第10部 
私の講評メモからの抜粋 

 

 
 前に述ぺた九校の講評を読み返しているうちに、自分として、まだまだ言
い足りないことがあるような気がしたので、ここ三年の間に審査を担当した
舞台の講評を読んでみました。

 約九十校分の講評メモには、同じことが繰り返し書かれているものもあり
ましたし、劇を見ることでハッと気づいたこともありました。普段、自分が考え
ていることや感じていることが、劇を見た瞬間瞬間の言葉としてメモされてい
るのです。その一行一行について詳しく説明しないと、誤解を招く部分もある
かもしれませんが、どんどん抜き出してみました。

 劇のスト‐リーに直接関係するものや、劇を知らないと何のことかわからな
いものについては割愛しましたが、それにしても、同じようなことを感じている
ものですね。重視するものはできるだけまとめるようにしましたが、自分でも、
こんなに沢山あるとは思いませんでした。

 読み返しているうちに、その内容について、自分の考えをまとめたい部分が
あったので、この節の終わりにつけ加えることにしました。

 本来なら、いつ、どの高校の、何という劇を見たときの感想なのか説明しな
がら書きたいところですが、繁雑になるのでやめました。また、今回述べてい
る他にも、まとめたいものがありましたが、紙面の関係でカットしました。

 舞台を見ないことには、なにを言っているのかわからないというのが多いと
思いますが、私が考えているなにかを感じとってもらえれぱ幸いです。

 

 講評メモの抜粋

     
☆なぜ演劇をやるのか
     ☆
脚本の内容
     ☆
演出面からみると
     ☆キャストについて
     ☆
スタッフについて

※[なぜ演劇をやるのか]

・虚構の世界で真実を表現する  

・今、なぜこの劇を上演しようと思ったのか

・なにに共感したのか  

・「いま、ここで、私が」が大切

・自分達のこととして考える姿勢と意欲good

・難しいことに挑戦する姿勢good     

・冒険することも大切

・演劇は人を変える                      

・演劇は人を育てる

・演劇は自分さがし




※[脚本の内容]

・言葉をつなげていけば劇になるとはかぎらない

・都合良い展開は嘘を感じる          

・スト‐リ‐を劇にするな

・話を全部出すとダメ                     

・起承転結を無理して作らなくてよい

・わからないとイライラするが、わかりすぎても面白くない(観客ぽわがまま)

・二十分過ぎてもなにも起こらない

・意外な展開(観客の想像を越えた展開)good

・意外性はいいが、そうなる必然性がほしい

・状況説明と主張はあるが、情が感じられない

・安易なハッピ‐エンドは面白くない       

・安易な解決つけないのがいい

・「話に感動」ではなく「人の心情に感動」したい

・同じ種類の人物だけでは、味が足りない

・人を描いてほしい                     

・人間を描くとき一面的にならないように

・状況をしっかり作ったうえで、その上にのっかっている人間を描くこと

・これを書こうとしたのはなぜか?

・自分たちの周囲 (社会)に目を向け、フッと感じたことを劇にしたことgood

・この劇をやることで、自分達が変わったか

・「ゆめおち」芝居は現実感が出てこない

・時代からのメッセ‐ジを感じる

・手法は「人を描くための手法」であるべき

・手法が目だって人物が薄くならないように

・劇を書くとき、切り口捜しが大切   

・議論や解説や演説はするな

・心情を説明するな           

・理由を舞台で説明しすぎないように

・議論し合う(話し合う)ことで分かりあう

・-----‐本当かな

・モノローグで心情や状況を説明しないこと

・ナゾ解きを語りでやるのはナンセンス

・議論や主張ではなく、姿を見せてほしい

※[演出面からみると]

