた凄い。一言でいうとみんな極彩色のイグアナです。
でもねー、なんか可愛いんですよ。 どんなことも笑って乗り越えようとする人たちが、本当は繊細な部分で傷ついたりしてる姿ってやるせない。でも次の日にはまた大声で歌って大騒ぎしてる様子に、いつのまにかこっちまで元気が出るのです。
バーナデットは一番年長で口うるさく、人生経験豊かな先輩。ミッチは一行のリーダーで、実はちょっといろいろヒミツがあります。まだ若いフェリシアは世間知らずでお祭り騒ぎが大好き。いつも年上ふたりに怒られてますがちっともへこたれません。このフェリシアを演じるガイ・ピアースは今じゃ「LAコンフィデンシャル」「メメント」あたりですっかりシャープになってますので、この作品での手作りウサミミ姿は貴重品です。歌もうまいよな。ただ、お化粧もオシャレも大好きって割に鍛え抜かれた上半身をいつも諸肌脱ぎしてるのはわざとなんでしょうか。走り方もすごく男前なんですが。乙女がそんなことでいいのか?
オーストラリア産の映画って数でいうと稀少ですよね。本作では地元ならではの素晴らしい景観も見応えあります。フェリシアがバスの屋根に座り、オペラをかけながら恐ろしく長い銀色の衣裳を風にはためかせて荒野を行く場面は圧巻ですよ。アカデミー衣裳賞を授かった壮観なシーンです。
正直言うとプロのショウガールというわりには三人の踊りはイマイチ冴えない気もするんですけど、それも味なのかな。とりあえず、兄弟(姉妹?)のように喧嘩しながら仲のいいミッチとフェリシアは、次の「交替」まで一緒におチビさんの面倒みたりするのかなーとか、そんなことを考えるとますます微笑ましいです。



 プリティ・ウーマン  ★★★★

【1990年 : アメリカ】
 監督:ゲイリー・マーシャル
 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
 出演:リチャード・ギア(エドワード)
    ジュリア・ロバーツ(ビビアン)、
    ジェイソン・アレクサンダー(スタッキー)
    ラルフ・ベラミー(ジェームス) 他

ハリウッドの路上に立つコール・ガールがビジネス・エリートと出会ったことから幸福をつかむまでを描く現代版シンデレラ・ストーリー。
あらすじはもはや書くまでもないと思うので省略。好きな人は好きだし、興味ない人は今でも観ていないと思われる超人気ラブコメ。ジュリア・ロバーツがハリウッド映画界にジュリア・ロバーツ枠なるものを作り上げた先駆けだと私は勝手に思ってます。
なんとなく顔がいつも笑ってるリチャード・ギアは最初とくにいい男にも見えなかったですけど、そして今見てもあのラストあたりってありえないほどロマンチストなおっさんだと思う程度なんですけど、後世に残るラブコメとはこれくらい突き抜けなきゃだめなんでしょうかねやっぱり。そもそも向こうのオジサマって、あれだけ若い子と並んでもちっとも違和感がない。羨ましいというかなんというか私が羨ましがってどうするんだというか。
ちなみに同じ柳の下に二匹目を求めた「プリティ・ブライド」の方は見てません。なぜならこの一作で充分満足したからです。なんだかんだ言って時々見たくなる。王道の強さってやっぱそこなんだな。



 ブルー・クラッシュ  ★★★☆

【2002年 : アメリカ】
 監督:ジョン・ストックウェル/音楽:ポール・ハスリンジャー
 出演:ケイト・ボスワース(アン・マリー)、
    ミシェル・ロドリゲス(エデン)、
    サノー・レイク(レナ)、
    マシュー・デイヴィス(マット) 他

オアフ島を舞台に、サーフィン大会での優勝を目指す少女を爽やかに描いた青春スポーツ・ムービー。
ハワイのオワフ島ノースショア。サーファー達の聖地であるこの海では数週間後、世界最高峰の大会“パイプライン・マスターズ”が開かれる。巨大なチューブが形成されるパイプラインは、サーファーにとって憧れであると同時に一歩間違えれば死にも繋がりかねない恐怖のポイントだ。
子どもの頃から天才サーファーと呼ばれてきたアン(ケイト・ボスワース)は、親友のエデン(ミシェル・ロドリゲス)、 レナ(サノー・レイク)、 そして妹ペニーと小さな一軒家で暮らしながらこの大会での優勝を目指し練習に励んでいた。だが以前サーフィン中に味わった大事故が原因で、大きな波を前にすると体がすくんでしまい、未だその恐怖心を克服できずにいる。
そんな中、バイト先でフットボールのスター選手、マット(マシュー・デイヴィス)と知り合い、恋に落ちるアン。波への不安を紛らすかのように、彼女は次第に海から遠ざかってゆくが・・・。

