「 タマゴの勝利 」後編 |
作・安保健+宮三女高演劇部 |
登場人物 ユミ (高校3年生) ユキ (高校2年生) マサエ(高校2年生) |
【ユミが1人で部室にいる。ユキが入ってくる。】 |
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ユキ | 先輩、お話があります。 |
ユキ | どっちの、「どうして」なんですか? |
ユミ | どっちって? |
ユキ | 辞める理由を聞く「どうして?」なのか、辞める理由を「どうして」聞かなければならないのかの「どうして」なのか、どっちの 「どうして」なのですか? |
ユミ | なんか難しいね。 |
ユキ | 自分でも分からなくなってきました。でも、先輩は引きとめないですよね。 |
ユミ | うん。 |
ユキ | どうして引き止めないんです。 |
ユミ | だって、自分で決めたことでしょう。 |
ユキ | それはそうですけど・・・でも、普通は引き止めると思います。 |
ユミ | そうかな・・・。 |
ユキ | そうです。 |
ユミ | ユキちやん、引き止めてもらいたいの? |
ユキ | そういうつもりで言った訳ではありません。 |
ユミ | じゃあ、いんじゃないかな。 |
ユキ | 先輩って、とてもクールだと思います。 |
ユミ | そうかなあ・・・・。 |
ユキ | そうです。自分ではピンとこないのですか? |
ユミ | うん。 |
ユキ | そこが先輩にいいところですけど。いつも、思ってました。どうして、先輩は、そんなにクールになれるのかって。 |
ユミ | そんなに深刻に考えることないよ、ユキちゃん。 |
ユキ | 先輩、最後に2つだけ質問していいですか? |
ユミ | いいけど、「最後に」なんて言って欲しくないけど、なに? |
ユキ | 先輩はマサエのために、部員をいれないんじゃないですか? |
ユミ | そんなこと、ないと思う。 |
ユキ | あると思います。先輩はマサエとバカなことして、この部に誰も近づけないようにしているように思えます。 |
ユミ | どうして、マサエのために入部させないようにするの? |
ユキ | 他の部員がいると、マサエが、この部に来なくなるからです。 |
ユミ | そんなことないよ。 |
ユキ | あると思います。 |
ユミ | どうしてユキちゃん、そんな風に考えるの? |
ユキ | 先輩は、マサエが教室に入れないこと、知っていますよね。 |
ユミ | 知っているよ。 |
ユキ | どうして入らないかも、知っていますよね。 |
ユミ | 分からないけど。 |
ユキ | 嘘です。知っています。 |
ユミ | 私はマサエから聞いていないよ。 |
ユキ | 嘘です。聞いています。 |
ユミ | どうしてそんなこと言うの? |
ユキ | 私、マサニに聞いたんです。マサエ、言ってました。先輩、知ってるって。 |
ユミ | マサエが教室入れないこと、私が知ってるって? |
ユキ | はい。マサエ、はっきり言いました。 |
ユミ | そうなんだ。 |
ユキ | 先輩、知ってますよね。 |
ユミ | 知らないよ。 |
ユキ | じゃあ、マサエが嘘をついたんだ。マサエに先輩は知らないって言います。 |
ユミ | 言わないほうがいいと思う! |
ユキ | どうしてですか! |
ユミ | どうしてって、意味がないと思うよ。 |
ユキ | そんなことないと思います。 |
ユミ | あると思う。わざわざ、マサエに自分から「あなたを理解していると思った私は、実は、あなたのことを何も知らないのよ」って言う必要なんか何処にもないよ。本人が、そう思ってるのならそう思わせておけばいいよ。 |
ユキ | おかしいと思います!思ってもいないこと思わせておくなんておかしいと思います。 |
ユミ | どうして? |
ユキ | だって、本当のことじy、ないじゃないですか!知らないのに知ってる振りするのっておかしいです! |
ユミ | そんなに、おかしいかな。 |
ユキ | おかしいです、納得がいきません。 |
ユミ | 本人がいいのならいいんじゃない。 |
ユキ | 私がマサエだったら、嫌です。 |
ユミ | でも、ユキちゃんはマサエでないよ。 |
ユキ | 先輩って本当にクールですよね。私が先輩の立場だったらマサエの悩みを聞いてあげて、マサエを助けてあげると思います。とにかく私、この部辞めます。 |
ユミ | ・・・さびしくなるね。 |
