これらの事から、この二つの方式には特性的にほとんど違いが無く、チョークあるいはOPTの絶縁耐
圧で選ぶというような変則的な選択方式もあるかも知れません。島田式CSPPを組もうと思う時に一番
頭を悩ますのは、市販品に低インピーダンスのOPTが無いという事ですが、この方式ならカソード側に
トランジスター用OPTを使うという事も可能だろうと思います。
一方、島田式CSPPの第三の方式にプレート側とカソード側の両方から出力を取り出す方式もあるの
で、さらに組替えて特性を採ってみたいと思います。
上下両出力式CSPP回路
今までの試作回路のチョークはOPTの2次巻線を開放にして使っていたので、この両出力式にするの
は簡単な変更で済むのですが、トランスの巻線を並列にしたり直列にしたりする場合のインピーダンス値
の導き方は、同じΩで表わす抵抗の計算方法とは違うので注意が必要です。過去MJ誌の執筆者の先生で
も、この事を間違えて製作記事を発表した方がいらしたくらいで、抵抗などの計算に精通した人ほど勘違
いしやすいようです。そこで以下に整理すると・・・
1.同数回巻かれた巻線を「並列」にした場合、インピーダンスは「変らない」。
2.同数回巻かれた巻線を「直列」にした場合、インピーダンスは「4倍」になる。
3.巻数比の違うOPTの巻線を並列にする場合、1次か2次のどちらかは直列にする。島田式CSPP
では1次側が並列になるので、2次側は必ず直列にする。
この巻数比の異なるOPTを組み合わせて使うのは制約が多いようなので、今回は試作機ですし、話を
簡単にする為にも上下のOPTは同じ物を使う事にします。
a.まず東栄のOPTは「8k:8Ω」なので2次側並列では変らず「8k:8Ω」で、
同直列では「2k:8Ω」(8k:32Ω)となります。
b.他方の春日のOPTは「5k:8Ω」なので2次側並列では変らず「5k:8Ω」で、
同直列では「1.25k:8Ω」(5k:32Ω)となります。
このようなインピーダンス変化を考えると、今回の回路には東栄のOPTが良さそうに思えるのですが
結果が思わしくなかったので後ほど述べる事として、まずは春日のOPTを使ったセットをレポートした
いと思います。春日のOPTには6Ω端子があるので、これを直列に接続すると1次側のインピーダンス
は約1.7kΩ(DEPP換算で約6.7k)となり6BQ5の最適負荷の8kΩに近い値になります。
そこで6Ω端子を使うという事で以下のような回路になりました。
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