いや、これはもう、とにかくサーフィンを体感する映画です。CGや合成映像を一切使わず、完全ロケで撮影されたという驚異の映像を楽しまなくてはいけません。
もちろん、メインの女の子三人(+ 妹)の青春メモリー的なストーリーもあるんですけど。友情とか、ほのかなロマンスとか。しかしもはやそんなもんはどーでもいいです。バイト先のホテルで彼女たちがいかにヤンチャな仕事っぷりかというあたり、微妙にカチーンときたりもするんですが、そこに絡んでくるでっかいオッサンのキャラクタがちょっと可愛かったから許す。
いやいや、だからもう、そんなことはどーでもいいんですって。(笑) 私はサーフィンどころかマリンスポーツは一切しません。でもあの映像は気持ちいいと素直に思いました。あれはほんとによく撮れてる。うっかり自分で波に乗った気分になれます。夏にオススメ。一服の清涼剤として是非。



 ブルート  ★★★☆

【1998年 : ドイツ】
 監督:マーチェイ・ディチェル/音楽:マイケル・ロレンク
 出演:ティル・シュヴァイガー(ブルート)、
    ポリー・ウォーカー(マーラ)、
    ピート・ポスルスウェイト(シンカイ)、
    ジョン・ハート(バビット) 他

ある孤児院で子供達の世話をすることになった男が、その裏にある犯罪組織の存在を知って一人立ち向かう姿を描いたバイオレンス・アクション。
ならず者のブルートは、ロンドン刑務所から釈放の条件としての社会奉仕活動のため、ルーマニア辺境にある孤児院で子供達の世話をすることになった。孤児院を経営するのは陰気なシンカイとアル中の医者バビット。彼らは表の顔とは別に武器の密輸、子供の売買までしていた。一方、強面で乱暴なブルートを警戒していた子供たちは、しだいにブルートを慕うようになる。当初逃げ出すことしか頭になかったブルートも“養子縁組”という名目で売り飛ばされていく子供たちの姿を目の当たりにし、ついに立ち上がる決心をするのだが…。

「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」でマーティンを演じていたティル・シュヴァイガーを最初に知ったのがこの作品です。深夜映画で放送されていたのを何げなく目にしたのですが、印象深い音楽と男くさい主人公、孤児院子供たちが辿る深く重たい展開に引き寄せられてすっかり最後まで見入ってしまいました。
ブルートは典型的なアウトローで、言ってみれば街のゴロツキ風です。乱暴で愛想のない不器用な男。けれども嫌々ながら孤児院で働く彼を、ひたすら一途に想う少女が登場します。彼女は心臓に重い病を抱えており、愛情に欠けたまま育ったためにやはり感情表現に不器用で、口も悪く、気性の激しさといったら手に負えません。ですが、あまりにも真っ直ぐな少女の気持ちにできるだけ向き合おうと四苦八苦するブルートは、結局心優しい青年なのでしょう。
そうして少しずつ子どもたちをちゃんと見つめ始めた彼は、やがて孤児院の裏の顔を知ります。巧妙な隠蔽と有無を言わせぬ権力に誰も逆らえないのだという現実に、それでも彼がひとりで立ち向かったのはあの少女の辿った悲しい結末があったから。もうこのへんが、思い出すだけで重くて悲しい。(涙)
物語の顛末は、それでも一抹の希望を残したと言ってもいいでしょうね。それにしてもエンドロールに流れるあの音楽、気になってしかたありません。淋しくも激しい、どこか達観したような民族楽器のリズムがいつまでも印象に残ります。



 フル・モンティ  ★★★☆

【1997年 : イギリス】
 監督:ピーター・カッタネオ/音楽:アン・ダッドリー
 出演:ロバート・カーライル(ガズ)、
    トム・ウィルキンソン(ジェラルド)、
    マーク・アディ(デイヴ)、
    スティーヴ・ヒューイソン(ロンパー)、
    ウィリアム・スネイプ(ネイサン)、 他