ユキ | そうですか? |
ユミ | うん。 |
ユキ | 意外です。先輩、2つ目の質問していいですか? |
ユミ | なに? |
ユキ | 先輩はマサエがこの部を辞めると言ったら引き止めますか?先輩、引き止めますよね? |
ユミ | 本人の自由にさせると思うよ。 |
ユキ | 嘘です。 |
ユミ | どうして? |
ユキ | 絶対に嘘です! |
【 三波春夫の 「チャンチキオケサ」 が流れ、三波春夫のようにニコニコしながらマサエ登場。マサエチャンチキオケサの一番を歌いきる。深々とお辞儀する。】 |
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ユキ | 今度は何?マサエ |
マサエ | チャンチキオケサです。 |
ユキ | チャンチキオケサ? |
マサエ | そうです。チャンチキオケサです。 |
ユキ | だからなに? |
マサニ | 私はこの曲に真理をみたのです (一番歌う) |
マサエ | これは1957年の三波春夫のデビュー曲です。 |
ユキ | だから、何? |
マサエ | みんな、これを盆踊りで踊ったり、どんちやん騒ぎしていますが、これほど悲しい歌はないのです?聞いてください。(二番歌う)明るいでしょうこの曲。三波春夫は偉大です。 |
ユミ | 偉大? |
マサエ | そうです。これほど悲しい曲をここまで明るく歌えるシンガーはいません。レゲエの偉大なシンガー、ボブ・マリーくらいです。 |
ユミ | どこが、どう悲しいの、マサエ? |
マサエ | 聞こえないのですか?この明るさの向こうに悲しさがあることが、聞こえないのですか? |
ユミ | 悲しさ? (チャンチキオケサが静かに流れる。) |
マサエ | 悲しさです。 |
ユミ | 聞こえる、聞こえる! |
マサエ | 先輩、聞こえるんですか! |
ユミ | うん。 |
マサエ | さすが、先輩です。分かりますか、このやるせなさが? |
エミ | うん。 |
マサエ | 寂しい歌ですよね、故郷を捨て、家族を捨て、母が生きてるのかも分からない。本当に切ないホームレスの歌です。 |
ユミ | でも、明るいね。 |
マサエ | はい、三波春夫はこの暗い歌を、こんなに明るく歌ってるんです。私は、父さんと盆踊りを踊ってる時、この曲の深さにハッとしたんです。 |
ユキ | 嘘つき! |
マサエ | えっ。 |
ユキ | どうして、嘘つくの? |
マサエ | どうして、私が嘘をつかなければならないのですか? |
ユキ | マサエ、あなたにお父さんはいないのに、どうして、お父さんと踊ることできるの?おかしいじゃない? |
マサエ | 私にはいます。 |
ユキ | どこに?じゃあ、連れて来て。 |
ユミ | ユキちゃん、そうゆう言い方、止めたほうがいい。 |
ユキ | どうしてです。先輩も知ってるのですね。 |
ユミ | 何を? |
ユキ | マサエにお父さんがいないことです。 |
ユミ | 知らないよ。 |
ユキ | 嘘です。知らなかったらもっと驚きます。 |
ユミ | どちらでも、いいんじやない。 |
ユキ | なにがですか? |
ユミ | お父さんがいてもいなくても。 |
ユキ | おかしいです。嘘は良くないと思います。 |
ユミ | それはマサエの問題で、私たちの問題ではない。 |
ユキ | でも、こんなこと繰り返していいんですか。 |
ユミ | いいと思うよ。 |
【マサエは2人が口論に夢中になっている間に退場する。】 |
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ユキ | よくありません。マサエも先輩も破滅します。 |
ユミ | 逆の場合もあるよ。 |
ユキ | 逆?マサエは破滅しない為に、嘘をついているっていうのですか! |
ユミ | なにが本当かって難しいと思うよ。 |
ユキ | なんですか、それ!おかしいです、絶対におかしいです!嘘は嘘です! |
【 ボブ・マリーの「Get Up Stand Up For the Right」流れる。マサエが背中に巨大なタマゴを背負って登場する。重い卵を息を切らしながら、でも意気揚々とステージを歩き回る。切らした息の中から笑い声さえ聞こえる。】 |
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ユミ | マサエ・・。 |
マサエ | 先輩、このタマゴいいでしょう? |
