宮城県古川女子高等学校演劇部 作 |
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タペストリー @ |
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登場人物 | |
沢村 和(なごみ) | 高2 盲腸 |
橘 美晴(みはる) | 大3 20歳 胃潰瘍 |
片桐 桂 (けい ) | 中3 腸壁嵌頓ヘルニア |
看護婦1 東村山 | 主任 |
看護婦2 西崎 | 元気 |
看護婦3 南野 | 新米 |
美晴の母・雪乃 | |
長谷川蛍(ほたる) | 小4 移植を受ける |
蛍の母 | |
安藤のり子 | リポーター |
オープニング | |
ダンス―――編みこまれてゆくタペストリー | |
一人が一人と出会い二人になりまた出会い三人になり、重なり合いまた一つになる。 一つのいのちが二人をつなぎ、二人は同じいのちを生き、でもそれはそれぞれの果てしないいのち。 いろんな人のいろんな患い、生まれては複雑に絡み合う。 しかしそれは案外単純な色かも知れず。けれど深みを帯びているのに違いなく。 そして織られていくタペストリー。 |
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と、一人の少女が、腹を押さえて、倒れ込む。 | |
和 | 痛・・・。だれか、助けて・・・ |
けたたましい救急車のサイレン。 人々のあわただしげな足音、声。 |
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和 | な、何してるんですか?え、縫うんですか。あー!? ちょっと、やめてください、やめてー。 |
声、こだまして。そして、静寂。 |
1 プロローグ | |
西崎 | 沢村さん、傷の具合見せてくださいね…って、いない!?あれー? |
南野 | 先輩、どうしたんです? |
西崎 | あ、南野。沢村さん、いないのよ。 |
南野 | えーっ。 |
東村山 | ショックが大きかったのね。 |
西崎 | 主任!! |
東村山 | だって、手術したの院長でしょ。 |
西崎 | やっぱり、誰だつて、逃げるか。でも、問診しないと。 |
南野 | 探しましょう。 |
東村山 | そうね、行くわよ。 |
三人 | おー。 |
2 ピクニック | |
そこは、屋上。空が澄んでいて、風が心地よい。 シーツや洗濯物が干してある。 息を切らしてやってくる、和。 |
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和 | 父さん、母さん、ペットのおざわ、先立つ不幸を お許しください。 |
和、自分で後頭部をたたいて倒れる。 美晴、桂現れる。 |
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桂 (スケッチブックで和をつつく) すると、袖から声。 |
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看護婦 | 沢村さーん、沢村−。 |
和、それを聞き、跳び起きる。 | |
和 | (美暗に)ごめん。 |
和、美晴を気絶させ、背後に廻り、美晴を操る。 そこに看護婦たち。 |
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西崎 | あ、ここに誰か来なかった? |
美晴 (和) |
いいえ、来てませんけど。 |
南野 | やっぱり、屋上にはいませんでしたね…。 |
東村山 | おかしいな、いるような気がしたんだけど。あー もー、疲れるわー。 |
西崎 | 本当に。まったく、こんなにいい天気なのに。(美暗に) ねえ。 |
美晴(和) | そうですねー。 |
東村山 | ほんと、皮肉なほどに青々として…青…青あ!!! |
西・南 | どうしたんですか? |
東村山 | 今度、四階に入って来た青山さん、これがまた、いい男なのよ。 |
西・南 | うそー! |
東村山 | 行くかい?私のかわいい後輩たち。 |
西・南 | ついて行きます! |
看護婦、去る。 | |
和 | ふぅー(ほっとする) |