生活のために男性ストリッパーを目指して悪戦苦闘する男たちをユーモラスに描いたヒューマン・コメディ。
イギリス北部の街シェフィールド。25年前は鉄鋼業で栄えたこの街も、今では誰もが失業中で苦しい生活を強いられている。ガズ(ロバート・カーライル)もまたそんな一人で、幼い息子の養育費を払う事が出来ず、共同親権を奪われる寸前だ。だが親友のデイヴ(M・アディ)と共に男性ストリップショーに紛れ込んだガズは女性陣の熱狂ぶりに驚き、自分たちでもストリップをすれば金を稼げるのではないかと考えた。
排気ガスで自殺しかけていた気弱なロンパー(S・ヒューイソン)、社交ダンスが得意な元上司ジェラルド(T・ウィルキンソン)、多少年配だがリズム感に長けた黒人ホース(P・バーバー)、立派なイチモツの持ち主ガイ(H・スピアー)をどうにか仲間に加え、さっそくストリップの練習を始めるのだが・・・。

最大のギモンは、なぜパッしないダメ親父たちがパッとするために選んだ手段がストリップだったのかということです。なぜだ。楽だからか。元手が大してかからんからか。文字通り裸一貫てこと?だからってほんとに脱がなくても・・・。
と、いう根本的な謎に片目を瞑るとすれば、それなりに楽しめるファミリードラマです。やっぱイギリスはこういう作風がうまいですね。ハートウォーミングなあたりをチョコチョコとくすぐって、悲哀と滑稽さのバランスをうまくとってる。
個人的にはあの太っちょガスの奥さんが好きです。こんな身体、とても人前じゃ見せられないと悩むダンナに「でもあたしが見たいわ」と言ってくれる。これよ。こーいう愛情にちょっとホロッとしちゃうんだな。
それから、一行が職業安定所の列に並んでいると、有線でかかった曲に合わせて無意識に身体が動いてしまうというあのシーン。やっぱりあれが一番笑えました。
わりと悪役ばっかしやってるロバート・カーライルが一躍ダメ親父の頂点に登りつめた(笑)、ちょっと可愛いオッチャンズ・コメディですね。



 フレンチ・キス  ★★★☆

【1995年 : アメリカ】
 監督:ローレンス・カスダン
 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
 出演:メグ・ライアン(ケイト)、
    ケヴィン・クライン(リュック)、
    ジャン・レノ(ジャン=ポール)、
    ティモシー・ハットン(チャーリー)、
    スーザン・アンビー(ジュリエット)  他

恋人を奪い返しにパリを訪れたアメリカ人女性の旅を描くラブ・コメディ。
青年医師チャーリー(ティモシー・ハットン)との結婚を目前に幸せの絶頂にいたはずのケイト(メグ・ライアン)は、パリに出張中の彼から電話がかかり、突然別れを告げられた。新しい恋をしたから婚約を破棄してくれと言うのだ。にわかには信じがたい彼女は、飛行機恐怖症を必死に克服してパリに向かう。
そんな機内で隣の席に座ったフランス人のリュック(ケヴィン・クライン)は初対面にもかかわらず横柄な男で印象は最悪。実は彼はある盗みを働いた帰りだった。リュックは盗品のダイヤのネックレスをブドウの苗木に隠していたのだが、空港検査を逃れるため、ケイトが眠った隙にそれを彼女のバッグにそっと忍び込ませる。
しかしパリに着いたケイトはカバンを盗まれ、リュックが慌てて取り返すもネックレスだけが行方不明に。
ひとり大慌てのリュックと、そんな事情はつゆ知らずチャーリーの新しい恋人にやきもきして彼を追いかけ続けるケイト。二人のおかしな旅路の行方は果たして・・・?

ひじょーにかわいらしい。メグ・ライアンの魅力大爆発。自分を捨てた恋人を追いかけ回す女の役はこの後も「恋におぼれて」などの作品で演じていますが、それに比べたらこっちのメグのが何倍もかわいいです。(あっちのやり方が怖すぎるともいえる。)
オールフランスロケということで、パリの街並みやら田舎の風景やらがたくさん見られ、軽く観光案内もされてるかもしれないのどかな作品。地元の刑事役でひょっこりジャン・レノが出てきてびっくりします。チョイ役なのに存在感あるんだよなあ、やっぱ。
ヒゲ面のケヴィン・クラインはなんかオッサンに見えますけど、よくよく見るとそうでもないか。寝ぼけたケイトにキスされて、言葉もなくうろたえる様子がキュートでした。エンディングもなかなかよかったな。
ちょっとドタバタだけど、最後はきれいに収まる上手なラブコメです。