ユミ | えっ・・・。 |
マサエ | 誰か分かりますか? |
ユミ | これ・・・・? |
マサエ | はい。 |
ユミ | ごめん、わからない。 |
マサエ | チェ・タマゴです。 |
ユミ | チェ・タマゴ? |
マサエ | はい、チェ・タマゴです。先輩でも知らないことあるんですね。革命家ですよ。 |
ユミ | 革命家? |
マサエ | はい。キューバ革命の英雄です。 |
ユミ | キューバ革命・・・・。 |
マサエ | 私、この人の映画見たんです、父さんと。父さんは感動して、涙を流していました。チェ・タマゴは貧しくて弱いタマゴたちと共に生き助け合い助け合い戦い、命をかけて、この社会を変えようとした大革命家です。残念ながら彼はボリビアの政府軍に39歳で殺されてしまいますが、でも、納得のいく人生だと思います。 |
ユミ | きっと、そうだね。 |
マサエ | 先輩も、そう思いますか。 |
ユミ | 思うよ。とてもいいと思う。 |
マサエ | 本当ですか。 |
ユミ | うん。 |
マサエ | 先輩、そう言ってくれるとうれしいです。 |
ユミ | チェ・ゲバラみたいに、大きくて、偉大でなくてもいいから私たちにできる些細なことでもいいと思う。 マサエ そうです、そう思います。身近なところから革命を広げましょう。 |
ユミ | マサエ、何をしたいの? |
マサエ | タマゴ革命です。 |
ユミ | タマゴ革命? |
マサエ | はいそうです。今や、教室は宇宙です。 |
ユミ | 教室が宇宙? |
マサエ | はいそうです。特に、私のクラスの人は、惑星です。それぞれが、自分の回る中心を持っていて、相手のことなど、お構いなしです。 |
ユミ | 自分の価値観で回っていってこと。 |
マサエ | 先輩、そうです。永遠に惑星は軌道を変えません。誰とも接点を持ちません。それが宇宙である教室。生徒も教員もです。 |
ユミ | それをどうするの? |
マサエ | 破壊して、天国を作るのです。 |
ユミ | 天国を? |
マサエ | はい、教室を破壊すれば天国ができます。 |
ユミ | どうやって、破壊するの? |
マサエ | これです、このタマゴ爆弾を教室という教室に投げ込むんです。 |
ユミ | なんか、面白そう。 |
ユキ | 先輩、止めてください! |
ユミ | どうして? |
ユキ | おかしいです! |
ユミ | おかしい? |
ユキ | おかしいじゃないですか、第一タマゴ爆弾って何ですか? |
マサエ | 宇宙を天国に変えます。 |
ユキ | マサエ、本気なの? |
マサエ | 何が? |
ユキ | 自分の言ってること。 |
マサエ | 本気です。 |
ユキ | 先輩、石に白い色を塗ったタマゴなんか教室に投げたって何も変わりません。先輩、こんな馬鹿なことに、どうして付き合うんですか。これは、犯罪です。公共物破損です。 |
マサエ | でも、世界は変わる。 |
ユミ | そうかも! |
ユキ | 先輩まで、どうしてですか! |
ユミ | みんな、考えるかも。どうして、ここにタマゴが投げ込まれたのか! |
マサエ | そうです、考えます。タマゴはすべての始まりです。このタマゴを手に取り、みんな、一から考えると思います。天国への一歩です。 |
ユミ | そうだね、このタマゴの中にメッセージを書き込もう。マサエ それはいい考えです。そうしましょう、先輩。 |
ユキ | 止めてください、先輩!いい加減にしてください。 |
マサエ | いい加減? |
ユキ | 馬鹿じゃないですか!先輩、どうしてなんですか、どうしてこんな馬鹿なこと考えるマサエについていくんですか! |
マサエ | もういいです。ユキは帰ってください。私たちでやります。 |
ユキ | マサエ、私はあなたのために言ってる。 |
マサエ | だったら、ほっといてください。おせっかいです。あなたは自分が正しくて、私たちが間違っていると思っている。これは革命のためです。すべてが間違いだと、誰が言えるんですか?ユキ マサエ、私はあなたのことを心配して言っている、おかしいことは、おかしいと思う。これは誰が考えてもおかしいと思う。 |
マサエ | 多分、多数決ではそうなる。多数決がすべて正しいとは限らない。 |
ユキ | 先輩、先輩はこれで良いんですか? |
【ユミはマサエにもユキにもつかず黙っている。】 |
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ユキ | もう、いいです! 【ユキが退場。】 |
