ロンドン憶良見聞録

二つのレガッタ


ロイヤル・オペラ・ハウス、ロイヤル・ダルトン(陶磁器)、ロイヤル・ブリ
ティッシュ・ミュージアム等々、英国で「ロイヤル・何とか」とタイトルがつ
いているモノには、一目置いた方がよい。
賭博の花形である競馬にも、あでやかなロイヤル・アスコット(王室アス
コット競馬)があるように、伝統的スポーツであるボートの競漕大会(レ
ガッタ)にも、ロイヤルと名のつく優雅なものがある。

こういうと、戸田のボート・コースや荒川、瀬田川で活躍されたオアズメ
ンの方々から
「俺も永年ボートをやったが、奴隷船を漕いでるようなもので、土手雀の
応援もわいわいがやがや、レガッタに優雅なものなんてないよ。憶良よ、
いいかげんなことを言うな」
といきまかれるかもしれない。ごもっともである。

憶良氏とて若い頃エイトのコックス(舵手)であったから、悲愴感溢れる
日本の大会の様子は幾つか経験している。荒天の日に行われた定期
戦の最中に、メタンガスが沸き塵芥がプカプカ浮かぶ隅田川で、残念
無念の沈をしたこともある。
一般論としてはボートは「優雅とは対局の世界」である。

そこで、典型的な二つのレガッタを取上げて、読者諸氏とともに、スポー
ツ大会などのエンターテインメント(催し物)の楽しみ方を少し考えてみた
い。それはどうやら近代日本人に欠けている「ゆとり」の精神を再考する
好個の材料となりそうだから。


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