爆弾仕掛けたよ

(前頁より)



しかし本当に爆発し、何人かの死傷者がでることもあるから、判断が
難しい。
「支店長、一時避難しましょう」
「避難したい者は避難すればよい。俺は動かないよ。爆弾騒ぎを恐れ
て仕事ができるか」
「万一ほんとに爆発したら大変ですから、避難していただけませんか」
「俺は命が惜しくないから、このまま仕事を続ける。どうせ偽電話に決
まっとる」

邦人行員たちは、仕事をしているふりをしながら、支店長と憶良氏の
やりとりに聞き耳を立てている。
電話の内容を知った英人行員たちは、立ったり座ったりして憶良次長
の避難命令を待っている。窓辺に近寄って外を見ている者もいる。周
りのビルからぞろぞろ従業員が出て来て、爆風の来ない方に移動して
いる。

支店長と行員の間にたって、オロオロするわけにはいかない。まして
やIRAの時限爆弾で無駄死にはしたくはない。
現に、IRAの封書爆弾(レター・ボム)ではバンク・オブ・イングランドで
も行員の死傷者が出ていた。

「分かりました。それでは私は行員を率いて避難します」




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