桂 | 美晴ー、美晴ー、美晴ー(和を突き飛ばし、美晴を揺する。) |
美晴 | …あ…桂ちゃんが、二人いる… |
桂 | ちょっと、美晴、大丈夫!? 私は一人よー。…こうなったのも全部おまえのせいだー、って、あんた誰? |
和 | えっ、あっ、沢村和ですけど。 |
美晴 | さわむら?ってもしかして、305号室に盲腸で入院した? |
和 | えっ?うん、なんでわかるの? |
美晴 | だって、私たち同室なの。 |
和 | えー。 |
桂 | あんただったんだ。急に来るなり、カーテン締め切って、ぶつぶつぶつぶつなんか唱えて。外にも出てこないし。よっぽど変な奴だと思ったら、やっぱりね。 |
美晴 | 桂ちゃん。 |
和 | いやいや、ちょっと、事情が…さっきは、ごめんね。 |
美晴 | いいのよ。 |
和 | それじゃ、改めて、沢村和、十七歳、よろしくおねがいします。 |
美晴 | こちらこそ、橘美晴です。よろしくね。 |
桂 | ・・・ |
美晴 | 桂ちゃん・・・ |
桂 | 桂。 |
美晴 | 中学三年生なのよ。ああ、そういえば、何で看護婦さんたちに追われてるの? |
和 | えっ、そ、それは…あー、空、きれいだなあー。 |
美晴 | ああ、本当。 |
桂 | いい色。 |
三人、しばし、空を仰ぐ。 | |
和 | あーあ、こんないい天気なのに入院だなんて。本当なら、速攻、遊びに行っちゃうのになあ。 |
美晴 | そうね。…そうだー・じゃあ、ここでピクニックしましょ。 |
和 | ピクニック!いいねー。 |
桂 | でも、ここで?何にもないよ、ピクニックにならないんじゃない? |
美晴 | ふふ、あたし、おいしいお菓子あるんだ。友達がお見舞いに持ってきたの。今、取ってくるね。待ってて。 |
美晴、素早く去る。間。 | |
和 | ほ、ほーんと、いい天気だよね。 |
桂 | そうね。 |
和 | 風も気持ちいいね。 |
桂 | そうね。 |
和 | あ…し、しっかし、あの看護婦さんたち、変だよね。 |
桂 | そんなこと昨日来たばかりのあんたに言われなくたって分かってるよ。 |
和 | な…あ…と、ところであの人、美晴ちゃん、何の病気なんだろう。 |
桂 | 胃潰瘍。 |
和 | え? |
桂 | 胃潰瘍。彼女、見た通り、すごくやさしいから。みんなに気を遣って、病気になっちゃったんだよ。 |
和 | へえ、入院するくらいの胃潰瘍なんて、よっぽどひどいんだろうね。ストレス? |
桂 | 知らないけど…古い旅館の一人娘っていってたから、そういうのも、大変なんじゃないの。なんか、母一人、子一人みたいだし。 |
和 | じゃあ、ゆくゆくは若おかみ? |
桂 | え、なんないよ。彼女、別な夢、あるもん。 |
和 | ふうん…あ、あんたは何の病気? |
桂 | 腸壁嵌頓ヘルニア。 |
和 | …え?…え? |
桂 | いいよ、わかんなくて。 |
美晴、帰ってくる。 | |
美晴 | ただいま。持ってきたよ。はい、どうぞ。 |
和 | いただきまーす。おいしいー。 |
桂 | 手術したばかりでしょ。食べていいの? |
和 | ガス、でたもーん、聞きたかった? |
桂 | はしたない。 |
美晴 | ふふ、すっかり仲良くなったのね。 |
桂 | なってません。 |
美晴 | 桂ちゃん、和ちゃんに会ったばかりでまだ緊張してるのよ。本当は、とっても優しいの。 |
桂 | 美晴ほどじゃないよ。 |
和 | そうだよ。だって、美晴ちゃん、すごく優しいせいで胃潰瘍になっちゃったんでしょ。 |
美晴 | え?ああ、桂ちゃんが教えてくれたのね。そんなことないの。そんなんじゃないのよ。 |
和 | そういうとこが優しいんだよねー。 |
話している間に桂はスケッチを始める。 | |
和 | 何、あんた絵、描くの?どれどれ、見せてよ。 |
桂 | や、見ないでよ。 |
美晴 | 桂ちゃんは、将来画家になるのよね。 |
和 | へえ、すごい。 |
桂 | 美晴はアフリカに行く。 |
和 | アフリカ?何しに? |
美晴 | 向こうの子供たちのね、手助けがしたいなあって思うの。 |
桂 | 美晴は入院するその日まで、ずっとボランティアしてたんだよ。 |
和 | すごーい。普通、できないよ。人のために何かをするなんて。 |