・脚本を越えてほしい

・原作を越えること

・何を本当に間題と感じているのか、しっかり感じて演じてほしい

・脚本の選び方と、テ‐マのとらえ方

・「わかる」ということ

・理屈で「わかる」のではなく、心で感じることが大切

・「アッ、わかった」と言わないで、わからせてほしい

・納得できるまで調べること

・分折と解釈をしっかり

・「まあいいや」はダメ

・「まあいいや」にならないこと

・「なんとなく」「言われたから」「このぐらいでいいだろう」はダメ

・納得してやってほしい

・セリフとセリフの間を読み取る

・リアリティのあるとらえ方をすること

・脚本と挌闘し、劇と相撲をとれ

・感覚やフィ‐リングだけで作るな

・時分たちだけがわかる時分たちのおもいだけで作られると観客は不満

・必然性をしっかり把握して

・リアルなものをしっかり作れる力がほしい

・パワ‐のある舞台が見たい

・しっかりしだ舞台と矛盾しないように

・重いテ‐マの時、軽さがほしい

・明るい内容の時は、影がほしい

・舞台の位置関係で力関係を表す

・リズムが一定になると単調になる

・パランス感覚が大切

・人物間のバランス、位置関係、スタッフとのバランス、等

・演出ははじめからがんぱるな

・おもいいれを強くしないで、整理して演出する

・笑いのレペルを考えてほしい

・話が相手に通じないもどかしさが、劇を盛り上げている

・人が変わる様子がよくわかる

・人間が変わっていく様子を見るのが楽しみ

・台本をなぞった作りはしないこと

・スト‐リーをなぞるのではなく、内面を膨らませてほしい

・あるテンポで、脚本をなぞる形でどんどん進むと、心理的に観客はおいて
いかれる

・パワ‐は感じるが、オ‐バーな演技と絶叫調の話し方のため会話が
成立していない

・サラッとした感じで上品にできてるためか、厚みや深みが感じられない

・瞬間の面白さの積み重ねだけでは、全体の重さが出てこない

・形を決めてそれにみんながはまると、まとまるけどはじけることはできない

・存在感のある人物を作った上で、軽いあつかいの演出をするならわかる

・演技は生きているが、心にヒッカカルものがないまま進んでいる

・ハッとさせ、感じさせ、今を考えるエネルギーを与えてほしい

・ハッとすることの積み重ねがほしい

・恐さをジワ‐ッと伝えてほしい

・心の叫びを表現してほしい

・セリフがなくてもよく伝わってくる舞台でした

・テンポがのろい

・「たたみかけ」ほしい

・その場、その時のポイントほしい

・心情の表現には間が大切

・古い脚本に新しい意味を持たせて表現している舞台

・時代の持つ恐さを感じさせてほしい

・計算されているが、計算しすぎの点あり

・演出がきいている

・等身大の舞台

・線が一本はいっている

・リアルなものをやれる力をまずつけてほしい

・キチッと作っているが、キチッとしすぎる

・やりすぎないように、境を越えないように

・客席と舞台との呼吸を感じる

・さわやかな風が吹いた舞台

・ひきこまれる舞台になっている

・ふっきれた舞台でした

・はじけた舞台でした

・いい風が感じられる

・透明感を感じる

・メッセ‐ジがよく伝わってきた


※[キャストについて]


・「ことぱ」を大切に

・ことぱを通した心情を大切に

・セリプはつぶだてて

・セリフとセリフの間に詰まっているものを大切に

・自分たちの言葉で話そう

・作った言葉は不自由だ

・討論するな

・喋るとき、自分の呼吸で話さないこと

・気持ち良く喋っているとき会話でなくなる

・台詞を雰囲気やリズムで話すな

・セリフが言葉として生きてほしい

・セリフは声を出すだけではない

・セリフを引くことも覚えること(pp〜ffまであるのだよ)

