旧植民地ジンバブウェの混迷(3)

コモンウェルス外相会議、事態収拾に乗出す


今、日本の報道はアフガン対策や外務省問題、あるいは国内景気
対策や大型倒産や合併、さらには凶悪事件などに追われて忙しい。
他国どころではない。日本列島がタイタニックのように自沈しかかっ
ているからだろうが、世界にはまだまだ手を差し伸べねばならない
国が多い。

日本ではあまり取り上げられないUKとコモンウェルス諸国との関係
について、分かりやすい事例がBBCのジンバブウェ報道に見られた
ので、参考までに紹介しよう。
世界を見る時、コモンウェルス(英連邦)の動きを無視できないことを
示している。



疎外よりも関与しようと介入を決議

2002年1月30日のBBC NEWS WORLDによれば、コモンウ
ェルス外相会議(アクション・グループ)(注1)は、ジンバブウェに対
するコモンウェルス加盟の停止(Suspend)処置をいつまでも継続
するのは好ましくないと決議した。
しかしムガベ大統領には同国内を荒廃させている政治的な暴力行
為は止めるように強く要請することとした。

Commonwealth foreign ministers have decided not to recommend
that Zimbabwe be suspended from the organisation, but they
have urged President Robert Mugabe to end the political violence
ravaging the country.

同時に3月に行なわれる予定の大統領選挙に、国際監視機関の設
置を早急に認めるよう呼びかけた。

The ministers also called on Zimbabwe to allow the immediate
deployment of international observers ahead of presidential elections
in March.

しかし、加盟停止をしばらく継続しようと考えていたUKには頭の痛い
決議であった。
(ここらが外交問題の面白いところである。)

The outcome of the meeting in London was a blow to UK Foreign
Secretary Jack Straw, who had hoped to have Zimbabwe suspended
from the Commonwealth

(注1)参考までに、現在のアクション・グループはUKのほかにカナダ、
    オーストラリア、バングラディッシュ、バルバドス、ボツワナ、マ
    レーシヤ、ナイジェリアの8カ国で構成されており、コモンウェル
    ス加盟国の監視機構の役割を果している。
    議長はボツワナのメラフェ外相であるように、必ずしも大国が
    議長ではない。

「我々加盟国の喫緊の関心事は自由で公正な選挙を進めることで
ある」
(注2)
"The issue that is on the table at the moment is to ensure that we
have free and fair elections," said Botswana's Foreign Minister
Mompati Merafhe, who is chairman of the Commonwealth Ministerial
Action Group (CMAG).

(注2)コモンウェルス加盟国が、軍事クーデターや暴力的あるいは非
    民主的選挙で政権を取った場合には、参加が停止される。
    コモンウェルスへの参加はあくまでも民主的政治国家である
    ことが前提となっている。

「実際いろいろ懸念もあるだろう。誰にでも反目している政策に関与
するに適切な時機だという自信はない」
とメラフェ議長は述べている。
"There are indeed other concerns... (but) we do not believe this is
the propitious time to try and engage in a policy of antagonism
with anybody."

こうした自由で公正な選挙が行なわれるには、公正妥当な報道の自
由も必要な前提条件になる。ところが、先般議会で承認された安全
法と現在同国の議会に上程されているメディア法の二つの新法はジ
ャーナリズムの規制に繋がっていると議会内外で揉めている。
メディア法に反対するジャーナリストの抗議デモは、警察に蹴散らさ
れたとBBCは報じている。

アクション・グループも懸念を表明した。
The CMAG also condemned a recently passed security law and a
media bill which is currently being debated in Zimbabwe's parliament.

コモンウェルス外相会議アクション・グループは、オーストラリアで開
催されるコモンウェルス首長会議の前日である3月1日にもう一度集
まり、政治的な暴力行為があるかどうか(選挙体制やジャーナリズム
への対応など)を見て、ジンバブウェにコモンウェルス参加停止措置
を続けるかどうか、検討するとのことである。

Mr McKinnon also said that the action group would meet again 1 March,
the day before the opening of the Commonwealth Heads of Government
Meeting in Australia to consider possible suspension if the political
violence in Zimbabwe continued.
(注3)マッキノン氏はコモンウェルスの事務総長である。


以上のBBC報道に見られるように、コモンウェルス53ヶ国は、極め
て密接に連絡をとり、そのアクション・グループが権威を持って、真
剣に加盟国あるいは停止国のことを討議し、献策し、実行している
ことが分かる。

コモンウェルスの外相たちは、問題国を疎外するのではなく、関与
の手を差し伸べようとしている。

米国以外に盟邦を持たぬ日本の孤立外交と対照的である。
皆さんはコモンウェルスの活動をどう思いましたか。



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