ペーパー・タイガー
(前頁より)



『ペーパー・タイガー』とは「張り子の虎」のことである。



三船敏郎扮する東南アジア某国駐在日本大使の子供の家庭教師と
して、もと英国将校であったというデビット・ニヴンが雇われる。
家庭教師は少年に戦の経験を語って聞かせ、威厳をもって少年を指
導する。
少年は尊敬と信望の眼で、元英国将校という家庭教師に接する。ここ
らあたりは、デビット・ニヴンは三船敏郎同様に、風格のある退役軍人
役がなかなかうまい。

こうした折り、二人は反政府ゲリラに誘拐され、密林の奥深く連れ去ら
れてしまう。息子の身を案じて大使は懊悩するが、いかんともしがたい。

少年は元将校というデビット・ニヴンを信頼しているのだが、実は経歴
詐称であった。
軍隊の経験など全くない気弱な男であった。つまり、「張り子の虎」で
あった。
しかし自分を信頼し尊敬している純粋な少年を、この危難のなかで助
けねばならない。デビット・ニヴンは必死で脱出を考え、二人は力を合
わせ無事脱出に成功する。



少年がをさらに崇敬の目で見るようになった。デビット・ニヴンは三船
に事実を打ち明け、家庭教師の資格がないと辞意を申し出る。
大使の三船は初めから軍人経歴がないことを承知していた。少年の
夢を壊し落胆させないよう、引き続きこのまま留任を希望するのであ
った。

映画としては娯楽性の強いドタバタ劇の、凡作であるかもしれない。
しかし憶良氏には、デビット・ニヴン演じる偽退役軍人の演技が、いつ
までも印象に残った。



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