ゴルフするならキャディから
(前頁より)



日本から若手が一人着任した。最も喜んだのは若い山辺壮太君で
ある。
「憶良次長、本日着任した諏訪村君です」
「スワムラクン、まあスワりたまえ。支店長のお話はお聞きしたかね」

「ハイ、ロンドン支店の役割は、第1に外国為替国際金融の仕事をこ
なすこと、第2に情報を収集し本店に報告すること、第3に内地各店か
ら紹介されてロンドンに来られるお客様を丁重にもてなし気持ちよく帰
国していただくことと伺いました。
第1と第2は当然と思っていましたが、第3の役目も大事だという点に
は予想外で少し驚きました」
「ロンドンに来られる方に初めての方も多い。限られた時間の中で出
来るだけご希望をかなえてあげることが、ホスピタリティというものさ」

「ところで諏訪村君はスポーツは何かするのかね」
「ゴルフを始めたばかりです。安いと聞きましたので楽しみにしていま
す」
「こちらはね、どこもセルフだ。コースに出る前に必ずこのマナーブッ
クを読んでおくこと、それに最初は僕のキャディをすること」
「諏訪村君、若手はみんな一度憶良先生のマナー実地講義を受け
るのさ。この頃日本人ゴルファーのマナーが悪くなって、一部のカン
トリー・クラブでは締め出しをくっているんだ」
「分かりました」
「いやいや、僕とて人に教えるほどの知識経験がある訳じゃないがね、
次長の職責上こうした生活指導もするのさ。口やかましいと思うなよ」




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