・セリフにもpp〜ffまであってよい

・ささやきを生かす作りがほしい

・言葉が耳にやさしい

・セリフがつきぬけてくる

・発声練習は形にはまるな

・形にはまると内容がなくなる

・人と人との距離が離れ過ぎると、会話が会話でなくなる

・言葉のキャッチボ‐ルの前に、心のキャッチボ‐ルを大切に

・納得して、その心情になったから、言葉が出る

・言葉は、相手にぶつけるのではなく伝えるように

・叫んだからといって、迫力が出るわけではない

・叫ぶと言葉にならない

・絶叫調は聞きにくい

・話し方や演技がパタ‐ン化すると、不自然になる

・ト‐ンが高くて、一色になっている

・喋りのトーンが高いと、聞いていて疲れる

・キャスト全員声のトーンが高くて疲れる

・類型的な喋り方やめよう

・喋りが流れている

・ことばが流れている

・セリフは対話です

・言葉を伝えるのではない、言葉で伝えるのだ

・言葉が伝わるのではない、心が伝わるのだ

・動くな、喋るな

・「どうしても」という部分で動き喋ること

・掃除のリアリティ‐ほしい

・舞台奥の演技は損をする

・空間が広いと人間関係が散漫になる

・立つ位置によって、人間関係を感じる

・無対象動作はしっかり

・泣きたいときには泣くな

・泣きたいときには笑え

・泣きたいのを我慢している姿を見て、観客は泣きたい気持ちがわかる

・思いではサラッと

・「思い出」の時、思い出に浸るな

・表情豊かだけれども、おもいいれが強すぎる

・力を抜いて力まずに

・力がぬけていてgood

・楽になると自由になる

・伸ぴ伸ぴした演技good

・はずみで演技をしない

・納得してやろう

・わかっつもりでなく、わかってやってほしい

・予定した動きは嘘を感じる

・演技の必然性

・人物が登場するには、それなりの理由がある

・あなたはなぜ登場するのか、その理由をはっきりつかまえること

・納得できるまで調べよう

・うまくやろうとするな、芝居をするな、作るな、演じるな

・「うまい」や「うける」ことと「いい劇」との関係を考えること

・いい劇とはなんだろう

・足がしっかり地についている

・まじめに遊んでいても「遊び」が伝わってこない

・力が抜けていて見やすいが、流れていて軽すぎる

・笑いのための笑いではダメ

・ドタドタが気になる

・目線をしっかり

・「わかったよ」−−−本当にわかったのか

・本当のことを話したからといって、不当に分かってもらえるとはかぎらない

・台詞で「こわい」と言わずにこわがってください

・演枝が中途半端

・言葉の中にある味を出してほしい

・自分が話す言葉に責任を持つこと

・セリフは言う人だけのものではない

・セリフのない人の演技大切

・形を作ることでキャラクタ‐はできだが、それを壊すことで成長してほしい

・「形から心へ」

・「心から形へ」


※[スタッフについて]


・装置の目的は「世界を作り、空気を作り、風を起こすこと」

・家があり、人がいて、生活があって、心のやりとりがあるのです

・家全体の間取りの一部がこのセットなのです

・装置に生活を感じる

・季節を感じる

・装置に雰囲気あり

・装置がものをいう

・中割でせばめた空間good

・袖せぱめた舞台good

・広い舞台を広く使うな

・視点が散漫になる

・この部屋の存在感、実在感ほしい

・装置のアイデアはいいが使いきれていない

・セットの隙間気になる

・雲が動かないのがいい

・省略舞台は生活が感じられない

・抽象的装置はいいが、洋間か和室かわからない

・暗転処理は損をする

・暗転の時、足音しないのがいい

・照明で舞台空間をつくったことgood

・終わった後「照明、音響よかったよ」ではダメ

・「演劇は総合芸術」というが、芸術を見せるな、人を見せよう

・舞台の人物を生かすように使うのだ

・照明、音響や歌、踊りが前に出ないように

・照明や音のタイミングは、観客の呼吸に合わせて

・照明や音響で心理を表すな

・心情を表すな

・人を見せてほしい

・BGMや照明で舞台を殺すな

・幕開けのBGM、語りのじゃま

・SE強すぎて、台詞が聞こえない

・照明をいじらない効果、音響を使わない効果を考えてほしい

・同じ服装のとき、なにで違いを出すのか

・衣装の関係で暗転に時間がかかったが、工夫してほしい

・衣装と装置の色が似ているので損

・おもちやのピストルを、劇の中で「おもちやのピストル」として使うのは難しい

・靴のコツコツ、効果的な場面はあるが、全体としては邪魔

・モノロ‐グのとき、SE入れるな照明変えるな

・ショパンのノークターン、越える舞台でないと負けてしまう

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