【 傾斜台からホリゾントに向かってタマゴ爆弾を投げる二人のシルエット。窓ガラスが次々と割れる音、しばらくして暗い文芸部の部室に入る。】 |
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マサエ | ここに涅槃(ネハン)、ニルバーナを作ります。ニルバーナ、何の不安もない天国です。 |
ユミ | 極楽だね。 |
マサエ | はい。【ユキが突然、部室に入ってくる。】 |
ユキ | 先輩、マサエ、パトカーが来ます。逃げてください。早く! |
エミ | ユキちやん! |
ユキ | 先輩、警報が事務室で鳴っています。じきに警備の人や、警察がきます。 |
マサエ | うるさい!じゃまするな!(ユキにマサエがタマゴを投げつける。)先輩は逃げてください。 |
ユミ | いいよ、居て。 |
マサニ | 先輩に迷惑がかかります。 |
ユミ | マサエは? |
マサエ | 私ですか、最終の仕上げをしてここを天国、極楽浄土にします。それが完了したら行きますから、先輩は先に行ってください。 |
ユミ | いいけど、マサエ。 |
マサエ | そこが、先輩のいいところです。 |
ユミ | なにが? |
マサエ | 決して、NOといいません。 |
ユミ | うん。【ユミ消える。】 |
【「パトカーの音が大きくなってくる。】 |
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【1人残ったマサエはタマゴを自分の分身であるかのように抱いている。】 |
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【タマゴの仮面が登場、ガヤが入る。タマゴ退場。】 |
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仮面1 | タマゴってうざ。 |
仮面2 | タマゴってすぐ割れる。 |
仮面3 | タマゴってすぐ閉じこもる。 |
仮面4 | タマゴってすぐ転がる。 |
仮面5 | タマゴってなんなの。 |
仮面1 | マサエちゃん、いたんだー。 |
仮面2 | マサエちゃん、タマゴみたい。 |
仮面たち | マサエ、タマゴ、マサエ、タマゴ、マサエタマゴタマゴマサエタマゴマサエタマゴマサエマサエマサエマサエタマゴタマゴタマゴハハハハハハハハハハハハ。 |
マサエ | マサエ生まれて来なければよかった。タマゴに戻りたい、タマゴに戻りたい、ああああ、タマゴに戻りたい、戻りたい、マサエ生まて来なければよかった。ああああ、死にたい死にたい、苦しい、助けて・・・助けて・・・ |
ユミ | 【ユミが必死に走って来る。】 大丈夫だよ、大丈夫だよ、大丈夫だよ、大丈夫。(マサエが落ち着くまでやさしくいたわるように話続ける。) |
【ハトカーの音が高まり、救急車の音 → ユキがスポットヘ】 |
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ユキ | 私たちは、倒れているマサエと救急車で運ばれました。マサエはじっと目を閉じていました。先輩は堅く目を閉じているマサエに、優しく何か話しかけていました。私は、こんなに優しく話しかける人を初めて見たような気がしました。マサエはあの日から学校にこなくなり、私もあの日から、先輩とは会いませんでした。時々、そっと、部室を覗いてみると、先輩は静かに何か、考えているみたいでした。それから、2年後、先輩は21歳の若さで白血病が再発して亡くなりました。告別式で、私は先輩に会いました。花に囲まれた先輩に、みんなが話しかけていました。先輩は「いいけど」って、みんなにいつものように、静かに微笑んでいるみたいでした。先輩、先輩はクールなんかじゃなくて、本当は、とても温かい人だったんですね。私はマサエが、泣きたいくらい羨ましい。(間)(微笑みながら)先輩、先輩がいつも気にかけていたマサエに、3年後、先輩の命日に偶然、会いましたよ! |
【ギルバート・オー・サリバンのアローンアゲインが流れ暗転。】 |
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【先輩の命日の日、マサエが花タマゴ(先輩の墓に供える花で飾ったタマゴ)を持って、傾斜台の上に登場。マサエの後ろからユキが花を持って登場。2人は出会う。】 |
