ハイ・テーブル

(前頁より)



食堂の奥が少し高くなっている。ここにあるテーブルには教授や講師
たちが座る。いわば貴賓席である。サマー・スクールの講師たちは、出
身銀行に帰れば、錚々たる人たちである。例えば、憶良氏のクラスの
講師ピーター・アードロン先生は、バークレイズ・インターナショナルの
副社長クラスで、シティでは顔利きの名士である。

日中のセミナーは、ラフな格好でよいが、夕食の際には必ず背広を着
なければならない。ここらのメリハリはなかなかのものである。
銀行協会の名士や講師に交じってハイ・テーブルで食事をする機会が、
セミナーの生徒たちに順番に与えられた。

憶良氏の順番も回って来た。食事をしながら、歓談するのであるが、こ
の日ばかりは憶良氏も耳と脳味噌に血が集まって、料理を味わうどこ
ろではない。
なにしろ異文化の経済発展国である日本には質問が多い。



多分オックスフォードの新入生たちも、何人かずつハイ・テーブルに呼
ばれて、学識経験豊かな教授たちの厳しい質問に答えつつ、ステーキ
を胃に落としこみ、心臓を鍛えているのであろう。
大学食堂のハイ・テーブルは、学生たちに大人の社会教育を行う格好
の場になっている。



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