美晴 | すごくないよ、ただ、自分がやりたいからやってるだけ。…そうだ、これ見て(布を出す)私の宝物。 |
和 | きれいな色。 |
美晴 | ね。これね、NGOのアフリカの方に教わりながら織ったのよ。タペストリー、下手だけど、すてきでしょ。すできな文化でしょ。…ボランティアって、いうけど、…私は自分がもらうものの方が多いと思う。だから、人のためじゃないの。お互いのため。 |
和 | ふうん。 |
美晴 | ときどき、そういうこと忘れそうになるから、これを見て思い出すの。 |
和 | ふうん。 |
美晴 | タペストリーってね、つづれ織りって言って、縦糸と横糸の組み合わせなんだけど、横糸を寄せるときが難しいの。カが要るのね.だから、時間はかかるんだけど、ゆっくり、ひとつひとつ織っていけば、重なり合っていつか、一つのかたちが できるの。そしてそれは、初めに予想していたのより、ずっとすてきな深い色合いなの。 |
桂 | その色いいよ。貸してくれる。 |
美晴 | うん。これ、織ったとき、なんかちょつと、疲れてたときだったから。でも、一つ一つ頑張っていけばいいかなつて思ったの。 |
和 | すごいなあ。すごすぎるよ、美晴ちやん。…ボランティアかあ。したことあつたかなあ。空き缶拾いとか、プルタブ集めとか。あつ、献血したことある。 |
桂 | 血の気多そうだもんね。 |
美晴 | 私も献血してるのよ。(献血手帳を出して)はい。 |
和 | うわー、すごい、いっぱいやってる。あ、これ、なに? |
美晴 | ドナーカード。 |
和 | え?これが?始めて見る。 |
美晴 | コンビニにも置いてあるよ。 |
和 | 心臓、肺、これは |
美晴 | 膵臓。 |
和 | 膵臓、腎臓、眼球…すごーい、みんな○ついてる。これ、死んだらみんなあげるの? |
美晴 | うん。 |
和 | こわくない? |
美晴 | 全然。普段は気づかないけど、こうして、入院したりすると、健康って有り難いなあつて思わない? |
和 | 思う。 |
美晴 | その健康をものすごく欲しがつてる人もいるのよね。どうせ、死ぬんだったら、臓器をあげて、そういう人達にも、こういう青い空の下で、ピクニックとかしてもらいたいなあ、なんてね。それに、ボランティアと同じ。それは、その人のためだけ じゃない気がするの。 |
和 | すごいとしか、言えない。あたしにはできないな、何となく。悪い部分をとるならいいけど、自分のからだを、ひとにあげるなんて。 |
美晴 | うん、それは、人それぞれの気持ちだから、のよ。 |
和 | …ねえ、あんたはどう思う? |
桂 | んー、よくわかんない。それに、私、死なないし。 |
和 | でも、事故とかで、突然、ぽっくりいくかもよ。 |
桂 | 死ねないの。やることあるし。 |
和 | あ…画家? |
桂 | そうだよ、美暗もそうでしょ。 |
美晴 | そうね。もうすぐ退院だし、ああ、はやく動きたい。とにかく私に、できることがあるなら、いま、すごくやりたいの。 |
和 | …すごいなあ、やりたいことあつて。あたし、何にもない。 |
桂 | 十七で、何にもないの? |
和 | …あたしだつて、考えてない訳じやないんだよ。進路希望請査ももうすぐあるし、親も先生も「早く決めろ。」ってせかすけど、でも、そんなの、あ たしが一番分かつてる。 |
桂 | わかつてるんなら、さっさと決めたら。 |
和 | それでも、何も見つからないから困つてんじやない。 |
美晴 | 大丈夫。私も高校二年生くらいのときは、先が見ぇなかつたよ。でも、いつか、これだな、つて思ぅこと必ずみつかるよ。 |
和 | そうだよね、落ち着いていこう、落ち着いて。 |
桂 | 一生、落ち着いたままだつたりして。 |
美晴 | まあまあ、私たち3人はあの、院長のオペを受けた仲じやない。これも、すごい偶然だよ。仲良くしましよう。和ちやんも、ここに院長のサインされた? |
和 | え?どうして知ってるの? |
美晴 | あたしたちもされたの。 |
和 | だつて、油性のペンだよ。もう、全然消えない。 |
桂 | でも、メインは、他にあるでしょ。何? |