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ユキ | マサエ・・・・。 |
【マサエ無視して行こうとする。】 |
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ユキ | 逃げるの! |
マサエ | ・・・・。 |
ユキ | 今日、何の日か知っている? |
マサエ | ・・・・。 |
ユキ | 知らないの? |
マサエ | 知っているよ。 |
ユキ | 知っているんだ。 |
マサエ | うん。 |
ユキ | どうして行かなかったの? |
マサエ | どうしてって? |
ユキ | 先輩の見送り。 |
マサエ | どうして、私が行かなければならないのですか? |
ユキ | 先輩はいつも、あなたのこと、あんなに思ってくれていた。 |
マサエ | ユキ、あなたは本当のことが分かっていない。 |
ユキ | なにが? |
マサエ | 自分が正しいと、自分の尺度でしか人を見れない。 |
ユキ | それと、あなたが先輩の葬儀に行かなかったことと、どう関係があるの。 |
マサエ | あります。葬儀にいけば、その人のことを本当に思っていることになるんですか? |
ユキ | 少なくとも、行かない人よりは思っていることになると思う。 |
マサエ | ユキ、相変わらず、浅い。 |
ユキ | 浅い? |
マサエ | うん、浅い、表面的。 |
ユキ | マサエ、それ、少し失礼。いくらなんでも許せない。自分はいつも、悲劇のヒロインみたいに、世界の悲しみを背負っている振りをしている、半熟タマゴのくせに。 |
マサエ | ばかこの!半熟うるさい!ぁっちへいけ! |
ユキ | 絶対にいきません!あなたが謝るまで絶対にいきません。 |
マサエ | 相変わらず、しつこい! |
ユキ | あなたこそ、執念深い、タマゴ人間! |
マサエ | うるさい!お前こそ謝れ! |
ユキ | あなたが先に謝れ! |
【2人は取っ組み合いをする。組み合ってるうちに先輩との思い出が思い出され涙がこぼれてくる。静かにマサエが泣き崩れ静かに泣いている。】 |
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ユキ | ・・・・。 |
【ユキは組み合ってるマサエが静かに泣いているのに気が付き、先輩に対するマサニの悲しみに驚き・・・・悲しみが伝わってくる。】 |
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ユキ | マサエ・・・・。 |
【暗転。ユキが観客に向かつて。】 |
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ユキ | マサエは花タマゴと一緒に丸くなって泣きました。私は、泣いているマサエを見て、本当に悪いことをしたと思いました。先輩が死んで、本当に悲しんでいたのはマサエで、私はそんなマサエに完全に負けました。私たちは先輩のお墓に花とタマゴを供え、2人で先輩の思い出を語り合いました。私は始めて、マサエと心が通じ合った気がしました。マサエは今、ネパール料理を出すカトマンドゥーという小さなカレー屋で働いているそうです。そのうち、食べにいってみようかと思います。多分、マサエは私にタマゴカレーを出すでしょう。あの時、先輩とマサエが踊ったチェック・ペリーの. You never can tell .の曲が聞こえてきます。あの時私は、先輩と踊っているマサ土が、羨ましくて羨ましくて、しょうがなかったのだと思います。先輩、私はつらいとき、先輩といつも、心の中で You never can tell を踊ってますよ。 |
【どこからか先輩の好きなチェック・ベリーの You never can tell の曲が流れ、ユキとマサエとユミが曲に合わせて踊りだす。】 |
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【大会ではラストの踊りでユミは大きなタマゴに羽の付いたエンジェルエッグを背負って、マサエも巨大なタマゴに怪獣ゴジラのしっぼの付いたゴジラエッグを背負ってユキと踊りだす。踊りの最後でスーフィー教の回転を三人で回転しながら幕が降りる。] |
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【 幕 】 |