シティはしたたか
(前頁より)
「ポンドは弱くドイツのマルクが強くなっているのに、なぜフランクフルト
が世界の金融の中心地になれないの?」
「世界を動かしているでアラブ・マネーは、バーレーンが中心じゃない
の?」
「パリはロンドンより素敵な街なのに、どうして金融の中心地になれな
いの?」
「シンガポールはどこまで発展するの? ロンドンのように世界の中心
になるの?」
「スイスのチューリッヒには世界の匿名資金が続々集まるって聞いたけ
ど?」
「台湾は外貨準備で世界の1・2を争うとか。台北はどうですか?」
読者諸氏から国際金融都市について、いろいろな質問が出るだろう。
憶良氏は、大規模な国際金融の中心都市になれるかどうかの条件を
こう考える。
- 第1に経済的条件
- 世界の物流取引の中心地か。国の経済規模は大きいか。
土地代、賃借料や税金が高くないこと。物価水準が妥当なこと。
- 第2に地理的条件
- 気候が温暖であること。特別暑かったり、四季に変化のないとこ
ろは難しい。
交通が便利であること。国際航空便乗り入れの連絡が便利か。
本数が多いか。所在地が外れでないこと。都市が政治の中心と
離れていないか。
- 第3に言語的条件
- 世界各国でよく使われている共通言語である「英語」が使われ
ているか。
- 第4にメディア条件
- 新聞・テレビ・宇宙通信・ファックス・国際電話など通信情報伝達
の機構ができあがっているか。報道・連絡は自由で、特別制約さ
れることはないか。
- 第5に政治的条件
- 国際政治の中心のひとつか。国際政治、国内政治両面で安定
しているか。
為替管理法などの法的規制が厳しいことはないか。
- 第6に文化的条件
- 他国人から尊敬される歴史・文化・芸術・芸能を持っているか。
子女教育の水準が高いか。それを他国人が享受できる環境に
あるか。
- 第7に宗教的条件
- 宗教的制約が日常生活や商取引を規制し過ぎていないか。
- 第8に社会環境
- 他の民族、他国人を受け入れることに国民が慣れているか。
治安がよいか。(夜遊びの嫌いなビジネスマンはいない)
インフラ(社会生活の基盤)が整備されており、家族が生活を
送りやすいか。娯楽・飲食・スポーツ・旅行などリラックスでき
る幅がひろいか。堅苦しすぎる都市ではないか。観光地に恵
まれているか。
こうした条件を見ると、憶良氏が経済外要因を多く挙げていることに
気がつかれるであろう。
生活するのは人間であって、お金ではない!

フランクフルトは地理的な制約があり、ドイツ語は国際言語ではない
という不利な面がある。
フランス語は世界の上流社会の言語であるが、国際語でもビジネス
語でもない。
パリは金融ではなく文化・芸術・政治の街として世界の中心的地位
を保持するであろう。
地域的な金融都市となりえても、国際的中心としての条件を充足す
る都市は意外に少ない。
ニューヨーク、ロンドンは、さすがに多くの条件をクリアしている。
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