和 | …すっごいいい笑顔のね…院長のプリクラ、傷口に縫い付けられてた。病室にいると手術の時の屈辱、思い出すし、看護婦さんこれ見せろつてしつこいし。だから、逃げてきたんだ。 |
桂 | やるなあ、院長。いい歳して。 |
美晴 | でも、まだよかったよ。 |
和 | え? |
桂 | オルゴール胃に埋め込まれて、腹が減ると鳴り出す人とか一極楽鳥の透かし彫りとか。 |
和 | え? |
美晴 | でも、その人達も普通の生活送ってるから。 |
桂 | 腕前だけは尊敬しなきやね。サインはセンス0だけど。 |
院長 | そんなこと、ないぞーお。 |
院長、輌り踊りつつ登場。 | |
院長 | もっとよく、私のサインを見てごらん、そーつと‥てのぞいて見てごらん、ね。素敵じやないか。 |
三人 | 全然。 |
院長 | なぜ、このサインの良さがわからないかなあ。OH、ファンシー。あ、そういえば君は確かもうすぐ退院だね。淋しいな、でも、おめでとう。院長、ちょつぴり複雑。 |
美晴 | ええ、院長のおかげです。ありがとうございました。 |
院長 | また胃に穴が空いたらいつでもおいで。待ってるから。こんどは、蛇玉でもはめちやおうかな。 |
和 | 先生− |
看護婦たち登場。 | |
東村山 | 沢村さん、とうとう見つけたわよ。まったく手間とらせて。 |
南野 | あ、主任、あそこ! |
長、隠蓑かなにかで隠れている。 | |
東村山 | 院長、ここにいらしたんですか。今手術中でしょ。患者さん頭開いて待ってますよ。 |
院長 | だつて飽きたんだもーん。 |
東村山 | 何言ってんですかつ。 |
西崎 | あ、逃げる。 |
東村山 | え?待ちなさーい。病人は走るなー。院長、仕事に戻ってくださいよ。待てー。 |
みんな、いなくなる。院長、一人残り。 | |
院長 | あーあ、いっちやつた。院長も仕事に戻ってみちゃおうかな。院長、ちよつぴりマジ。今年で49だもんなー。さ、いこう。みんな待ってるこの院長を。 (お菓子を見つけ)…忘れましたよ…忘れ物ですよ…「食べていいよ」 あなたが欲しい、あなたが欲しいー(途中で明かり消される)あ、消された、さみしい… |
3 美晴の退院 | |
病室。美晴は退院の準備を終えている。 和、泣いている。 |
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和 | うわああ、退院おめでとう。 |
桂 | あんた、いい歳していつまで泣いてんの?おめで たいことなんだよ。 |
しかし、桂、涙を隠すため、ずっと上をむいている。 | |
和 | だつてー。(泣く) |
美晴 | 落ち着いて、落ち着いて、ね。私たちこれで終わりじやないから。ちやんと、お見舞いにも来る。退院したら、うちの旅館へも、遊びに来て。ね。だから、もう泣かないで。和ちやん、鼻からなんか、出てるわよ。 |
和 | 出るものこばまずよ。 |
桂 | 汚いから、拭いてよ。 |
和 | わかったよ。 |
桂 | (時計を見て)でも、ほんとに遅いね、美晴のお母さん。 |
和 | なんか事故にでもあつたのかな。 |
桂 | おめでたい日になにいってんだよ。 |
美晴 | いいの、いつ.ものことだから。うん、タクシーで帰るわ。ありがとう、またね。 |
和 | あ、下まで送るよ。 |
美晴 | いいの。お願い、ここでがいいの、ね。 |
和 | …わかつた。さよなら、美晴ちやん。 |
美晴 | 違うよ。 |
和 | え? |
美晴 | 美晴 さよなら、じやなくて、またね、よ。 |
和 | (じわーつと涙が)そうだよね、そうだよね。 た、すぐ会うもんね。じやあ、またね。 |
美晴 | うん。桂ちやん、絵、また見せてね。 |
桂 | こんど、持ってく。またね。 |
美晴 | またね。 |
美晴去る。 | |
桂 | あんた、いい歳して一体いつまでめそめそしてんのよ。またね、つて言ったんじやない。それまでがんばろうとか思えばいいじやない。 |
和 | …桂。 |
桂 | なに。 |
和 | あんたもしかして、いい人なの? |
桂 | 気付くの遅すぎ。 |
雪乃 | (現れて〕:」めんなさい、遅くなつて。あら、桂ちやん、美晴どこかしら。 |
桂 | ずっとおばさん来るの待ってましたけど、いまさっき、行っちやいましたよ。 |
雪乃 | あら、じやあ、すれ違い?‥そちらは? |
