落ち葉は焚かないで
(前頁より)



ちょっと二階へ上がってハムステッド・ガーデン・サバーブの丘を見よう」
「緑が多く空気が澄んでいるねえ」
「煙がちっとも立っていないだろう。実はこういうことがあったんだ」
憶良氏は一家が入居して間もないある日の出来事を彼に話した。

憶良氏が庭の落ち葉を掃き集め、焚き火をしようとまさにマッチを擦ったとき、
お隣のドロシー小母さんから声がかかった。
「ちょっと待ってダイスケ、落ち葉は燃やしてはいけないのよ」
「どうしてですか?」
「落ち葉を燃やすと煙るでしょう?こんな天気のよい日には、あちこちの家で
窓を開けて、いい空気を入れているでしょう?だからお互いに不愉快な思い
をしないように気をつけあって、落ち葉を燃やさないことにしているのよ」
「よく分かりました」
「枯れ葉はビニール袋にいれてゴミ収集に出すとよいわ」

かくして、景観保護はまず「落ち葉は焚かない」ことから始めることを教わった。
なるほど慣習法の国である。
 



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