6CW5 島田式cspp試作機 U




 前章のカソード抵抗式のCSPP回路は、抵抗による出力のロスが大きかったので、本章では抵抗の代

わりにチョークコイルを用いる方法を試して見たいと思います。このチョークコイルにはインダクタンス

の大きな物が良いのですが、直流磁化は上下のカソード電流で打ち消されるので、小型の物でも足りるよ

うです。そのような物で手軽に入手出来るチョークとしてはPP用のOPTが適していて、2次側巻線を

開放にして使えば最適なカソードチョークとなります。

 そこで下の図のようにカソードにOPTを入れ、バイアス抵抗を変更しました。



 なおこのOPT10P(8kΩ)のDC抵抗が片側で190Ωだったので、カソード抵抗の470Ωと

合わせて、動作上のカソード抵抗は660Ωとなっています。その結果カソード電流は42mAとサーク

ルトロンの場合とほぼ同じ電流となりました。カソードチョーク式は動作電流が任意に選べるので設計の

自由度が上がり、さらに上記のように2次巻線を開放とすれば、理屈の上では1次インピーダンスは無限

大となるので効率も格段に良くなります。この辺りの事は以下の特性をご覧頂きたいと思います。



諸 特 性


 カソード抵抗によるロスが無く

なり最大出力が上がる事は予想し

ていたのですが、その予想以上の

出力が得られました。さらにクロ

スオーバー歪も大幅に減って、中

出力域からの歪率の悪化も緩やか

になっています。

 そのカソード抵抗が並列になる

事により負荷が下がる事も無く、

最適負荷となった結果、全体的な

歪率も良くなっています。


無歪出力12.5W THD2.4%1kHz

NFB  11.8dB

DF=12 on-off法1kHz 1V

利得 25dB(17.7倍) 1kHz

残留ノイズ 0.15mV



 次に周波数特性で、これもカソード抵抗式と同様に高域まで素直に伸びています。ただグラフにすると

目立たないのですが中高音域で微妙に波打っていて(+−0.1dB程度)、これはカソードチョークと

したOPTの周波数特性が影響しているのかも知れません。ただそれも、ミリバルの針を見ているから分

かる事で、聴感上では全く判らないと思います。

 このセットもやはり無補正ですが、10〜240kHz/−3dBの広帯域となっています。




 方形波応答では小さなオーバーシュートがありますがリギンクなどのない整った波形です。ただ負帰還

が増えた為かカソード抵抗式の時よりやや山が高くなっているようです。さらに負荷開放でも小さなオー

バーシュートが残りますが、不安定になる程ではありませんでした。12dB近い負帰還を掛けた広帯域

アンプにしては、きわめて安定していると思います。



 普通の真空管式DEPPアンプだと、高域特性を100kHzまで伸ばせれば好結果というアンプが多

いのですが、サークルトロンや島田式のCSPPだと、200kHz以上まで素直に伸ばす事が出来るの

で、かなり魅力的な回路方式だと思いました。このような広帯域の特性が得られるのも、CSPP方式に

よりOPTの1次2次間の巻線比が小さくなって、優れた特性のトランスが巻き易いというOPT製造上

の恩恵だろうと思います。

 ただ実際に本製作に掛かるとなると、OPTとチョークとで四つのトランスの実装が問題になりますし

カソードチョークも前章の実測電流値にあるように、最大では80mA以上の電流の流せるものが必要で

今回チョークに使った東栄OPT−10P(8kΩ)の最大電流は70mAですから、本当はもう一回り

大型のOPTの方がベターです。あるいは5kΩ用とかの、もう少し巻数が少ないOPTでも良いかも知

れません。(巻数が少なければ、それだけ太い巻線が使えて小型にもなる)ただ、上下のDCバランスが

崩れた時の事を考えると、あまり小さいチョークでは不安が残りますので、カソードチョークの選択につ

いては、まだ検討の余地があるように思います。



 雑 感

 既に述べましたが島田式CSPPアンプを追試するに当たって、カソード抵抗式からチョーク式に変更

すれば、出力ロスが少なくなって最大出力が上がる事は予想していましたが、正直言ってこれ程とは思い

ませんでした。島田先生の元記事では、動作原理の説明図はチョーク式としているのに、実際の試作機で

はカソード抵抗のアンプとして組んでいたので、私もまずカソード抵抗で追試して見たのですが、今回の

追試アンプを組んで見て、チョーク式の方が断然有利と思いました。

 もしも、島田先生が当初からチョーク式で試作機を組んでいたら格段に実用的なセットになって、これ

を追試をする作例も少しはあったろうと思います。この試作機を組む為に既存の島田式CSPPアンプの

作例を探したのですが、ネット上でも雑誌等でも見つからなかったのは、カソード抵抗式のあまりの効率

の悪さが諸先輩方に敬遠されたのだろうと思いますので。




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6CW5 島田式cspp アンプ



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