和 | 沢村和です。 |
雪乃 | 和さん、美晴がお世話になりまして。 |
和 | いいえ。遅くなつたの…何かあつたんですか。 |
雪乃 | 仕事がなかなか抜けられなくて。あ、うち、旅館を営んでるんですよ。 |
和 | 美晴ちやん、待ってたんですよ、ずっと。 |
雪乃 | だつたら、後ちょつと、待っていればよかったのに。(溜息) |
和 | ・・・ |
雪乃 | 追いかければ間に合うかしらね。それじゃ、本当におせわになりました。これ、つまらないものですけど、召し上がって。(菓子折りを渡す)どうぞ、遊びにいらしてね。 |
雪乃、去る。それを見つめる二人。 | |
桂 | あ、これ、借りつ放しだ。(タペストリーを持つ。) |
4 虫の知らせ | |
遠くでかすかにサイレンの音がする。 消灯後の病室。ベットがひとつ空いている。 なかなか寝付けない和。桂は絵を措いている。 |
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和 | なんか、眠れない。まだ起きてんの?何描いてんの今度は? |
桂 | 和が眠れないなんて珍しいね。てんとう虫、花瓶の所にいるの。 |
和 | …てんとう虫つてさあ、 |
桂 | 何よ。 |
和 | 手とかに止まると指先まで一生懸命のぼつて行くでしょ。で、飛ぶわけ。 |
桂 | 知らなかつた、で、何なの?(あまり聞いていないふうに) |
和 | いやさ、美晴ちやんのこと思い出したの。美晴ちゃんも、一生懸命のぼつて飛んでるのかなあつて。てんとう虫みたいに? |
桂 | そう。何してんのかなあ。 |
桂 | 美晴が退院して…もう、五日か。 |
和 | もう、そんなになるんだ。早いね。 |
桂 | 今度、様子見に行こ。 |
和 | 賛成!早く退院したーい。 |
桂 | あ…てんとう虫飛んだ。そつちいったそっち… |
目線の先には美晴。 | |
美晴 | 久しぶり。 |
和・桂 | 美晴ちやん! |
和 | どうしたの急に、しかも、こんな夜遅くに。 |
美晴 | ごめんね、もう、今日の夜くらいしか、来れそうになくて。二人にどうしても会いたかったの。だから。 |
桂 | …アフリカ、行くの? |
美晴 | ううん、アフリカにはもう行けないの。 |
和 | そんなあ、いつか、行けばいいじやん。 |
美晴 | ううん、いいの。.あたし、ほんの数人だけど、本当に幸せにできること、見つけたから満足なの。 |
桂 | ?‥まあ、座って。お茶でも、飲もうよ。 |
美晴 | でも、時間だからいかなくっちや。 |
和 | えー、ピクニックしようよ、ここで。第二回、三人の三人による三人のためのビクニツク。 |
美晴 | ピクニック楽しかったね。本当に楽しかった。 |
桂 | どうしたの。なんか、あつた? |
美晴 | ううん、じやあね。和ちやん、夢はゆつくり、見っけてね。桂ちやん、好きな絵、いっぱい描いて。二人とも、仲良くしてね。さよなら。 |
和 | さよならじやないよバまたね、でしょ。 |
美晴、ほほえんで立ち去る。 しばらくしてノックの音。 南野、来る。 |
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南野 | 起きてます?本当は、こういうこと、伝えてはいけないんだろうけど、いずれわかると思うから二人には知らせておくね。落ち着いて聞いて。ここに入院していた塙美晴さん、今日の午後事故に遭って、意識不明の重体なの。 |
和 | うそだ…だつて、いま、いま・‥ |
桂 | なんで…一体何があつたんですか? |
南野 | 交通事故なの。信号無視のダンプカーにはねられて。 |
和 | そんな‥・ |
桂 | 重体、つて、そんなにひどいんですか? |
南野 | (苦しげにうなずく) |
和 | なんで‥・どうして… |
桂 | 美晴、いま、どこにいるんですか。 |
南野 | 救命救急センターのICU。 |
和 | ICU? |
桂 | 集中治療室! |
和 | うそだー・ |
桂、駆け出す。和も、後を追って。 | |
つづく へ タペストリA へ |
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