ロンドン憶良見聞録

悲しきポピーの日



「ただいま」
いつもなら明るい声でにこやかに迎えるはずの美絵夫人が、今日は何か
沈んだ顔付きでドアを開けた。
美絵夫人の目から、みるみる涙が溢れ出た。

「今日はポピーの日でしょう。マーケットの端でご老人の方が、ポピーの赤
い花と募金箱を抱えて立っていたの。私の父も戦死してるでしょ。だからご
遺族の方か退役のベテランでしょうけど、戦没者の家族の悲しみは分かる
ので、寄付をしようと思ったの。でもそのご老人は険しい目付きで私を睨み
くるりと背を向けてしまったの。 それがとっても悲しくて・・・」

ポピーの日とは11月11日、英国の戦没者慰霊記念日(メモリアル・デイ)
である



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