UKを知ろう


北アイルランド紛争遂に終結


地方政府組閣、南北閣僚会議も開催さる




現代の宗教戦争の様相を呈していた北アイルランドの紛争は、遂に
終結を迎えた。



12月1日、エリザベス女王は英国議会に北アイルランドへの地方分権
の検討を命じ、議会は12月2日これを可決した。
12月2日、トリンブル氏が初代北アイルランド地方政府の首相となり、
組閣された。
閣僚の席は国民投票の得票数で配分されているが、プロテスタント、
カトリック半々である。

首相            David Trimble (Ulster Unionist Party)
副首相      Seamus Mallon (Social Democratic and labour Party)

企業貿易投資相    Sir Reg Empey (UUP)
環境相          Sam Foster(UUP)
文化芸術レジャー相  Michael McGimpsey(UUP)

金融人事担当相    Mark Durkan(SDLP)
高等教育訓練雇用相 Sean Farren(SDLP)
農業地方開発相    Brid Rodgers(SDLP)(女性)

地域開発担当相    Peter Robinson(Democratic Unionist Party)
社会発展担当相    Nigel Dodds(Democratic Unionist Party)

教育相          Martin McGuinness(Sinn Fein)
健康社会サーヴィス相 Bairbre de Brun(Sinn Fein) (女性)

これにより北アイルランドは新教旧教半々の内閣で地方分権にスタート
したが、プロテスタントの最右翼Democratic Unionist Party代表の二名は、
最初の閣議に出席しなかった。
IRAの幹部と称されているMartin McGuinnessが入閣していることと、IRA
はまだ武装解除をしていないからということらしい。





12月13日のBBC NEWSでは、北アイルランド自治政府の閣僚10名と、
アイルランド共和国のBertie Ahern 首相以下15名閣僚の共同会議がア
イルランドの中世教会都市Armaghで開催されたと報じている。



これは北(プロテスタントとカトリック)と南(カトリック)が政治上の協調につ
いて意見交換した歴史的会議と評価されている。

さらに両国の合同委員会"Cross-border Bodies"も組成され、「何人も恐怖
に曝されることなく、誰にでも便益があるような方法で」
(in a way that threatens no-one and benefit everyone)かつ、コンセンサス
をベースに共同運営される予定である。

北アイルランド新政府のマロン副首相は、
「我々は、新しい政治構造や技術や意思疎通が境界(という概念)を壊し、
人々をお互いにより緊密にしている変革の世界に生きている。今日のグロ
ーバルな世界では、アイルランドは小さな場所である。アイルランドが発展
をするには、(南北の)連携が必要である。」
と、格調高く述べている。

(We live in a changing world where new political structures , technology
and communications have broken down barriers and brought people closer
together.Ireland, in today's global world,is a small place.
It needs partnership if it is to prosper.)



1999年12月、激動の20世紀が幕を閉じようとしている時、21世紀に向
けて北アイルランドの和平と地方分権の二つが実現したことは喜ばしい。
プロテスタント最右翼の民主統一党の二閣僚が、依然として出席していな
いなど前途は多難であろう。
しかし、宗教や政治の立場の相違を越えて、平和な時代を構築されんこと
を、地球人としての立場で祈りたい。

今回の和平成立の過程に感じた事がある。
第1点は、当事者がそれぞれ大きな譲歩をしたことである。
UK政府は直轄統治から一挙に地方分権に切り替えた。
アルスター統一党はIRAの武装解除前に、その声明を信用した。
カトリック側は、UK政府を信用しIRAの武装解除を約束した。
アイルランド共和国は、北アイルランドは自国であるという主張を憲法から
削除した。

第2点は、アイルランドからアメリカに移民したカトリックの子孫の影響力が
極めて強いことである。
IRAへの資金や武器が在米カトリックからの寄付によることは、映画「Devil's
Own」で描かれている。
同時に政治的にも大きい事は、今回のミッチェル元上院議員の仲裁で明瞭
である。
アングロサクソンやケルトの連携は、国を越えて密接である。
アイルランド系アメリカ人にとって、アイルランドは第2の祖国なのである。

日本に内紛が生じた時、誰が親身になって仲裁してくれるだろうか。
私にとって北アイルランド問題は民族と宗教について深く考える機会であ
った。



UKを知ろう(目次)へ戻る

ホームページへ戻る