ロンドン憶良見聞録

これがほんまの運天(?)テスト


憶良氏の自動車練習は好調に進んでいた。なにしろこの国では、自分
の自動車で練習し、自分の自動車でテストを受けるのである。
「ウッソー」と叫び出す女性読者もいようが、それが事実なのである。
少し冷静に考えてみれば、日本のように実際に乗る車と練習する車と
が違うのはおかしなものである。

「免許を取っていないのに、ゴールダスグリーン・ドライビング・スクール
までどうして行けるの?」
との質問が出よう。そこは大人の国である。野暮なことは聞くものでは
ない。そのためにこそ仮免(Lマーク)が最初からあるのだ。

運転の練習は、初日からすべて本当の道路ですることは、前に説明し
た。
島国だから教習所にする土地がないのではない。箱庭のような教習所
での練習より、実際の道路ですべきだという現実主義のコンセプト(概
念)が徹底しているからであろう。
当然、実地試験のコースは町の中の道路そのものである。
コースはいくつかあるようだが、どのコースを選ぶのか、それは当日の
試験官の気分次第である。

ジャック先生は、長年の経験と勘から彼らのテスト・コースを予想し、憶
良氏にいくつかの予想コースを慣れさせて来た。これらのコースには商
店街あり住宅街あり、ラウンド・アバウト(ロータリー式交差点)あり、さ
らには高架道路への出入りも組み込まれている。



「ミスタータチバナの腕前も急速に上がったから、そろそろテストを受け
ても大丈夫合格しますよ」
「腕前も・・・」と言うのは訳がある。
練習の最終段階になると、ジャック先生が意地悪い試験官の役で、
「これから4っ目の角を左に曲がれ」だの、
「高架道路にどう入って、どう出よ」
などとやっかいな指示を早口でいう。
つまり試験官の英語のヒヤリングがキャッチ出来ないといけない。
耳も腕前もまあまあいけるとの先生の判断である。


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