UKを知ろう


プリンス・オブ・ウェールズ二つの話題

Prince dogged by hunt issue
(狐狩問題で追っかけられる皇太子)




11月1日のBBC NEWSは、チャールズ英国皇太子について二つ
の話題を報じている。

狐狩問題では厳しい論調の中にも、ちょっとユーモラスな英語の表現
があり、また皇太子には何か深い考えがあるやとも見られる。

The Prince's Trust(皇太子信託基金)では、日本では知られざる皇
太子の一面を紹介してみたい。


狐狩問題で追っかけられる皇太子

UKの上流社会では馬や猟犬で狐を追い出し、最後は猟犬に噛み殺
させる伝統的な狐狩が今も行われている。
余りにも残酷であると、この狐猟を禁止する法案を、ブレア首相は近々
議会に提出すると年初に発表している。 ところが10月下旬の週末に、
皇太子はウィリアム王子とヘンリー王子を誘って、狐狩を行った。

早速動物愛護連盟などから「皇太子はけしからん。国民感情を無視し
ている」と、この問題が追求される羽目になった。
狐を犬に追っかけさせる狐狩問題で、逆に追求される状態を「dogged」
とはユーモラスな巧い表現である。
辞書を挽いてみると「keep close behind,in the footsteps of」とある。
まさに後ろにぴったりくっつかれた状況である。



ごうごうたる非難の中で、皇太子に味方もいる。
馬と猟犬の雑誌「HORSE AND HOUND」の論説者は、
「チャールズは一介の田舎者だよ。彼は問題が何かを承知でやってい
るのさ」(Charles is a countryman.He knows the issues.) と述べている。

王とか皇太子とかいっても、もともとはノルマン・ヴァイキングの末裔で
ある。
駿馬に乗り、野山を駆け巡って猟をすることが似合いということだろう。
皇太子が狐狩禁止法案の上程を知らないわけはない。皇太子にとって
は、狐狩は伝統的な狩猟であり、単純に全廃はいかがなものか、伝統
や慣習の維持保存も考えて見る余地があるのではなかろうかという考
えではあるまいか。

皇太子は自然や文化遺産保護のためのNational Trust運動の積極
的な推進者として活躍されている。
遺伝子組換え問題では、積極的に反対を表明している。
また先般は江沢民主席の歓迎パーティに「先約があるから」と出席しな
かった。天安門事件の人権問題に対する皇太子の抗議とも解釈されて
いる。

気骨のある皇太子のことゆえ、狐猟を禁止する法案の成立の前に、
社会の非難を承知の上で、二人の王子に伝統的な最後の狩猟を体験
させたのではあるまいか。


乗馬や猟犬の飼育が盛んなUK(特にイングランド)では、狩猟の禁止
は地方経済や農業などにも影響するようである。

11月11日のBBC NEWSでは、来年春までに、狩猟がよいかどうか
ではなく、失業問題や野生動物の疫病、自然環境保護なども含めた
多角的な質疑応答のアセッス期間を設けた上で、議員立法
(Backbencher's Bill)として上程される予定と報じている。

スコットランド議会では問題なく成立しそうであるが、イングランドとウェ
ールズの議会ではどうなるか、結構白熱の論戦が展開されそうである。

考えて見れば、人間そのものが牛馬を殺して食っている残酷な動物で
ある。
王侯貴族の狐狩は、時代に合わない残酷な伝統かもしれないが、
スペインで闘牛が残っているように、英国の田園風物詩の一つとし
て残してもよいのではいう気がしないでもない。
いずれにせよ、来年春には法案は決議にかけられる。
皆さんはどちらになると思いますか。


女王、皇太子信託基金の活動に最大級の賛辞

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